pevlee200711_01「連れ合い
pevlee200711_01
仮題「連れ合い」
1
ペブロイ第三世界。国王の城にて。
黒服の少年、メフィストがウワベノ国王に呼び出された。
「やア、王さん。足の骨治りました?」(メフィスト)
「メフィスト、うわべだけでもいいから、"様"をつけて呼んで欲しいもんだ。――足? こりゃもうダメになったわい。先日病院行ったときなんかなだな――」(国王)
「用件は、何ですか?」(メフィスト)
言葉をさえぎって云う。
「用件……。そう、地球に行ってノロ・ファウストと云う子供を連れて来い」(国王)
「子供? 子供をうっかり地球にでも置き忘れたんですか」(メフィスト)
「わしの子じゃない。いいから、つべこべ云わずに、地球へ行くの」(国王)
「まあ、はい。王さんの命令じゃ仕方ないですよ。行きますよ……」(メフィスト)
「今回の報酬はな、5000ドルだ」(国王)
「5000ドルねえ――。分かりましたよ」(メフィスト)
2
城からの帰り道にて。
(しみったれ根性の王さんが5000ドルの大金を出す、てなると―― なーんかありそうだ……
ノロ・ファウスト――。この名前知ってるぜ。昔、葬儀屋の息子か何かだったはずだ。ドジ踏んで、憎まれて――。――もうとっくに死んだはずじゃあなかったっけかな)(メフィスト)
日の落ちた城にて。
黒いネズミが城の資料保管室へ入った。
たくさんの引き出しがある。そのうち一つを引き出した。黒いネズミはいつのまにか人の形になっていた。――メフィストだ。
引き出しの中には書類がプラスチック樹脂のようなもので固めてあり、見た目はカルテのようになっている。それをペラペラめくって、何かを探している。
「ノロ……ノロ……ノロ……と……、あった、あった、ありました。」(メフィスト)
一枚取り出す。
「えー、名前、ノロ・ファウスト。年齢は、多分13歳、って書いてある。多分……? 性別……の欄には何も書いてない。住所、……」(メフィスト)
*
クーデターが拡大した。近隣の村まで巻き添えにしながら――
獄牢村中心付近、ノロの住む小屋にて。
小屋の中には隠し階段がある。地下室へつながる。ノロは大抵、地下室で生活する。そしてこの地下室は防空壕の性質も持つ。
地上へ露出する小屋は消し飛んだ。唯、灰が残った。
轟音は地下にも浸透した。ノロは睡眠中だった。不快感を感じながら、さらに地下へと降りた。
(――小屋の地下。それは地下十三階まで続いている。小屋の説明書にはそう書いてあった。だが地下三階までしか移動できない。そこに「開かずの扉」に似たものが存在した為。
さらに詳しく云えば、その扉は開いたり開かなかったりだった。時々開く。しかし扉がある。いくつも。やはりそれも時々開く。ノロは気持ち悪さを感じて、鋼鉄の壁でそれを閉ざした。)
*
小屋の地下室にて。
黒犬が歩いた。黒マントを被った黒犬だった。知らない黒犬だった。ノロはまだ眠っていた。
コタツにサングラスがある。気取ったサングラスがある。黒犬、サングラスを手に取る(前足に取る)。
黒犬、サングラス、顔へ。サングラス、滑って落ちる。カタン。
黒犬、サングラス、顔へ、押し付ける。三秒たってから、滑って落ちる。カタン。
諦めた。
黒犬、声、発する。
「ノロさん。初めまして。ノロさん、こんにちは」(黒犬)
ノロは、まだ寝ていた。一歩前へ進んだのち、再び云う。
「ノロさん、こんにちは。始めまして。こんにちは」(黒犬)
「……んん……ん…………――」(ノロ)
起きそうだ。起きそうだった。
「ノロさん。初めまして」(黒犬)
「…………うん。――――、誰……?」(ノロ)
起きて、そして犬へ云った。
「犬です。――ノロさん、一緒に来てください。獄牢村はもうダメです。危険です。ダメなんです」(黒犬)
「――――」(ノロ)
寝息が聞こえる。
「ノロさん、一緒に来てください」(黒犬)
「――ん、…………、何……?」(ノロ)
「一緒に来てください」(黒犬)
「ねむいや…… おやすみ…………」(ノロ)
「ノロさん!」(黒犬)
「…………ああ、犬……? だね。……えっと、何、かな……?」(ノロ)
「一緒に来てください!」(黒犬)
「へぇ……、どうして……?」(ノロ)
「とにかく、一緒に来てください! 時間がないんです。ああ、もう、本当に時間がないんです! じゃあ、布団ごと運び出します。いいですね?」(黒犬)
また眠りそうだった。
「へぇ…………」(ノロ)
「どうぞ…………」(ノロ)
そしてまた眠った。
*
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■雑記■
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2007-11-21
簡素な文体。短く切った文章。
内臓なし。骨なし。筋肉なし。表面的皮膚があり、内部は透明なゼリーがつめられている。脳、眼球、頭蓋骨、なし。
感覚神経なし。痛み感じず。感情も一部欠けた。恐れを感じず。
戯曲小説。小説形式を戯曲形式に近づけ、セリフ部分等に工夫を加えた。(セリフ部分にて、発言者名は、セリフの後につけた。前に書いてあると邪魔だと思ったため。それに、場面の流れで誰が話しているか分かる場合も多く、その場合はことさら邪魔、冗長だから)
獄牢村、対規模クーデター勃発(獄牢村のみならず周辺地域をも巻き込んでいった)。ノロは気づかない(或は気にしていない)ため、地下室へ眠り込んだまま。(1)
黒犬が登場する(正体メフィスト・ソウル)。唯、運んでいった。(2)
[仮]ペブロイに来ていた。王(ウワベノ王)と名乗る者から命令される。シアンと云う男を殺せ、と。ノロ、従わない(理由は、気が乗らない、指図されるのが嫌いだ、という程度)。兵士たち、始終機嫌を悪くする。王の城、出口付近で、不良兵士ともめ事を起こす。しかし気づいてみれば、不良兵士同士が争っているだけだった。(3)
メフィストはノロの能力を独り占めにしたくなった。また、ノロ自体にも惹かれていた。
2007-11-21
■テーマを捨てた執念
終始一貫した熱意のようなもの。テーマと似ているようで似ていない。――「欲望」、「執念」、――そうだ、"執念"に違いない。しゅうねん……!(けれどもものによっては、やはり「欲望」、「望み」のほうが近かったりする)
自分の場合を考えると。「人間への怒り」、「誰でも(大概の人が)持つ根本的な悪、或はエゴイズム(利己主義)」。最近はいくつか追加された。「人間嫌い、でも時々、人恋しい」
■
センチメンタリズム(感傷主義)
エゴイズム
ニヒリズム
シュールレアリスム
ナショナリズム
リアリズム
■
ゲゼルシャフト(利益社会)
ゲマインシャフト(共同社会)
――ゲマルシャフト(ルパン三世に出てきた村の名前。何でも命令を聞く人間へ作り変えて、各国へ売買していた。次元、五右衛門でさえ、洗脳されてしまっていた)
■
ノロはメフィストに心を開くようになった。しかしやはり、或程度の「嘘」が混ざりながら。
■
魔術師、魔法使いを相手にする。相手が魔法を使ってくるが―― ノロはそれを魔法などと非科学的なものだと信じず、凝った仕掛けだと考える。そしてその仕掛けを暴く。(しかし、暴けないのもいくつかあった。はたまた細かくまでは暴けないものも)
■ルパン三世と非科学的なもの
「非科学的なものは、このルパン様には通用しねエってことを、見せてやろうじゃないの」。
*
「奴の起こした地震は本物だ。こればっかりはおめえも認めるしかねえだろう」(次元)
「町の外にな、とてつもねえ大穴が開いてるんだ。間違いなく、地下原子力発電所の跡だよ。あれがハワード財団のものだったとすると、自身の原因は大体さっしがつくさ。」(ルパン)
「ルパン、理屈だ。てめえの云ってることは何もかもだ」(次元)
*
「古い手さ。瞬間的にガスで眠らせ、カゴごと外へ運び出す。凝った手品見せたあと、また同じ手で元へ戻す。まあ、奴にとっちゃあ、こんな芸当は――」(ルパン)
「(笑ったのち)君の合理精神には感服するよ。だが、それが限界でもある。この世には想像もできないような不思議なことがあるのだ。――きなさい不二子」(マモー)
不二子、意識喪失したようになる。誘導し、その後浮遊させ、連れ去る。