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104話 『神』になるために

 オフィリアは、アイや俺、そしてケアニスを客人としてもてなしてくれた。

 その後、与えられた部屋で、俺はアイと護衛のウルシャと共にいる。


「で、わざわざアイの部屋で話そうっていうのは何だ?」


「もちろん、ケアニスを外して話したかったことだ」


 そう伝えると、アイは予想していたことだけど、あまり話したくないって感じの反応をした。


「手短にな。今日も疲れてるから」


「わかった。んじゃ簡潔に。『竜』退治に反対する理由は?」


「危険だからだ」


「それはわかる。なら危険じゃなければ、いいのか? 俺の『力』を『竜』に使って」


「もちろんだ。危険じゃないっていう前提がもうおかしいけど。『竜』が危険じゃなかったことなんて、伝承の時代からない」


 話はもう済んだとばかりの態度だ。

 だが俺の話はここからだ。


「アイ。俺を呼びだしてから、今までずっと危険を承知でやってきた。であるなら危険だから反対は理由になっていないんじゃないか?」


「今までは降りかかる火の粉を払っていただけだ。だがケアニスの提案は違う。こっちから危険に飛び込むような行為だ」


「なるほど。それは確かにそうだ。でもアイは『竜』に俺の『力』をぶつけること自体、納得してないか?」


「どういう意味だ?」


「俺もわからない。召喚術で呼び出した存在同士をぶつけることなのか、それともケアニスの言う『竜』に対抗しるう『力』としてのことなのか。そこはアイにしかわからない」


「…………」


「だがもし、俺の『力』が本当に『竜』に対抗しうるものであるのなら、アイも試す価値はあるくらいのことは考えたんじゃないか?」


「何を言っているんだ?」


「それとも『竜』に危害を加える可能性があること自体を避けているのか? その『竜』を今のままにしておきたいとか」


「まさか。アイは人間の『神器』だぞ? 人間の国の首都を占領している『竜』がいなくなった方がいいぞ」


「そこに理由がないのなら。帝都の『竜』攻略そのものを反対している理由がわからない」


「だからそれは危険だからだ」


「危険を理由に避けるのはおかしい。アイの目的はなんだ?」


「うぐっ」


 アイはそう言われて口をつぐんだ。

 俺が今、この問題の核心に触れたからだろう。


「忘れているなら俺が言う。神になるためだ」


「……忘れてはいない」


「なら、危険ってだけでやらないのはおかしい」


「勝算がない。成功するかもしれない、でも失敗したらそれで終わり、って状況で反対しないわけないだろう」



「俺のことを心配してくれるのはありがたい。だがそれもやらない理由にはならない」


「何故だ!!」


「アイ……」


「『竜』に挑むという話になれば、イセは挑むだろ? だから反対したんだ。効くかどうかもわからない一発勝負に出なければならない理由がない」


 本気で俺のことを心配してくれているアイ。

 それはわかる。

 わかるんだが……


「なら、勝算があるかどうか、それを調べよう」


「何故そこまでする?」


「何故って……」


「おぬしが一番危険を伴うことなんだ。それを何故おぬしが進めるんだ」


 理由を問われて、ふと俺も疑問に思う。

 何故ここまで『竜』に挑むのを反対していることに、俺はムキになって反発しているのか。


 それは……


「……そこまでしないと、アイが神になれなそうだから、かな?」


 目の前のアイと、そして一緒に聞いていたウルシャも、俺のセリフに驚いた。

 驚いた理由はわかる。

 わかるからこそ、照れくさい。


「まあ、そのつもりで動いているものとばかり思ってたからさ。なのに俺の危険を理由にするのは本末転倒だろう」


 まさに俺はそう思う。

 そう思うが、照れくさいからか早口になってしまう。


「だから、勝算があるかどうか調べるところから始めよう。これなら行けるってなれば、その時に挑戦すればいいじゃないか」


 黙って聞いていたアイが、口を開く。


「ああ。イセがいいならアイは文句ない。調べてみるか」


「よし決まりだな。んじゃ帝都に行こう」


「はい?」


「『竜』を見に行こう」


 アイとウルシャが、声も出ないくらい驚いた。


 あれ? 調べるんだから、そうじゃないのか?


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