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聖女の守護者(お兄ちゃん)  作者: 山石 土成
29/52

第29話 s.hは『来い』のイニシャル








ラッケ・スワーニュに、冬の到来を報せる使者が舞い降りた、白鳥や鴨等の渡り鳥達である。

パパンの刈る獲物が、獣から鳥達へシフトする時期であ

る、美味しく食べるから成仏してください。

この様に、我が家は冬でもせっせと働き日々の糧を得る

葉物野菜を扱う農家は別として、農家の稼ぎ頭は鉱山へ

出稼ぎに来る。

秋と春の民族大移動は、この地の風物詩でもある。


我がオイゲン家は至って平和であるが、ちょっとした

騒動が勃発した『ターブラン冬眠事件』で有る。


「お兄ちゃん、ターブランが動かないのターブラン

死んじゃったの?」


巣箱のおが屑から出て来ない友達を、泣きながら抱えて

来た妹はそりゃもう、大泣き!ギャン泣きである。

「春になったらまた動き出すからね?だから今はそっと

しておこうね?」

と、俺とママンの説得でグズりながらも納得してくれた

マーシャを元気付ける為に俺はせっせと、お姉さんから

貰った卵に魔力を与えている。


「どんな鳥さんが生まれるのかなぁ?」


マーシャも興味津々で、毎日飽きもせず卵を見守ってい

る、ブロディから!アノ野郎俺が卵を持ち帰った第一声

が「久しぶりに卵が食えるのか!」である。

そんなブロディもママンもこの卵は、どんな鳥の卵なの

かは知らないみたいなので、生まれてからのお楽しみ

で有る。

お姉さんボク信じているからね?

人類に危険が危ないヤツの卵じゃ無いよね?


そんな騒動も有りつつ、家族は至って健康、マーシャも

健やかに成長している。

俺はせっせと薪割りに勤しむ、前世で骨の髄まで染み込

まされた技術が、俺と家族の命を護った。

覚悟は決めた、技術はある、ならば体を少しずつ鍛えて

いこう、この鉈の一振が明日の命を繋ぐかも知れない

のだから。


この世界は長閑な様で、1年を通してバトルロワイアル

が開催されている。

肉体を持たない魔物、肉体を持つが魔素の濃い場所で生

まれた魔獣、熊や狼等の肉食系、雑食系の獣、おまけに

ゴースト、悪霊等の死後の世界の方々。

流石、ファンタジーワールド!夢や希望がてんこ盛りで

ある、主にマイナス方向に・・・・。

この辺は平和だから良いが、北の方は小競り合いが続き

野盗、山賊迄が上記の『平和の敵』リストに加わる。

そんな世界で『ボクみっちゅう!エヘ』等と惚けた事は

許されない、3歳だろうが何だろうがwelcome,world

ようこそ素敵な地獄へで有る。


そんな世界で、人間に許されたアドバンテージが魔法で

ある。

しかし、俺はターブランから衝撃の事実を打ち明けられ

た、「俺は魔法が使えない」『らしい』では無く

『使えない』と断言されてしまった。

事の発端は「ターブラン!俺、春になったら魔法を教え

て貰えるんだ!」と、ウッキウキで報告したのだか


(あ〜マクート?浮かれて居るところ申し訳無いがな

お主は魔法が使えんぞ?

何故なら魂が半分欠如しておるからな?

人の魂は円を描いて出来上がるが、お主は括弧なのだよ

魔法は人の魂の形、円を回って完成されるのだ、だから

魂の形によって得意な属性が決まるが、お主の魂は形が

(←この様に括弧の半分なのでな、半円ならば攻撃力の

高い火属性を得たで有ろうがな、逆に定まらない形

だからこそ、その様な膨大な魔力を保持、運用出来て

要るので有ろうがな)


ターブランが、申し訳なさそうに告げていたのが逆に

申し訳無い気がした。

元々、人は魔力を殆んど保持しておらず、魔石に魔力を

込めてバッテリー代わりに携帯するのが、主な使い方である。

だから、ゴブリンクラスの魔石でも需要が有り売れる

のである。


因みにこの世界には『冒険者ギルド』なるモノは存在

しない、そりゃそうだろう!いくら魔物という人類共通

の敵が居ようが、街から街へ、国から国へ武器を携帯し

て移動等、為政者に喧嘩売るの?である。

また、国を跨いだ強力な組織等も敵国の諜報員が跋扈

しほうだいで、治安維持に喧嘩売るの?である。

肝心な処は全然ファンタジーちゃうやん!!


宗教が国を跨げるのは、為政者に近い所に位置している

からであり、治世の邪魔をせず協力関係を維持している

から『邪魔しないならいいよ』のお目こぼしで、敵国の

諜報員が見つかったら、その宗派は潰されるので、逆に

宗教関係者は宗派事に、自分の組織を監視する部署を

設けている。

ホント何処がファンタジーなんだろう?


さて、3歳児が教える世界情勢の間に薪割りは終了である

兎に角、魔法は使えないけど、読み、書き、はちゃんと

やんないとね!計算は持ち越しで良いでしょ?ね?

因みにこの世界の言語は『英語』で有る、この世界では

『中央語』って読んでるけどね、しかしこの世界まで

の言語とはね、流石『英語は世界語』である。


家に入り、テーブルではマーシャがママンから数え歌を

教わりながらお勉強で有る。

俺は『音程以外は完璧』の評価を貰ってる。

・・・・ちょっぴり切ない。


マーシャとママンの歌声を聴きながら、夕飯の準備を

始める、コレばかりはママンには任せられない。

ママンがご飯を作ると、備蓄の干し柿がエライ勢いで

無くなるのだ、犯人2名は情状酌量の余地があるので

不問としている、俺はちゃんと食べるよ?その後どうな

るか判っていてもさ。

『コレも愛なの!尋ねるのは止めなさい!』


そんなどうでも良い考え事をしながらでも夕飯は出来る

のである、本日は『鴨出汁すいとん』である。

醤油や味噌が無いので、今一つの出来だが家族には

好評で有る。

夕飯が出来上がるのと同時に、パパンが街から帰って来

たので、皆で出迎えるとパパンから声をかけられる。


「マクート、明日俺と街へ行くぞ!」

「いいけど、どうして?」

「シャリア様からご招待を受けた」

シャリア?初めて聞く名前で有る、こういう時はママン

を見れば解決する。

「貴方が虎から救った女の子の母親よ?聞いて無い?」

「全然興味無かったから、覚えてないや」

パパンとママンは揃って残念なモノを見る様な目で見ら

れてしまった。

えっ?何で?

「んんんっ!兎に角マクート、ヘンセン家の正式な招待

だからな?明日はお呼ばれしてこい」

「明日?随分急だね?服装はコレで良いの?」

どうにも怪しいブロディを俺は追及する、ママンもどう

やら怪しい事に気がついたみたいだ。

「貴方?貴族様の正式な招待なのにこれ程、急なのはどう

してでしょうか?」

おう流石!元・公爵家令嬢である、俺と同じ疑問を直球

でパパンにぶつける。

「あ〜忘れてたんだわ、すまんな!」

ぶっちゃけ過ぎるわど阿呆う!


「貴方!少し奥でお話しましょう?」

「メシを食べてから・・」

「貴方ぁ〜?」

ママンがそれはもう、それはも〜う素敵な笑顔でパパン

を連行していきましたよ?


アバヨ!ブロディ、お前の晩めしは汁だけな!
































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