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終章
舞台は終わった。
拍手が収まり、客席の騒めきが次第に現実の音へと戻っていく中で、一人の観客がまだ動けずにいた。
視線は舞台の中央にはなかった。囃子方でも、地謡でもない。隅に座っていた男に釘付けになっていた。
一切の言葉を発せず佇んでいた男――後見。
何をしていたわけでもない。だが、舞台を操っていたような気がしてならなかった。全ての仕草、一歩の間合い、背後に漂う空気さえが意思のまま動いていたように感じられた。
その存在は圧倒的だった。
ほんの一滴の気配が言葉より雄弁だった。
――真実は誰も知らない。
あの目を見てしまった者はもう戻れない。その観客はまた舞台を見るだろう。いや、あの後見を見るためだけに舞台へ足を運ぶだろう。
――また一人、陰翳に囚われていく。
了




