1.プロローグ
私は、お腹に、包丁を刺されていた。
強烈な熱と共に、生温かい血液が、私の手を伝って流れ落ちる。
ああ、死ぬんだ。
最期は、今日初めて会った、知らない人に殺されるんだ。
思えばロクでもない人生だった。
今度生まれ変わる時は、この「能力」がない人生がいいな。
普通の家に生まれて、普通の生活をして、恋愛小説のような恋をして……
私の意識は、混沌の海の中に沈んでいった。
私の生まれた家は、平安時代から続く「降霊術」を生業とする、ある意味歴史ある家だった。
私はその家の長女として生まれ、歴代ナンバーワンと言われるほどの霊感を持っていた。
でもね、この令和の時代に、「霊感」なんて必要なかった。
全て技術で解決できるんだもん。
歴史ある私の家も、仕事がなくて、ぶっちゃけ貧乏だった。
そして、久しぶりの仕事だった、「遺言書を遺さずに死んでしまった資産家の霊を降霊させて遺産相続を話し合う」という仕事で、私に降霊した「資産家」が「遺産は全て三男に渡す!」などと言ったから、さあ大変。
話し合いの場は騒然となり、次男が「この嘘つき女が!」と私をぶすりと刺して、ジ・エンド。
もちろん、嘘じゃない。
私は成仏していない霊だったら、百発百中で自身に降霊させられるのだ。
でも、そんなこと、他人には分からないよね。
そう、私は「インチキ降霊術師」という不名誉な名前を付けられて、死んでしまったのだ。
恐川いちこ、享年25歳。
次に目が覚めた時は、死ぬ間際の希望通り、いわゆる異世界の、とある村の平凡な村娘Bだった。




