自業自得な死因
なにかに集中した途端、周りが見えなくなる。
それが私、一ノ瀬ひまりの悪癖だった。
歩きスマホが危険なら、歩き読書はもっと危険。そんなことは小学生でも知っている。知っているけれど、やめられない。だって続きが気になるし、今読まなきゃ熱が冷めるし、そもそも信号待ちとか移動時間って暇だし。
「やっぱこの作者さんめっちゃすごいなー。」
語彙力の皆無な言葉をぶつぶつ呟きながら、私はページをめくる。
五月の夕方。空は薄暗く、車道には帰宅ラッシュの車が並んでいた。俯いて本を読んだまま、私は駅前の横断歩道へ向かう。
イヤホンは片耳だけ。周囲の音は一応聞こえるようにしている。私なりの“安全対策”だった。
「うわ、ここエモいな〜。」
完全に本へ意識を持っていかれていた。
私は何もも確認せず進んだ。
視線は文字の上から一ミリも動かないまま。
その時だった。
――短く鋭い、クラクションの音。
「え?」
顔を上げる。目に映ったのは、眩しいライトと、信号無視のトラック。
…いや、違う。赤信号を無視していたのは
「……あ、」
私だ。
理解した瞬間にはもう遅かった。
全身が浮く。
手から本が離れる。
アスファルトが遠ざかって、空が近づいて、何かが折れる音がした。
痛みは…思ったより、遅れて来た。
「っ、ぁ……」
息ができない。
視界の端で、ページがばさばさと舞っていた。
お気に入りのシーンに挟んでいた栞が、道路に落ちる。
周囲が騒がしい。
誰かが叫んでいる。
でも不思議と、私の頭は妙に冷静だった。
(……嗚呼、死ねば勉強しなくて済むんだな。)
そんなことを考えてしまうあたり、自分でも終わってると思う。
意識が沈む。
音が遠ざかる。
街の光が滲んでいく。
最後に見えたのは、ぐしゃぐしゃになった本のページと、赤い花弁だった。
――そして。
次目が覚めたとき、写っていたのは全く知らない景色と青空だった。
読んでくれたみなさん、本当にありがとうございます。本作は記念すべき(?)第一作であり第一話です。ちなみに主人公のひまりちゃんは自分をモデルにしました。いつも本読んで下校してたので友人に「いつか事故って死ぬぞお前w」って言葉思い出して妄想してたらこんな作品が出来上がりました。これからもよろしくお願いします!




