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第32話『部隊編成』


 洋館から逃げ出してから二週間は大した任務もなく比較的のんびりとしていた。

 

 包丁の音といい香りで健司は目を覚まし、眠い目を擦りながらキッチンの方を見るとヒツギが腰まで届く長い髪をポニーテールにして朝食を作っていた。

 

 「あ、起きたんだね。おはよう」

 「お、おう……おはよ……」

 

 食卓に座るとトーストとスクランブルエッグにサラダとスープと言うこれぞ朝食というような料理が並べられていた。

 

 「お前が作ったのか?」

 「そうだよ。健司の料理の美味しさに言い出すのを忘れていたけどボクは健司の部屋を借りている状態だから、これくらいはやらないとね」

 

 そう言い健司の向かいに座り、スクランブルエッグをトーストの上に乗せ大口開けて頬張る。

 

 「いただきます」

 

 健司もヒツギと同じようにスクランブルエッグをトーストに乗せて頬張ると予想の斜め上の美味しさだった。

 もちろんトーストは既製品であるため美味しいのは当然なのだが、スクランブルエッグの焼き加減が絶妙だった。

 

 「うん、美味い」

 「そっか、それは良かったよ。健司があんなにも料理できちゃうから場合によっては迷惑かもって思ったけど」

 「いやいや、めちゃ美味いよ。でも、毎日作ってもらうのも気が引けるから当番制にしよう二日で交代で」

 

 ヒツギは健司の提案に少し迷う素振りを見せる。健司は何を迷うことがあるのか思っていると、

 

 「確かにボクが毎日作ると健司の作ったご飯は食べれないのか、それは困るな……健司のご飯は食べたいしなぁ」

 

 ブツブツ言い始めなぜ迷っているのか健司は理解した。

 

 「よし、じゃあ二日交代でやろうか」

 

 ようやくヒツギが決め、食事を終えた頃にボスから連絡が入った。至急ボスの部屋へ来いとのことだ。

 カップに残るコーヒーを飲み干し、ボスの部屋へ向かった。

 

 「失礼します」

 

 健司が中へ入るとそこには遥と四十代後半位の男性と女性が既に入っていた。

 

 「あれ? 遥も呼ばれてたのか?」

 「そう言う健司こそ呼ばれていたんだな」

 

 健司と遥が少し話していると男性と女性が健司と遥の前に立ち突然深々と頭を下げた。

 

 「誠に申し訳ありませんでした!」

 

 あたりに突然の出来事にあたふたしていまい健司と遥はどうしていいか分からずボスに助けを求める目を向けるがボスは何も言わない。

 

 「私達は夫婦でして、私はクリス=アウリトーレといいます。こっちは妻のサラといいます」

 「ど、どーも」

 「は、初めまして」

 

 この夫婦の夫の方は申し訳なさと悔しさが混じったような表情をしていて、妻の方は目を真っ赤に腫らしていて泣いていたことが分かった。

 

 「私達はここの地下にある市民街に千寿と一緒に住んで親代わりをしていた者です。ですが数時間前に連れ去られてしまいました」

 「連れ去られた!?」

 

 遥は少し声を荒らげる。

 

 「本当にすいません」

 

 夫婦は再び頭を深々と下げて謝罪する。

 健司は何も言わずにその夫婦に近づき頭を上げさせる。夫婦は殴られることを覚悟していたのか歯を食いしばる。

 

 「ありがとうございます」

 

 しかし、夫婦の予想を裏切り健司は夫婦と同じくらい頭を下げて感謝した。それに続いて遥も頭を下げた。

 

 「さっきは声を荒らげてすいません。貴方達を責めたのではなく少し驚いてしまって」

 「そ、そんな……! 頭を上げてください! 私達はお二人に殴られて当然なんですよ」

 

 慌てふためく夫婦。

 

 「俺と遥は貴方達には感謝しかありません。だって、千寿が俺達の妹だから狙われて貴方達も危険な目にあったって言うのに、それでも千寿を思ってくれている家族を殴るなんて出来ません」

 

 健司の言葉に夫婦は黙ってしまう。妻の方は堪えていた涙を流し始めた。

 

 「もし良ければ連れ戻した千寿ともう一度暮らしてやってくれませんか?」

 「はい……! 喜んで……!」

 

 ついには夫の方までも涙を流す。

 健司と遥夫婦を見送り、ボスの部屋を出ようとした時にボスに呼び止められ数分すると紫苑、薫那、マシロ、ヒツギが入ってきた。

 

 「呼んでたのは俺と健司だけじゃないんですか?」

 「さっき呼んだんだ。ある人をお前らに紹介するためにな」

 

 ボスがそう言うと一人の男が部屋の中へと入ってきた。

 

 「紹介しよう。ビリー・レミントン中佐だ。そして、お前らの上司だ」

 「よろしく、しかし驚いたな。なかなかの戦果を上げている魔導士と聞いていたがまだ子供じゃないか」

 

 ビリーに子供と言われ三人の表情が険しくなる。

 

 「ガキってだけで判断しないでもらえますかね?」

 

 最初に口を開いたのは紫菀だった。

 

 「こっちもそれなりに戦果を出してるんです」

 「誰もお前達のことを弱いなんて言ってないだろう。実際今ここでお前らと戦えば負けるだろうからな」

 

 ボスは面倒くさそうに艶のない白髪を掻きむしり、割って入り話を始める。

 

 「ビリーはお前達の隊長なんだから多少は敬意を示せ。いきなりギスギスされちゃ困る」

 「……すみません」

 

 紫苑が引き下がって黙り込んだところで遥がいつも通りの質問攻めを始める。

 

 「ビリー隊長は魔導士なんですか?」

 「いや、俺は魔闘士だ」

 

 ビリーは右腕に巻きついた包帯を見せる。その包帯には不思議な模様が描かれている。

 包帯を見た薫那とマシロは多少驚きの表情を見せ、ヒツギはニヤリと笑った。

 

 「お前なんで笑ってんだ?」

 「いやぁ、少し驚いてしまって」

 

 ヒツギはそれ以上何も言おうとしない。

 

 そこからいくつかどうでもいいような遥の質問に受け答えしているとボスが再び割ってはいる。

 

 「今後のことも含め色々話し合っておけよ。そして健司と遥の妹に関してはこちらで至急捜索隊を派遣する。それでは解散」

 

 全員がゾロゾロとボスの部屋を出ていき、部屋へ帰る途中に最終的に健司とヒツギは二人のきりになり、健司はヒツギに妹ことを話した。

 

 「ヴァサゴは一体何を考えているんだろう。人質なんて取る必要なんてないはずなのに」

 「理由はともかく、早く助けないと」

 

 そう呟くと健司の顔を覗いたヒツギは背筋を寒気がなぞった。

第32話を読んで頂きありがとうございます。

第33話は2日後な投稿されるので読んでいただけると嬉しいです

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