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28話 クオンの報告

 アイとのドライブを早々に切り上げて、屋敷に戻ってきた。

 戻ると同時にクオンとウルシャを呼んで、執務室へ。


「疲れている上、鬼に辱められた後にすまないが、クオンに聞きたいことがある」


「なんなりと言ってくださいっす! 僕はそのために戻ってきたっす」


 膝ガクガク言わすほどだったのに、もう回復していたクオン。流石クノイチ、体力と気力は並じゃないというところか。


「イセの『力』でカウフマンに奇襲をかける。そのために必要な情報を洗いざらい全部話して欲しい」


「わかっておりまっす。そのために僕がいるっす」


 自信満々に目をキラキラさせるクオン。


「では、カウフマン側の思惑を、僕が分析した限りで話させていただくっす」


 クオンは、カウフマンの考えを語りだした。


 衛兵隊長カウフマンは、アイとウルシャと俺の奇襲に気づきながら対策は全て後手に回った。

 誤算はまず、ハイエースのスピード。

 まさか半日と経たずに城下町まで攻めてくるとは思ってなかった。


 彼は、あの襲撃された日のうちに公爵令嬢オフィリアを捕まえて幽閉する方に兵力を注いでいた。

 だが、捕まえている最中にハイエースの侵入を許した。


「侵入を許しただとっ!? なんてことだ。よし、私が撃って出る! バリスタと弓の準備をしろ!」


 この時、カウフマンは侵入した俺たちのスピードと、不確かな報告の数々から、飛び道具の必要性にすぐさま気づいていた。

 だから、あのギリギリの状態で準備ができた。


 しかし、バリスタと弓で武装した衛兵たちによるハイエース包囲網は不完全に終わり、さらにはオフィリアまで確保された。

 そして最終的には完全に逃げられる形で終わった。


「くそっ、なんてことだ……まさかオフィリア様を奪われるとはっ!」


 公爵領の城下町を占拠したまでは、カウフマンの思惑通りだった。

 オフィリアを逃したことで、完全に歯車は狂った。

 このままでは、エジン公爵領を支配下に置くという目的は達せられず、謀反人扱いになってしまう。

 カウフマンはかなり焦った。


「AI機関を攻める。迅速にだ!!」


 カウフマンの決断は速かった。

 兵は神速を尊ぶ。指揮官としてのカウフマンは優秀だった。

 裏切り要素皆無の子飼いの精鋭3000を集め、一気に動いた。


「オフィリア様を救うため、ここに挙兵する!!」


 大義名分を得たとうそぶき、兵を動かす。

 だが、彼には読みきれない、むしろこのままでは負け戦の可能性が高いと踏んでいる要素があった。

 それが召喚された戦士。謎の『力』を発揮する存在。すなわち俺。


「あの高速の乗り物と、一騎当千の鬼どもを何とかする策がなければ、この戦は詰む!!」


 ろくな兵のいないAI機関の人員を捕虜にして、あの『力』を使わせないというのが一番有効な手だと踏んでいるカウフマンは、兵をこのまま動かす。

 だが、オフィリアを確保した時のように的確に索敵できる能力が、稀代の魔法使いであるアイにあることはわかっている。

 故に、アイ側もこちらに奇襲を仕掛けてくるだろうと彼は予想した。

 こちらの想像を超えるスピードを持ち、こちらの急所である自分の場所も把握されている。

 身を守りつつ、兵でAI機関を押さえ、アイと交渉によって活路を開く。


「オフィリアとアイをこちらの俎上に載せれば、あとはどう料理することもできるっ」


 ずいぶんと曖昧な作戦だが、それを実行するだけの決断力と戦場での経験値の高さ、さらには平民の出でありながら剣によって名を馳せるに至った豪運。

 衛兵隊長カウフマンは、その一種の博打打ちのような行動力で、今に至った武人。


「そう。私はつよーい!!」


 クオンは、そう締めくくって、報告を終えた。

 俺は、黙って聞いていたアイに意見を求めた。


「どう思う?」


「最後の『私はつよーい』以外は、カウフマンに似てないな」


「そこが一番脚色だと思ってたよ!?」


 カウフマンの意外な一面を見た。


「てか、いちいちなんでものまね入れてたんだ?」


「臨場感を出したっす。報告が長いとダレますから。合間合間にそれっぽい台詞を入れたんす!」


「素晴らしい気遣いだ。流石クオン」


「恐れ入りまっす!」


 これでいいの? とウルシャの方を見るが、どうもこの辺のノリにはついていけないようで肩をすくめた。

 そして本題とばかりにウルシャは、クオンに質問をする。


「クオン。つまり奇襲をかけて、相手の交渉に乗らなければ、カウフマンを討つことができるということか?」


「はい、そういうことっす。ていうか、ぶっちゃけ戦士殿の『力』なら、力押しでいけますよ」


 クオンが、楽勝っすという感じで言い、さらに得意げに言い出す。


「でも衛兵隊と戦わずにカウフマンだけを倒す機会、僕が作るっすよ?」


「どう作るというのだ?」


「カウフマンは、僕のことをまだ自分に寝返ったスパイだと思ってるっす。アイ様が降参したがってるとかウソついておびき出せば一発っすよ」


「え? そんな簡単に?」


 俺は動揺しつつ、アイとウルシャを見る。

 ウルシャは怪訝な顔をしているが、アイの方は少し真剣に考えつつ……


「よし、やってみよう」


「あいあいさー」


「だが無理はするなよ。危なかったらすぐ逃げろ。こちらにはイセがいるからな」


「わかってまっす」


 カウフマンとの戦いの方向性は決まった。

 なら俺としては、そこに乗るだけだ。


「今夜のうちに動こう。彼が想像もできないくらい迅速に奇襲だ」


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