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朝焼色の悪魔-第4部-  作者: 黒木 燐
第3章 暗転
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6.沈黙の行進

「起きてるか、篠原っ! 俺だ、紫藤だ!!」

「シドウ? ひょっとして、逸美(いつみ)ちゃん?」

「そうだよ、紫藤逸美だよ」

 それを聞いて由利子は一気に緊張感が抜けていくのが判った。

「紗弥さん、大丈夫よ。古い知り合い……幼馴染なんだ」

 由利子の許可を得て、紗弥はすうっとドアから離れ由利子の傍に立った。ドアの向こうからまた声がした。

「入ってもいいか、篠原?」

「うん、いいよ」

 由利子が答えるや否や、ドアが開いて大柄な男性が駆け込んできた。制服から自衛隊隊員だとわかる。

「しのはら、大丈夫か?」

「逸美ちゃん、どうしてここへ……?」

「俺が除染の任務をうけて駅に駆けつけた時、おまえの姿を見たんだ。民間人のいる場所じゃなかったし外国人と一緒だったんで気になってな、任務終了後に問い合わせたら犠牲者の友人という身元確認者がお前の名前じゃないか。これは偶然じゃないと思うと、もう、居ても立ってもいられなくなってな」 

「いつみちゃ……」

「大変だったな、篠原」

 いきなり現れた幼馴染に緊張の糸が切れたのか、由利子の目から涙があふれて子供に戻ったように泣きだした。紫藤は紗弥がベッドサイドに用意した椅子に座ると、何も言わずに由利子の肩を抱いて、彼女が落ち着くのを待った。テレビでは森の内知事が山川市長や警察署長らの会見のVTRが流れ、一同が深くお詫びの礼をするシーンが映っていた。紗弥は出番がなさそうなので、取り敢えずテレビを見ることにしてドアの傍の壁に寄り掛かった。会見の途中で新たな犠牲者の報告があった。ガレキに生き埋めになり救出が長引いた土産売り場の女性店員だった。容態の安定を伝えられていたが、救出後容態が急変したということだった。死因は長時間圧迫されたための挫滅症候群と発表された。これで、自爆容疑者を含め死者が三人となった。画面を見つめる紗弥の表情は無表情だったが、眉間にかすかな皺があった。


 しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻した由利子が少し困ったような笑顔で言った。

「取り乱してごめん。久しぶりやね、逸美ちゃん。二十年ぶりかなあ」

「また、昔の『泣き虫ゆりちゃん』に戻ったのかと思ったぞ」

 と、紫藤は安心したように微笑んで言った。一見強面だが存外優しい眼をして笑う。

「やめてよ。そんな昔の事」

 由利子は紗弥がいるところで幼馴染に黒歴史を言われ、焦って言った。

「ああ、わるい、わるい」紫藤が笑いながら言った。「多田が誘拐された事件の後、強くなるんだって頑張ったもんな。おかげで戻ってきた犯人を逮捕できた」

「あの時逸美ちゃんも一緒に犯人に立ち向かったじゃない」

「俺は良いトコなしだったよ。結局トドメの一撃を食らわしたのは多田やったし」

「その美葉なんだけど……」

 と、由利子は表情を曇らせながら言った。

「実は……」

 由利子が美葉の事件のことをかいつまんで話すと、紫藤は表情を曇らせながら言った。

「参考のために一連の調書に目を通してきたが、そうか、指名手配中の男に誘拐された女性と言うのは多田だったのか」

「うん……」

「何の因果かなあ……。で、何か進展はあったのか?」 

 由利子は返事をする代わりにうつむき加減で首を横に振った。

「そうか……。でも俺はあいつならなんとかするような気がするんだ。大丈夫、きっと戻って来る」

「うん」

「今日の事は俺も何と言って励ましていいかわからん。わからんが、あまり自分を追い込むな」

「でも、私と関わらなかったら……」

「そんなことは神さんにしかわからん。けど、そう思うのは仕方がない。仕方がないがそれは何にもならん。亡くなった人にもおまえにもな。泣いて泣いて涙が枯れたら前を向け。俺は東北では前へ進むしかなかったがな」

「逸美ちゃん、東北で……」

「福島の除染でな。ひでえもんだったよ。未だに夢に見る」

「…………」

「篠原」

 紫藤は由利子の手を握って言った。

「俺は自衛隊員だ。覚悟は出来ている。しかし、おまえは民間人だ。俺たちと同じような覚悟をしろとは言わん。だけどな、おまえは今、テロ対策チームの一員でもあるんだろう? ならば足を引っ張るのだけはやめろ。もし、そんなことになりそうであれば、チームから退くんだ。その程度の覚悟はしてほしい」

「うん。判ってる。教授にも言われた。ここで辞めるか踏ん張るか決めろって」

「そうか」

「だから、踏ん張るって決めた。だから、大丈夫……」

「そうか」

 そう言うと、紫藤はさらに力強く由利子の手を握りしめた。

 そこに葛西が「由利子さん、大丈夫ですか?」と言いながら勢い込んで入ってきたが、思わぬシーンを見て「だ、誰?」と言うと固まった。いつの間にか入って来て紗弥の傍に立っていたギルフォードが、「おやおや」と言って肩をすくめた。由利子がそれに気づいてバツの悪そうに眼のふちに残った涙をぬぐいながら言った。

「あ、この人は私の幼馴染で小学校と中学が同じだった、紫藤逸美さんです。今は自衛隊に……」

 由利子が言うと紫藤はさっと立ち上がって直立不動になると、ビシッと敬礼をしながらよく通る声で言った。

「陸上自衛隊第四化学防護隊より除染のため派遣されました、紫藤逸美であります」

「聞いていますよ」

 と、ギルフォードが言った。

「サイキウイルス対策特殊部隊の隊長さんですね」

「はい。あなたが篠原の上司であるギルフォード教授ですね」

「上司っていう感じでもありませんが、ボスと言えばボス……かな」

「お噂は我々もお聞きしております」

「あそこで固まっているのは、対策チームで県警刑事部所属のカサイ巡査部長です。で、彼女は僕の秘書のタカミネです」

 と、ギルフォードは残る二人を紹介した。紗弥はにっこりと笑って会釈し、葛西も我に返って言った。

「葛西です。よろしくお願いいたしますッ」

「声が裏返っていますネ」

 ギルフォードは葛西を見て微笑ましそうに言うと、紫藤に向かって言った。

「僕のことはアレクと呼んでください。あなたのことはシドってお呼びしていいですか?」

「仲間からもそう呼ばれてますから、シドで構いませんよ。アレク、これも何かのご縁でしょうから、これからよろしくお願いいたします。それでは、私は戻らねばなりませんのでそろそろ失礼いたします」

 紫藤はギルフォード達にそういうと、由利子に向かって言った。

「じゃあな。お互い頑張って乗り切ろうぜ!」

「うん、ありがとう。逸美ちゃんも気を付けてね」

「応ッ!」

「今日はお疲れさまでした」

「駅の除染ありがとうゴザイマシタ!」

 紗弥とギルフォードも労いの言葉をかけた。しかし、葛西はまだ固まったままだった。その後紫藤はドアに向かったが、途中葛西の傍らで立ち止まると耳打ちした。

「大丈夫、俺にはもう嫁さんと娘がいるんだ。篠原をよろしく頼むな、葛西刑事!」

「えっ? えっ? あ、いえ、僕はっっ」

 うろたえる葛西をよそに、紫藤は「それでは失礼します」と言うとドアの向こうに消えた。

「ユリコ、具合はどうですか?」

 紫藤が去ったのを見届けると、ギルフォードは由利子に向かって聞いた。由利子は恐縮しながら答えた。

「もう大丈夫です。みなさんご心配おかけしました」

「では、そろそろ帰りましょうか。もう十一時近いですよ」

「十一時……。追い山はもう中止でしょうね……」

「はい、市長から正式発表がありました」

「そうですか……」

 由利子は暗い表情で言った。心底やるせない気持ちだった。

「さあ、帰りましょう。用意してください」

「はい」

 由利子は答えるとベッドから出て立ち上がった。

 葛西は由利子の無事を確認した後持ち場に戻っていったので、由利子は行きと同じくギルフォードの車に紗弥と3人で乗っていた。駅に向かっていた時にはまさかこんな事態になるなんて想像も出来なかった。笑顔で黒岩を送るはずだった。なのに何でこんなことに……。

 車の中の空気は重かった。誰も一言もしゃべらなかった。いつもはかかっている軽快な音楽もなく、ラジオも由利子を配慮してか、かけようとしなかった。代わりにショパンのピアノ曲が静かに流れていた。そんな中で由利子がぼそりと聞いた。

「あの、黒岩さんのご家族はこちらへ向かって……?」

「ええ。ただ、時間的に今日中に来られる便がないそうで、明日早朝になるということでした」

 ギルフォードが答えると、由利子はそっとため息をついて「そっか……」というと、また黙って窓の外を見た。


 ギルフォードは、紗弥に車の番を任せて由利子を部屋まで送った。部屋の前でギルフォードはそっと由利子に聞いた。

「大丈夫ですか?」

「はい。もう大丈夫です」

「遅くなったんで、猫さんたちもお待ちでしょう。はやく安心させてあげてください」

「今日は本当にご迷惑をおかけしました。ありがとう。みんながいてくれて心強かった……」

「当然です。仲間でしょ? 明日は海の日で祝日ですが、対策チームは緊急事態で出勤です。でも、辛いようでしたらお休みしても構いません」

「いえ、行きます。家に居たってきっと辛いだけだから……」

「そうですか。では、明日は定時にお願いします。早く帰って体を休めてください。それでは、また明日」

「はい。よろしくお願いします」

 ギルフォードはにっこり笑うと由利子に背を向けた。しかし、数歩歩いて振り返り言った。

「ユリコ。君が言っていたこと……、『自分と関わらなかったら死ななかったのではないか』。それは、僕にとっても永遠の命題です。サヤにとってもね」

 ギルフォードが初めて紗弥を呼び捨てにしたので由利子は少し驚いた。

「でもそれに心を奪われるのは、シドが言っていたとおり、誰のためにもなりません。冷たいようですが、明日には復活してください。ルイコさんの無念をはらすためにも」

 由利子は無言でこくりと頷いた。何度もそのような思いをしてきたギルフォードの言葉は重かった。由利子はそんなギルフォードの心に今にも緊張で切れそうな1本の糸があるように思えた。

「では、サヤさんが待っていますので、また明日」

 ギルフォードはそう言ってもう一度微笑みウインクすると、今度は振り向かずに去って行った。

 由利子が玄関に入ると、声に反応していた猫たちが玄関マットに座って待っており、由利子の顔を見て同時に「にゃあ」と鳴いた。

「ごめんごめん、おなかすいたね、最近ずっと朝晩二回だもんね」

 由利子はそういうと急いで靴を脱いで、部屋に入った。しかし、机の上にバッグを置くと、猫たちに向かって「ごめん、ちょっと待ってね」と言うと、そのまま横のベッドにうつぶせに倒れ込んだ。その肩は小刻みに震えており、猫たちは彼女の横に並んで座ると首をかしげながら、時折彼女の髪の毛の先をちょいちょいと撫でていた。


 美波美咲たちは、疲れ果てていた。実況中継と取材に追われ、さらに夜の全国版特番にも中継で出演させられ、何とか解放された時はすでに丑三つ時を過ぎていた。美波は自分の机に突っ伏して、赤間は椅子を三つ並べてイナバウアー状態で、小倉に至っては床に直接大の字に寝転がって爆睡していた。その彼らに向かって誰かが声をかけた。

「おまえら、寝ている場合じゃないぞ」

「……ん? んぁ?」

 美波が寝ぼけ眼で顔を上げた。声の主は藤森デスクだった。

「んあ?じゃないぞ。起きろッ!」

「え? あ、デスクね……」

 そう言いながら美波はもう一度机に突っ伏したが、0.3秒でガバと起き上がり立ち上がった。

「デスク! すみません。赤間ちゃん、オグちゃん起きて、ほら」

 美波に起こされて目を覚ました二人も驚いて立ち上がった。

「な、何事ですか?」

「まさか、また爆発……」

「馬鹿たれ、縁起でもないことを言うんじゃないよ」

 藤森は二人の頭を軽くぽんぽんと叩いて言った。

「追い山は中止になったが、山は動くらしいという情報が入った」

「ええっ?」

「走らないが動くということで各流れに人が続々集まってきているらしい。お前ら今から行って中継してきてくれ」

「わかりました! 行くよ、おまえたち!」

「アラホラサッサー!」

 と、妙なテンションで3人は出て行った。

「あいつら大丈夫かね」

 彼らの姿を見送りながら藤森は肩をすくめて言った。


 由利子はギルフォードに言われたとおり、シャワーを浴びて早めに寝たが、案の定、なかなか寝付けなかった。今日の出来事が振り切っても振り切っても頭をよぎる。黒岩の娘が今どんな気持ちでいるか、舅や姑がどんな気持ちで孫を連れてこちらに向かっているのかなどを思うと辛くてたまらなかった。せっかく長野での生活に光が差し、新たな生活を送る希望が見え始めた頃だった。これから母子は安泰に暮らせるはずだった。それを思うと辛くて悲しくて涙が流れた。それでもなんとかうつらうつらすると、今度は悪夢にさいなまれた。昼間の自爆テロ現場に何度も立ち、爆発音と爆風に曝された。黒岩が目の前で何度も爆風で吹き飛ばされた。由利子はその度に黒岩の手を掴もうとするが、彼女の手は常に空を掴んだ。

 由利子は寝ることに疲れて起き上がりしばらくぼーっとしていた。外では雨が降りはじめたのだろう、ぱらぱらという雨音が聞こえてきた。

 ふと時計を見ると、明け方の5時を少し過ぎたところだった。本来なら既に追い山のレースが始まっている頃で、今年は自分等も見物しに現場にいるはずだった。由利子はため息をついたが、もう眠る気も失せてしまったのでニュースを見ようとテレビのリモコンを手にし、スィッチをいれチャンネルをぱっぱっと替えていった。すると、ザッピングしている間に一瞬画面に美波の姿が見えた。急いでチャンネルをめんたい放送に切り替えた。

「……ぅの美波です。今私は○○通りにいます。本来ならこの時間は山を担いだ男たちがタイムを競ってこの通りを駆け抜けていくはずでした。しかし、ご覧ください」

 美波が言うと、カメラが沿道に切り替わった。そこには山を担いだ男たちが雨に打たれながら無言でゆっくりと歩いていた。その行列は途切れることなく、各流れが走る順に並んであるいているようだった。男たちの姿はいつも通りの水法被と締込姿だが、各々腕などに喪章として黒い布を巻いていた。山もきらびやかな装飾は出来るだけ排除し、代わりに白い花を飾っている。

「市長より中止の発表がありましたが、犠牲者を追悼したいという気持ちから人が集まって来たということです。それを受けて、沿道には鎮魂のキャンドルやライトを持った人々が続々と並び、光の帯が出来始めました。なんという異様で美しく悲しい光景でしょう」

 由利子はテレビ画面を呆然として見つめていた。目からは無意識に涙があふれている。そんな時、由利子の携帯電話がに着信が入った。見るとジュリアスからだった。由利子は両目をぬぐうと電話を取った。

「もしもし」

「由利子、アレックスから聞いたよ。大丈夫きゃ?」

「正直あまり大丈夫やない」

「そのようだがやあ。そっちはまんだ朝早ぁかと思ったんだが、多分おみゃあさんが眠れていねぇだろうと思ったんで、思い切って電話してみたんだがよ」

「うん。ジュリーの声を聞いたら少し落ち着いたよ」

「ほうかね? ……本当なら今頃は追い山の最中だろ」

「それが、今、あっとおとよ」

「え? 走っとるのか?」

「ううん、走っとらんの。みんな喪章つけとって……」

 由利子は声が涙で上ずりそうなのをこらえ、咳払いして続けた。

「黙々と歩いとって、まるで……」

「葬列のような?」

「うん」

「ほうか……。しんどいな」

「まるで祭り自体が葬られとるようで……」

「おれも隔離さえされとらんかったら間に合ったのだろうが、そんな辛ゃあもんを見るんだったら、却って良かったかもしれにゃあな」

「ああ、そうやった。ジュリー、あんた隔離されとったんやったね。解放されたんだよね」

「あたりまえだがよ。発症でもせん限りそんなに長く隔離できるものじゃねぇよ。そもそも感染しておらんかったし」

「そっか。ほっとしたよ。じゃあやっとこっちに帰ってこれるんやね」

「それが、その前にちょこっと恩師に会うてから帰ろうと思うとるんだがや」

「え?」

「心配せんでええよ。ほんのちょこっとだで、まあひゃあ(もうすぐ)帰ってくるがや」

「で、恩師って誰?」

「ああ、おれの行っていた大学のもと教授でレィヴニンという人だがよ」

「らべん……? まあ、聞いてもわからんか」

「ウイルス学の権威だった人だがよ。いろいろあって今は隠遁生活をしとるらしいんだ。高齢なんで心配しとったが、ようやっと住所がわかったんだ。せっかくだで挨拶ついでに今回のウイルス事件についてアドバイスをもらってくるからよ」

「ああ、そういうことね。じゃ、その後帰って来れるんだね」

「おお。たりめーだがや。そん時は俺の胸かしてやるからよ、でーら泣いてえーからな」

「バカ」

「冗談じゃあねえだがや。アレックスは甘やかせてくれねえだろ?」

「ありがと。でも、アレクがやきもち焼いたら可哀相やから止めとくわ」

「あはは。そりゃあ心配せんでもえーて。ほんなら電話代がめちゃんこ高ぇんで切るでよ。由利子、無理こくなよ」

「うん、ありがとうね」

「じゃあな。See ya soon, Yuriko!」

「うん、See you! 待っとおけんね」

 電話が終わると由利子は電話を両手で握りしめた。

「ジュリー、心配してわざわざ電話くれたんだ」

 由利子はそうつぶやくと、テレビに背を向けごろんとベッドに横たわった。ジュリアスの落ち着いた声と方言に少し癒されたのか、しばらくするとかすかな寝息が聞こえてきた。しかし、その頬には真新しい涙の痕があった。猫のじゃにゃ子がそれを舐めて不思議そうな顔をしたが、傍に寄ってきたはるさめとともに由利子に寄り添って横になった。


「ほとんどの『流れ』が神社に集結しました。しかし、境内は人いきれこそあるものの異様に静かです。沿道を縁取っていた蝋燭の帯は、そのまま自爆現場のH駅に向かって流れていくようです。我々もこれから二手に分かれます。私はH駅の方に向かいます。いったん中継からスタジオに戻します!」

「美波さん、気を付けてくださいね!」

「はい!」

「それでは、昨日のH駅自爆事件についてもう一度……」

 寝静まった由利子の部屋の中で、テレビの音が地道に報道を続けていた。


【第4部 第3章暗転 終わり】

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