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捨て勇者、魔王のもとへ  作者: 海影
わざと捨てられた勇者は、帰るために魔王のもとへ向かう
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なんぱ? その二

 えー。とりあえず、買取屋の方に向かって逃げてみた。いや、初対面であーゆーのはね。ちょっと遠慮したいので。

 で、改めて道を尋ねましょうか。


「すみません」

「はいよ。うちの果物は美容にもいいんだよ。嬢ちゃん、どれにするんだい?」

「あ、はい。えっと……」


 うん。果物屋さんのおばちゃんに聞こうとすれば、こうなるね。

 え、前はボウズ呼ばわりで否定せず、今度は嬢ちゃん呼びも否定しなかったって? まあ、いつものことだし。元の世界では、全身黒ずくめで性別不詳。声は女性にしては低く、男性にしては高いと言われ、男女のどちらと言っても自分の思った方で信じて、ボクの言い分は聞いてくれないんだよね。

 ちなみに、ボクの素顔を知ってた数名も、同じで……。

 どうやら素顔は、中性的らしい。自分じゃわかんないし、まあ、どうでもよくなっちゃたからね。毎回毎回こうだから。

というわけで。とりあえず果物買った。リンゴは好きです。あ、ちなみに名前についてはこの世界のものがあるんだけど、なんかそのままリンゴで訳されてた。ボクがリンゴっていうと、自動で向こうの言葉に直されてるようなので問題なし。


「で、買取屋に行きたいんだけど、どっちに行けばいいのかな?」

「買取屋かい? それなら……」


「あら、坊や。よければあたしが案内してあげるわよ?」


 おばさんに道を教えてもらっているところ、横から女性が話しかけてきた、ってか、やっぱりこの世界の人っておっきいよね。

 おばさんはボクより二十センチは上だし、この女性はさらに十センチくらい高い。うん。この世界のボクは、子供にしか見えないだろね。一応、童顔ではないと思うんだけど。


「ほんと、可愛らしいわね。将来は美人になるわよ。よければこれから先、ずっとお世話してあげるけど、どうかしら?」

「遠慮します」


 きっぱりと断って、さっさと買取屋に移動。って、ついてくるし。こうなったら……。


「買取屋に行くのでしょう? あたしも……」


 おばさんに正確な位置は教えてもらったし、こうなったら屋根の上から一気にむかうだけだね。


「え、ちょっと!」


 ちらっと後ろ見ると、まわりにいた人たちがボーゼンとしているようです。う、ちょっとやりすぎたかな? ふつうに道で巻いたほうが良かったかも……。ま、まあ、逃げれたからいっか。

 素顔のせいかな? こういうふうに他人が関わってくるのは初めてかもね。

 まあ、今は買取屋に向かわないとね。

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