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77話 『神器』同盟交渉 脱線中

「女の子にする能力というのは、本当ですか?」


 そこが重要とばかりに、もう一度聞いてくるケアニス。

 やけに食いつきがいい。


 ……いやまさか、そんなわけがない。

 俺は俺の想像したこと……いや、妄想したことを否定した。


「誰でも、女の子にできるんですか?」


「いや、誰でもではなく、男しかできない、はず」


「あ、よく考えてみたらそうですね」


 よく考えなくてもそうだ。


「女を女に変えてもしょうがないからな」


「いや、まったくだな」


 何の会話をしているんだ俺は。

 アイが言った、当たり前のことに、もうそれしかないという感じで同意しておいた。


「その力は、例えば人間以外にも可能ですか?」


 む、ひょっとしてキルケと同じ結論に達しそうな感じ?

 この世界の法則を揺るがす外の世界の法則だから危険って判断するかもしれないな。


 ここは慎重に……


「できるんじゃないか? なぁ」


 おおっと、シガさんが代わって答えた!?

 この話題、お茶を濁しておかないと。


「ど、どうでしょうね。そんなことより――」


「イセのいた世界の一部の者たちは、船や城すら女の子にして喜んでいるからな」


「「ほんとっ!?」」


 ケアニスとアイが、すっごい驚いて食いついた。


「ほえー、それって、イセの一族か?」


「一族って言われると、なんか収まりが悪い感じがするけど、まあ」


 アイとケアニスが、とても感心した目でこっちを見ている。

 キラキラしてて少し眩しい。

 そしてじわじわと湧き上がる罪悪感がやばい。


「まあ一部のニッチな業界だけどな。あ、でも歴史的英雄や神様とかもおにゃのこ化させるのが流行ってるよなぁ」


「流行り!? そういうのがたくさんいるのか!? カウフタンみたいなのが沢山いる!?」


「あ、ああ……同人では……あ、公式もある。うん、ある」


「ドウジン……」


 つぶやくケアニス。

 その表情から『ドウジン』というこの世界の人が想像できうる限りの地獄のような光景を、思い浮かべているような気がする。


 それはアイも同じのようだ。


「師匠、やっぱりそっちは辛いのか?」


「ん? いや、楽しくやってるよ」


「……師匠が強がりを言うほどか」


 いや、多分楽しくやってる。

 そんなネタを収集してるくらいには、楽しくやってそうだ。


「イセさんは、本当に何でも女の子にする『力』があるんですね」


 ケアニスは、感心したように言い、部屋の椅子に手を触れる。


「例えばこの椅子を女の子にできますか」


 椅子を女の子に……女の子を椅子に……またずいぶんと鬼畜な発想だ。

 天使、あなどれない!!


「わ、わからないが、もしかしたら……」


「できるのか? 流石だな。椅子に欲情するとは高度過ぎるな。未来に生きてると言わざるを得ない」


「シガさん少し黙っててくれませんかねっ!?」


 タブレットからからかい混じりの声が聞こえてきたので、電源落とすぞコラッという気持ちを込めて突っ込んでおいた。


「イセさん……」


 ぐいっと下から迫ってくるケアニスに、俺はいやな気配を感じて一歩退いた。

 若干頬が赤くなって興奮している表情を確認し、さらに一歩下がった。


 嫌な予感がする。

 危険な香りがする。


「は、はい、なんでしょう?」


「イセさん、その『力』は、天使にも通じますか!」


 あれ? ひょっとして、ひょっとするの?


 そういうこと? そういうことなの!?


 どうなの? それってどうなの!?


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