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72話 同盟

 サミュエル卿に用意してもらった部屋で、シガさんと連絡が取れるまでいろいろ話をつけておく。

 その役目は主にアイだ。

 ウルシャのサポートもあって、つつがなく話は進む。


 そしてアイは、サミュエル自治領内にもAI機関の分室をと申し出た。

 サミュエル卿はシガさんと相談の上で決めると言っていたが、おそらく通るとのこと。


 それから必要なものを手配してもらい、定期連絡の時間までの間に出来た暇を利用して町へ繰り出した。


「やべぇ、本物だ」


「そうだ、これが本物の町だ。最大の流通中継地点だ」


 そういう意味で本物と言ったわけではないが、うんうんと頷いておいた。

 俺は、ファンタジーな町並みに対して本物と言った。


 エジン公爵領城下町でも思ったが、ほんと町がテーマパークみたいだ。

 リアルを追求しすぎて逆にリアリティに欠く、みたいにも思えてくるから不思議だ。

 あまりにも馴染みがないからだろうか。


 それとも……元の世界に少し繋がりができたから、ここを非現実的とでも感じただろうか。

 今ここにいることに、どこか希薄感でも出てきただろうか。


「……いかんいかん」


 まだまだそういうことを考えられる段階じゃない。

 そもそも元魔法使いのシガさんが、ここに戻ってこられてないんだ。

 そう簡単にはいかないんだろう。


「おーい、イセ。どうした? 行かないのか、カフェ」


「行く行く。で、カフェなんてあるの?」


「商人たちが集まって商談してたり、観光に来てる人たちがいて、盛り上がっているところなんだ。アイも昔、入ったことがある。来たらまた入りたかったんだ」


 カフェか。

 ひょっとしたら、シガさんが現代知識でこっちに持ってきた業態だったりしてなぁ。


 む。現代知識で無双は、先越されまくってる?


 と思ったがどうやらそういうわけでもないらしい。

 カフェは俺が想像していたところと少し違っていた。

 どちらかというと居酒屋みたいなところだった。


 そのことを、夜、再びアイとシガさんが難しい話をしている間、雑談レベルでサミュエル卿に話してみた。


「今はこの町にもありますが、前は貿易港のあるところにしかなかったですよ。その文化を、こちらに取り入れたものです」


 とのことなので、シガさんが仕掛けたものではないっぽい。


「おーい、そっちいいか? そろそろこっちの話も聞いてくれ」


 シガさんがタブレットを通して話してくるので耳を傾けた。


「イセ、おまえが天使長キルケによって排除されそうになったって話だが、それだと私も排除されかねないことがわかった」


「何故? 異世界人になっちゃったから?」


「そのとおりだ。だから排除ということでは、このタブレットを壊せば終わり。今の私にこれ無しで連絡する手段はない」


「キルケにとっては排除も簡単だし、その上教皇庁と反目しがちな通商連合にも大ダメージが入れられるって考えると、あっさりやってくるだろう」


 アイがそう言うと、シガさんが困ったような笑い声を出した。


「まったく、好戦的で困るよな」


「シガース様と連絡とれなくなったら困ります」


「そうなんだよ。私がサミュエルくんと話せなくなるのは非常にまずい。今、この件がなくても我々の通商連合は危ういんだよ」


 そう言うシガさんに、サミュエル卿がうなずいた。


「帝都の混乱で起こった派閥争いのため、交易路の確保には莫大なコストがかかっています。ここで通商連合の頭脳ともいうべきシガース様にいなくなられては……」


「限界は近いね。だから皇帝派と教皇派の争いに絡む国内流通を何とか整える算段を立てていたんだが、天界がタブレットの排除を考えついたらえらいことになるな」


 はぁ、とため息をつく音をマイクが拾ってタブレットのスピーカーに雑音が入る。


「あーあ、天界がそういう態度でなければ、もう少しのんびりとこっちの世界を満喫しながら時間をかけてやろうと思ってたのになぁ」


「のんびりとやっていたら、間に合わないのは確実でしたね」


「まったく。アイが連絡してきてくれて助かったよ……あと、イセの機転のおかげだ」


「俺?」


 いきなり話題を振られて驚いた。


「イセ殿、よく対応してくれました。キルケ様の話がそのままそっくり本当なら、素晴らしい時間稼ぎです」


「サミュエルくんの得意分野なことを素でやってるね。どうせならイセを弟子にとったら?」


「だめだ! イセはアイが召喚したんだ」


 サミュエル卿が、いいですねと言おうとする素振りを見せた瞬間にアイがダメ出しをした。

 真剣っぽかったので、サミュエル卿は若干身を退いた。


「アイ様にとっての『力』を、私たちがいただくわけにいは参りませんのでご安心を。これから私たちがご依頼する内容は、イセ殿の知恵と力なくしては立ち行かないものかと思いますので」


 そう言って、サミュエル卿は頭を下げた。


「アイ様、イセ殿、天使ケアニス様と同盟を結んでください」


「「同盟?」」


「はい。『神器』同士による反天界の同盟です」


 ケアニスを倒すのではなく同盟を結ぶ?


「つまり天界と完全に敵対しろと?」


「アイはもう敵対してるから。同じく敵対してそうなのは取り込んでおいた方がいいぞ」


「マジか……」


 アイは腕を組んで難しい顔をした。


「ケアニスって、キルケには堕天使言われていたが、天使だよな。そんなと同盟結べるのか? あっちはこっちと対等と思ってないだろう」


「そこが狙い目なのです」


 サミュエル卿は微笑む。

 タブレットがシガさんではなく、ただの通信装置とわかった時に心底驚いた顔をした時以外は、ずっと同じ調子の笑顔のサミュエル卿。

 意外と底が知れなくて怖い。


 そんな彼が、話す狙い目とは?


「ケアニス様は……とても礼儀正しい良い子なんです」


「……良い子?」


 だから、何?


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