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51話 無免許運転

「あやうく、キルケ様に大変なことをするという大罪を犯すところでした……」


 がくっとうなだれるウルシャさん。

 エンジンはかかったままだし、サイドブレーキもひいてない。

 今、ブレーキを踏んでいる足の力を抜くと、ハイエースの目の前にいるキルケと鬼、あと俺とアイも巻き込まれる。


「ウルシャさん、まずサイドブレーキをひいて、エンジンを止めてください」


「止めるのは……サイドブレーキをひいて、このキーを回す?」


 ギュイギュイとエンジンをかけようとする音が鳴る。


「あ、そっちはエンジンをかける方です。逆」


「逆……あ、止まった。ふぅぅぅぅっ」


 ハイエースのエンジンが止まる。

 ウルシャさんの不安も止まったのか、安堵のため息がものすごかった。


「よく、運転できましたね?」


 ひょっとして、魔法のハイエースだから誰でも運転できるのか?


「なんとか。イセの運転の仕方を試してみました」


「あの説明で?」


 飲み会の席で、アイに笑われたあの教え方で、わかったのか……

 ウルシャさん、すごいな。


「あ、何度もぶつけてしまったのですが、申し訳ないです」


「うん。そうなんだろうね」


 礼拝堂へのあの突っ込み方からして、城下町で運転したら怪我人多数だろう。

 でも、ウルシャさんなら少し練習すれば、結構いけるのではないかな?


「アイも、ウルシャの運転を見て、もう覚えたぞ。帰りはアイが運転する」


「ダメだ。アイは練習してからな」


「えー」


 この建物に突っ込んで、助けに来たぞとか言っちゃう感覚で、車の運転は無理だ。


「ちゃんと教えるから。ほんと、突然こいつを運転して助けに来るとか無茶だよ」


「だが、これしか空から攫われるおぬしとカウフタンの助けに向かう方法がないと思ったんだ」


 今こうやって救いに来てくれたのを見ると、それはわかる。


「俺の居場所って、アイが魔法でわかった?」


「そうだ。アイが召喚したからな。あとカウフタンは、オフィリアの時と同じだ」


 なるほど、追跡そのものは容易だったと。


「でもまさか、ハイエースをアイたちが乗ってくるなんて……」


「これがあったから」


 また免許証を見せられる。

 俺はそれを返してもらった。


 運転免許証を渡していたから、ハイエースを動かせるという発想があった。

 だから見よう見まねでも運転してこられたと。


 その偶然と、偶然を利用した機転には感謝だ。

 でも事故っていたら相当危なかった。


 俺とカウフタンとキルケを轢く前に、ふたりが事故っていたかもしれない。


「ほんとに助けに来てくれたことには感謝するよ。でも無茶はしないでくれ。俺が知らないところで事故っていたら大変だった」


「うむ。まさか建物に大穴を開けるほどの威力がある戦車とは思わなかった。まさに移動要塞」


 少しワクワク顔で感心しているから、また同じ過ちを犯す可能性がある。

 気をつけねば。


 と、そんな話をアイとしていると、鬼に捕まって体も口も不自由なキルケが、んーっ、んーっと、ジタバタしようとしていた。

 ようやく捕まったことに気を向けることができるようになったっぽい。


 それでも、鬼の拘束は解けない。

 なるほど、天使より鬼の方が、筋力は上なのか。


「アイ、この人……というか天使がキルケと名乗ったんだけど……」


「ん? おお、ほんとだキルケだ。会っている時と服が違うから気付かなかった。翼もひっこめてるんだな」


 キルケをジロジロ見ていたアイは、はたと気づいたように言った。


「イセをいきなり誘拐するから、こんな目に会うんだぞ、キルケ」


 クラスメイトに反省を促すみたいな調子で、アイが言う。


「それで、こいつをどうするんだ?」


「ん? どうするって……」


 いきなり俺たちに襲いかかってきて、俺とカウフタンを誘拐して、さらには危険人物扱いして、殺そうとした。

 多分、やり返しても……いいんだよな?


「んじゃ、さらう?」


「なっ!? またおぬしは女に変えて、レ○プする気かっ!? そこまでする気なのかっ!?」


「っ!?」


 ウルシャと、捕まっているキルケが、ビクッとしてこっちを見る。

 明らかに、ケダモノを見る目だ。


「おぬしは、仮にも『神器』に、しかも天使に対しても、容赦なさすぎだぞっ」


「いや、しないから」


 と言いつつも、キルケが若干怯えた目でこっちを見ているので、溜飲が下がる気分になれた。


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