異世界転移…?いやまさか。
目が覚めたとき、真っ先に感じたのは病室の白い蛍光灯の光と柔らかいベッドの温もりとツンとした消毒液の匂いではなく、眩しいぐらいに明るい青空とデコボコとした地面の感触と、生い茂る木々の香りだった。
「は…!?」
訳がわからない。さっき私は、信号無視をしてトラックに撥ねられたはずだ。なのに、なぜ森に居るのだろう?
「私、さっき死んだんじゃ…?いや、死んでなかったとしても病院にいるはずじゃ……?」
取り敢えず、起き上がってみる。頭がグラグラするし服は派手に擦り切れ、血が染み込んでいるのでふっ飛ばされ引きずられた無惨な死に方だったかがわかるが、体には目立った傷はないようでひとまず安心した。確実に骨が折れた感覚がしたのだが、何故か無傷だ。さっきまで背負っていたリュックサックもあるし、どうやら怪我以外は轢かれた時の状態でここにいるらしい。周りの木々も見たことない物だし、どうなっているのだろう。トラックに撥ねられたし、もしかしたらラノベとかでよくある異世界転生…いや見た目そのまま出し異世界転移かもしれないというオタク夢女子かつ中二病じみた考えが頭を過る。
「え、いや…え!?どうしよう!?」
なんとなく理解できてもそんな簡単に現実を飲み込めるわけもなく、現実逃避と現状確認として手元にある持ち物を確認してみることにした。
「たしか万能ナイフと折り畳みナイフはあったはず…。」
リュックサックの中身を次々に取り出していくと、1番奥にステンレス製の青い万能ナイフと、木製の柄がついた折り畳みナイフがあった。持ち前の阿呆さと中二病のせいで持ち歩いていたが、まさか本当に役に立つ日が来るとは思わなかった。
「他にも使えそうなものないかな…。」
リュックサックの中に入っていたものやら所持品やらを一つ一つ確認する。事故の衝撃でぶっ飛んだものもあるだろうし、色々入れてたから全部把握できていないのだ。
——10分後
「よし、こんなもんか。」
今の持ち物+衣類はこれだ。
・大きなリュックサック。たくさん物が入る。
・血のついたパーカー。ところどころ解れ血がついている。
・灰色の長ズボン。生地が薄くていつでも着れるお気に入り。
緑のワークキャップ。おじいちゃんからもらった。
・黒いスニーカー。歩きやすい。
・万能ナイフ。サバイバルにはもってこい。
・折り畳みナイフ。切れ味バツグンのスグレモノ。
・財布。2683円とポイントカード入り。
・壊れたスマートフォン。画面もフレームもバキバキだ。
・千切れたイヤホン。事故の衝撃で片方が吹っ飛んだらしい。
・ヒビの入ったヘッドホン。少しだけヒビが入っているがまだ使えそうだ。
・モバイルバッテリー。スマホが壊れたので必要がなくなった。
・飲みかけの水筒。あと残り半分もない。
・エコバッグ。容量が多いのに畳むとコンパクトになる。
・手鏡。菊が描かれた二面鏡。
・櫛。青いプラスチック製。
・道端で拾った石。白くて透かすとキレイ。
・ハンカチ。キレイなままだ。
・ティッシュ。少し量が減っている。
・絆創膏×2。非常に心もとない量だ。
・ヘアゴム×2。黒と紺のヘアゴム。
・家の鍵。もう二度と使うことはないだろう。
・メモ帳。まだあまり使っていない。
・筆箱。いろいろな文具が入っている。
・シマエナガのキーホルダー。友人がくれた大切なもの。
…全部見覚えのあるものだ。頬をつねってみても痛い。手に取ったナイフの冷たさも重さも、妙に生々しい。
どうやらこの状況は夢ではなく現実らしい。かすかな希望が音もなく、消えた。




