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17話 衛兵隊長カウフマン

 衛兵隊長カウフマン。

 エジン公爵直属の近衛である衛兵隊を直接指揮している指揮官。

 農村出身で、実力で現在の地位を勝ち得た叩き上げの戦士だ。


 戦士としての実力が認められ衛兵になり、公爵閣下の覚えもよくて隊長にまでなった。

 はずなのだが、その引き上げてくれた閣下を裏切り、今現在城下町を支配している。


 と、そんな話をアイが、ざっくりと話してくれた。


「貴族のボンボンじゃなくて、実力者ってことだな。なら調子のって油断はできないな。さっさとここから去ろう」


 このハイエースに対して、攻城防城兵器でもあるバリスタを持ってきたあたり、確かに優秀ではあるんだろう。

 ひょっとしたら、あの巨大な矢を当てる手を持っているかもしれない。


 てか、いきなり出てきた自動車に、こんなに速く対応するなんて只者じゃないぞ。


「アイ様。彼にはこのエジン公爵領を支配する根拠がありません。オフィリア様は生きて捕まえようとするでしょう」


「うむ。保護と称して傀儡にするとか、いかにも公爵閣下を騙し討ちした者が考えそうなことだ」


 アイとウルシャからの評価は最悪のようだ。

 でもなんかその辺を聞いていて、微妙にしっくりこない。


「そんな叩き上げでバックボーンも持たない衛兵隊長が、なんで謀反なんて無茶なことしてんの?」


「あるぞ。バックボーン」


 アイはあっさりと教えてくれた。


「あいつの裏には『神器』のひとり、天使キルケがいる」


「天使? 神器?」


 また出てきた『神器』は分かるとして……天使って、あの天使?

 アイとウルシャの様子からして、またこの世界の常識に関わることか。

 天使って何? って話をしないとダメだろうな、これ。


「とにかくあのカウフマンってのが、国盗りとか大胆なことが可能な根拠はあるってことか……と、詳しい話は後にしよう、その前にここを切り抜ける」


「どうするつもりだイセ。城下町を出るなら正面だぞ」


「迂回が手っ取り早いとは思うけど、まっすぐ行けるかどうかは試したい」


 敵の戦力を計る必要はある。俺たちに対してどれだけのことができるのか、やってくるのか。

 そもそも、公爵令嬢を本当に傀儡に利用するのか、それとも亡き者にしてその天使キルケとかいうバックボーンを利用して、のし上がろうとするのか。


 彼がどこまでするのか、この一戦で片鱗を見る。


「鬼よ、出てこい」


 運転席の扉を開けると、そこから降りるように鬼が現れた。

 すばやく扉を閉めると、俺は命令した。


「目の前の衛兵どもを蹴散らしてこい!」


 鬼は獣の咆哮をあげながら、石畳を砕かんとばかりに駆け出す。

 それを見た彼らは瞬間的に焦りのざわめきが起こるが、衛兵隊長が腕を振るう。


「撃てい!!」


 騒ぎが起こっている広場でもよく通る野太い声に合わせて、バリスタから勢いよく矢が発射され、瞬く間もなく鬼の胸に突き刺さった。

 鬼は、疾走していた足が止まり、むしろ矢の勢いをうけて、後ろにたたらを踏む。

 胸に大きな矢を受けて、倒れなかっただけでもすごい。


「ひるむな! 弓隊、攻撃せよ!!」


 衛兵隊長はさらに攻撃命令を出すと、広場の方まで出てきたクロスボウを担いだ衛兵たちが、撃つ構えをとり、鬼に向かって矢を放つ。

 鬼はその矢を体に受ける。バリスタの矢のようにはいかないが、放たれた矢が何本も鬼の体に刺さっていく。


 それを見ながら、俺はハイエースをバックさせた。


「どうした? 前に出ないのか?」


「あの弓危ない。あんなに撃たれたら、こっちの車体が保つかわからない」


 フロントガラスに当たったりして割れたら、今後が大変すぎる。


「鋼鉄じゃないのかこれ。鉄だろ?」


「あんな矢を受けたら穴くらい空くって――って、鬼がやばいやばい! 退けっ! 消えろっ!!」


 矢を受けまくり、片膝をついたあたりで、俺は鬼を引っ込めた。

 あのまま攻撃にさらされ続けていたらやられていただろう。


「倒したぞ!! あんな怪しげな連中、恐るるに足らず!!」


 カウフマンの声に、おおおっ!!! という歓喜のざわめきが衛兵たちの間からおこる。

 倒したわけじゃないが、確かに彼らの攻撃によって鬼を引っ込めざるを得なかった。

 そしてここぞとばかりに士気をあげる衛兵隊長カウフマン。

 うん、手強い。


「どうしようか。あと9匹分の鬼を出して一気に間合いを詰めるか……」


「それだ! いけいけ!」


 と、アイは言うのだが、衛兵隊たちの様子にさらなる変化があった。

 彼らの間から、さらにバリスタが1つ2つと広場の前へ運ばれてきたのだ。


「やばいやばいやばい。退くぞ」


「でも、西門が開くぞ。間に合うのか?」


「そもそも本当に開くのか? あいつら西門の方から来たんじゃないのか?」


「うちの間者がその隙を突いたんだ。開くのは間違いない」


 そうウルシャが言うと、アイもうんうんとうなずく。

 どうやら間者の実力に自信があるらしい。


「そうだな。そこは疑ってもしょうがない!!」


 俺はさらにバックして、正面とは違うハイエースの車体ぎりぎりの路地に入っていった。


「逃げたぞーっ! 追え追え!!」


 衛兵たちの声が聞こえる。

 これからさらに追ってくる衛兵や、立ち向かってくる衛兵は増えるだろう。


「さあ、どうするどうする!」


「なんかおぬし、楽しそうだな……」


 この緊急事態っぷりに、これこれ、こういう冒険待ってた、って気持ちは拭えなかった。

 ちょっと、異世界を舐めすぎかもしれない。気を引き締めよう。


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