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「もしかして!」


上手く行くかは分からないが他に方法も無い、僅かな可能性にだって賭ける価値はあると碧は彼女の目を見て真剣な眼差しで告げる。


「ちょっと失礼します!」


「え、何?」


困惑など無視して碧は勢い良く彼女を抱きしめた。


「えっ‥‥はぁ!? あんたこの状況で何をっ!!」


慣れない状況の気恥ずかしさか本気で不愉快なのか自由の効かない身体で必死にもがいている。


「身動きが取れないのをいいことにこんな‥‥‥」


何だか高潔な女騎士にいけない事をしている気分。


「いいからじっとしてください。助けたいだけですから!」


「っ‥‥‥分かった‥‥好きにしなさいよ‥‥」


さすがに命を捨ててまでこんな真似をするとは思わなかったのか顔を赤らめながらも渋々抵抗を止め受け入れる。

その覚悟に応えるように碧も更にきつく抱きしめる。

勿論下心などない、この行動にあるのは純粋な人助けの想いだけ。

何故だか蔦が避けていく碧の身体で覆ってしまえばどうにかなるのではと考えた故の行動。

そしてその思惑は的中する。

よほど嫌なのか彼女に巻き付いた蔦は碧の身体が触れると逃げるように解け蔦人形も碧が彼女の身体を覆ったことで手出しができなくなったせいか森の闇の中へ消えて行った。

そして最後に取り残されたのは暗い森の中で抱き合う男女。


「‥‥‥‥もう良いんじゃない?」


「‥‥‥そうですね」


慌てて離れる碧。


「「‥‥‥‥」」


何だか嫌な沈黙が流れる。

ピリピリした空気から生じる沈黙では無く生まれてこの方経験したことの無い放課後の教室でばったり出会って二人きりみたいな甘酸っぱい沈黙。

憧れすら抱かなかった縁の無い状況に碧はどう反応して良いのか分からず遠くを見ていると不意に服を引っ張られる。


「助かった‥‥‥ありがとう」


「えっ‥‥」


目を合わそうとせず下を向きながらだったが強気な彼女が素直に感謝を言葉にするとは思っていなかったどころか抱きついた事でキレられるとばかり思っていた碧は完全に不意をつかれ思わず驚きが先に出てしまった。


「何よ? 助けられたんだからお礼くらいする決まってるでしょ」


「いえ、てっきり怒ってるとばかり思ってたんで‥‥」


「怒ってるわよ」


「‥‥‥は?」


「怒ってるって言ってるの。ここを離れたら話があるから」


指示を無視したことも抱きついた事も終わり良ければ全て良しとなあなあになることを期待していたのに‥‥。

碧の窮地はまだ終わっていなかったようだ。


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