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第34話『魔神器』


 「ここら辺かな?」

 

 《空間移動(テレポート)》を使い、無線越しに感じた健司への違和感をおぼえ、健司を捜索しているヒツギ。

 

 「適当な嘘で来てみたけど、魔力はここら辺なんだよなぁ」

 

 あたりをキョロキョロと見渡していると足がちらっと見えた。その場所をよく見てみると健司が倒れていた。

 

 「健司! これはまずい……!」

 

 血だらけの健司を見てヒツギは取り乱すことも無く魔力を右手に集中させる。

 

 「ファーストエイド」

 

 ヒツギが使ったのは詠唱のいらない簡易回復魔法、実際は痛み止めや多少の止血程度しか効果はないが健司の傷口が少しづつ塞がっていく。

 

 「出血も多いし魔力もほとんど尽きてる……これじゃ傷を塞いでもダメかもしれない……」

 

 ヒツギの顔に焦りが見え始める。しかし、ヒツギの予想に反して健司の手がヒツギの腕を掴む。

 

 「……腹減った」

 「え?」

 

 健司はヒツギはカバンの中から任務前に市民街で購入したハンバーガーを探り出し思いっきりほおばった。

 

 「え……?」

 

 さっきまで死にかけていたとは思えない勢いでカバンに入っていたハンバーガー三つをたいらげてしまった。

 

 「ふぅー」

 「魔力が少しだけど回復してる? 確かに食事で魔力の回復は出来るけどこんな早くそれに大幅に回復するなんて」

 「助かったよヒツギ。ありがとう」

 「う、うん……どういたしまして」

 

 死んでもおかしくなかった。いや、生きていることがおかしいこの状況でヒツギが今まで立てていた健司の謎の魔力の正体は仮説から確信へと変わった。

 

 「今のでようやく分かったよ。健司の魔力、と言うより力の正体が」

 「そうなのか?」

 「健司の力の正体は……鬼、だね」

 「鬼ぃ?」

 

 ヒツギの口から出てきた以外な言葉に健司は疑いの目を向ける。

 鬼、それは日本に古くから存在する強さの象徴とも言える妖怪。

 

 「鬼って妖怪だろ?」

 「妖怪も悪魔も大差ないよ。でも、鬼ってなるとなかなか面倒だね」

 

 ヒツギは少し面倒くさそうに頭を搔く。

 

 「面倒って何がだよ」

 「鬼の力は健司が思っているより強大なんだよ。悪魔の遺伝子が組み込まれたからって鬼の力に体が耐えれるとは限らないんだよ」

 

 ヒツギが懸念しているのは力の暴走。

 

 そこからヒツギは自分の知る限りの鬼の力のことを健司に説明した。

 大昔に羅刹と言う鬼が力を求め人間を喰らい続けていた。

 喰らった人の数が一〇〇〇を超えた時、羅刹は何者にも負けないほどの力を手に入れていた。しかし、その力を受け止めるのに鬼の体でも限界があり、体は朽ち果ててしまった。

 

 人々は羅刹の恐怖がさったと思ったがそれは間違いだった。

 羅刹の体は朽ち果てたが、魂となり、人間に取り憑きその体が朽ちるまで人を殺し続けた。

 取り憑かれた人間は強大な力を手にし、異常なまでの殺戮衝動にかられたという。

 

 「今の健司は実際かなり危険なんだと思う。捕食による急激な回復、鬼の力が表にどんどん出てきてるんだよ」

 「じゃあ、俺もそのうち抑えのきかない殺戮衝動に駆られるかもな」

 「笑い事じゃないんだけどなぁ」

 

 軽口を叩く健司にヒツギは呆れ果てる。

 

 「それより千寿はどうなった?」

 「健司と一緒に隊長と合流してもう本部にはついてる頃だろうね」

 「なっ!? それを早く言えよ! 早く俺を魔法を使って本部へ連れて行ってくれ」

 

 健司の言葉にヒツギは首を横に振る。

 

 「策もなしに戦ってまた負けるだけだよ? 実際一度死にかけてるんだから」

 「あれは状況に混乱した隙を突かれただけで実力なら圧倒的に俺の方が──」

 「健司は千寿ちゃんに絶対に負けるよ。そして遥も確実に殺される。そして、紫苑かビリーに千寿ちゃんは殺される」

 

 健司はヒツギの言葉に何も言い返せなかった。状況に混乱した隙を突かれたと言っていたがいつもの健司ならなんの問題も無いはずだ。

 

 千寿に攻撃することが出来ない。

 そしてそれは遥も同様だ。

 

 「それでも俺は今すぐ行かないといけないんだ。千寿は騙されてるだけだから、ヒツギの力を貸して欲しい。俺一人じゃ助けられない」

 「はぁ……だからボクは策を考えようって言おうと思ったに君ってやつは本当に……」

 

 ヒツギはジトーっとした目で健司のことを睨みつける。健司は申し訳なさそうに目をそらす。

 

 「じゃあ、策を練るから千寿ちゃんはどうやって健司と戦ったのか教えて」

 「どうやって……千寿は特殊な武器を使っていた。それぐらいだな」

 「なるほどね、千寿を連れ去って偽健司が何をしたか分かったよ」

 

 ヒツギは魔法で黒板のようなものを出し、それに絵を描きながら説明を始めた。

 

 「千寿ちゃんは健司や遥みたいに悪魔の遺伝子を組み込んだんじゃなくて魔神器を使えるようにされたんだね」

 「その魔神器ってなんなんだよ」

 「魔神器は魔法器の元になった全てが魔宝石によって作られた使用者を自ら選ぶ武器だよ」

 

 使用者を選ぶ武器、魔神器。それを使えるようにするために体内に液状の魔宝石を入れられたらしい。

 人間の常識を完全に超越した武器をもつ千寿を健司と戦わなければならない。

 健司は怒りを押し殺す。

 

 「千寿を殺さないと駄目なのか……?」

 「殺さなくていい策があるから、早とちりは良くないよ」

 

 ヒツギは健司を座らせ、後ろで何かを唱え始めた。普段の詠唱とは違い健司には何を言っているのか理解することすら出来ない。

 

 何をしているのか健司が振り返り確認しようとしたときに首の付け根あたりに激痛が走る。

 

 「――ッ! なにすんだよ!」

 「特別な魔法陣を埋め込んだのさ。これで健司は鬼の力を暴走することなく使えるよ」

 

 どうやら健司が激痛を感じた場所には魔法陣が刻み込まれたらしい。

 

 「ボクが健司の暴走しないように魔力を抑えるようにするための魔法陣さ。抑え込んでるから鬼の力は実際の半分以下になると思うけど暴走するよりはマシさ」

 「でも、鬼の力の使い方なんて……」

 「本当に必要なとき、健司が力を求めるとき、その力の使い方がわかるよ」

 

 ヒツギは足元に魔法陣を作り出す。

 

 「千寿ちゃんを助けに行くよ!」

 

 健司とヒツギは眩い光に包まれ、本部へ一瞬で駆けつける。

第34話を読んで頂きありがとうございました。

第35話もすぐに掲載されるのでよろしくお願いします。

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