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34 プロポーズ ~34.5閑話あり


セバスに呼ばれて来た広い客間には、数人の商人と、台の上で波打つ沢山の真っ白い布地。


「セバス、これは一体・・・・・・」


「こちらはリリア様が結婚式でお召しになるウエディングドレスのサンプル生地でごさいます。さあ、どれになさいましょう?」


商人たちが揉み手をしてニコニコ笑ってる。


「昨日の内にセバスと話し合って手配しておいたんだ。今朝一番で婚姻の書類も提出した。トーマスの養子縁組みも滞りなく済んだ。さあ、結婚式の準備を始めよう」


レオナルド様が私の腰に手を回して布地の前に連れていく。


「え、私、レオナルド様と結婚するんですか?」


「は?」


レオナルド様の顔色が一瞬で悪くなった。


「リ、リリアは俺と結婚するのは、い・・・・嫌なのか?」


「だって・・・・プロポーズとか・・・・・・まだ・・・・・・」


そう、国王のことが片付いたら結婚しようとか、トーマスを私たちの養子にするとか言ってくれたのは嬉しかったけど、でもちゃんとプロポーズしてもらった記憶はないわ?

婚姻の書類も私に言わずに勝手に出すなんて信じられない!



「ああああああああ!悪い!リリア!する、ちゃんとプロポーズするから!な?な?」



私の前世を知り、受け止めてくれてからのレオナルド様は、その本性が駄々漏れだ。


最初の頃の気取った話し方はすっかり鳴りを潜め、素のレオナルド様で接してくれる。

私の事も『君』呼びから『お前』に変わったしね。

なんだか、距離が一層縮まったみたいですごく嬉しい。


「リリア、俺は一生、いや、また生まれ変わってもお前だけを愛すると誓う。俺と結婚してくれ、リリア」


大きな体でひざまづくレオナルド様の目線は私の目線と同じ高さで、私の目を真っ正面から見つめてる。


ステキ!ステキ!!レオナルド様、大好き!


「はい!私もレオナルド様をずっと愛すると誓います。よろしくお願いします!」


商人たちが真っ赤な顔で私たちを見ている。


セバスは眉間にシワを寄せて、


「プロポーズすらしていない状態でリリア様にあんなハレンチなマネをした、だと?」


とレオナルド様を睨んだ。


「とととにかくリリア、どれにしよう?これはどうだ?輝くような光沢がきれいだぞ?それともこっちの艶なしの重厚感があるタイプのほうが好みか?」


そのあと、私たちはゆっくりと時間をかけてドレスの生地を選んだ。


ベールやグローブに使うレースなども一通り決まると、チャラそうなイケメンデザイナーがデサイン画を何枚も描いてくれた。


ドレスのデサインが決まると、こんどは宝石商が来て、ドレスに縫い付ける宝石やイヤリングに首飾りを選ぶ。


「なぁリリア、マリッジリングはどうする?やはり、オーソドックスにプラチナに小さな石をはめ込むか?いや、リリアの髪の色と同じ、ピンクゴールドでもいいな」


レオナルド様の顔が夢見る少年のようで可愛らしい!


「マリー、ジリング・・・・でございますか?それは一体どのようなものでごさいましょう?」


宝石商の男が首を捻る。


え、この世界、結婚指環の概念がないのかしら?


「レオナルド様はご存知だったのですか?」


「トーマスが言ってたではないか、お揃いの指環にお互いの名前を刻むんだろう?さあ、指環のデサインも決めてしまおう」


「はい!」


そうして、またデザイナーの男がサラサラとペンを走らせる。


結局、プラチナのリングに小さなシャンパンガーネットの石を埋め込んだデザインに決まった。



「リリアちゃん、ブーケはどうするの?」


話を聞き付けてやって来たナタリーが聞いてきた。


「は?ぶーけ、でごさいますか?それはまたどのようなもので?」


えー、ブーケもないの?

うーん、やっぱりブーケは欲しいわね。


「ねえ、リリアちゃん!ブーケはあたしに任せてくれない?!あたし、これでも鳴海の時、フラワーアレンジメント教室に通っていたのよ!約束する、最高のブーケを作るから!ね、お願い!」


「ナタリー!ありがとう!素敵!嬉しいわ!」


それにしても、あの鳴海宗一郎がフラワーアレンジメント教室に通ってる姿は想像つかないわ。



そうして、あわただしくも幸せな時間はあっという間に過ぎ、商人たちが帰宅の準備を始めた中、イケメンデザイナーの男がナタリーに話しかけた。


「あなたはボンディング公爵様の妹さまでごさいますか?私はサンド商会でデサインを担当しておりますスティーブと申します。あの、よろしければあなた様に私のデサインしたドレスをお送りさせていただきたいのですが・・・・・・」


「結構よ。あたし、ドレスには興味ないの。あ、トーマス!ねえ、あたしも結婚指輪ほしい!ちっちゃい石で構わない、トーマスの金色の髪と青い瞳をイメージしたやつがいいな!」


遅れてやって来たトーマスに、ナタリーが珍しくおねだりしてる。


「おお、いいな!作ろ作ろ!」


トーマスも乗り気なようで、テーブルの上に並べられた宝石の中からブルーの石をつまんで光に透かした。


「トーマスとナタリーは結婚式はどうするの?」


「うーん、そうね、まあ、式はいいかな?前世では籍をいれるだけのカップルも結構いたし?あたしはトーマスと居られたらそれだけで幸せだから!」


ナタリーは結婚式とかドレスとか、ホントに興味がないのかしら?

可愛らしいお姫様に憧れてたのよね?


「は?なに言ってんだよ!ちゃんとやるに決まってるじゃんか!」


「え、だって、トーマス、ドレスと宝石は我慢しろって言ってたし、あたしは本当にトーマスと居れるだけで・・・・・・」


「やだね!俺はナタリーのウエディングドレス姿、絶対に見たいし!それにあれは冗談。金ならちゃんとあるよ?レオナルドとリリアの結婚式が終わったら俺たちもちゃんと式を挙げようぜ?」


「うん!嬉しい!本当はずっと憧れてたの!トーマスありがとう!」


抱き合う二人にイケメンデザイナーがガックリと肩を落とした。


ナタリーが、すごすごと帰って行くイケメンデザイナーを横目で見ながらべえと舌を出す。


「もしかして、あれ、第2部の攻略対象?」


トーマスの問いに


「当たり。あのキャラは浮気者でね、攻略したが最後、一生苦労させられるのよ」


と答えるナタリー。


ちょっと!!第2部って何よ!攻略対象ってどういうことなの!

ちゃんと説明してちょうだい!!





34.5~閑話


「というわけで、リリアちゃんは第1部のヒロインで、あたしは第2部のヒロインなのよ」


「そ、そうだったのね!レオナルド様は絶対にあげられないとしても、第2部には他にどんな攻略対象がいたの?」


「攻略対象は4人ね。さっきのデザイナーは浮気者、旅の途中でここに寄る予定のピアノ弾きは放浪癖、ボンディング公爵家の執事はロリコンじじぃ、レオナルドはヤンデレ」


「はあ?!!な、何よそれ!セバスがロリコンで、レオナルド様が‥‥‥こともあろうかレオナルド様がヤンデレですって!!」


「そうよ、泣く泣く嫁いできたナタリーはレオナルドから監禁されるの、部屋に鍵を掛けられてね。他の攻略対象はそんなかわいそうなナタリーを何とか救い出そうとしてくれる、でも失敗したら今度は小さな檻に鎖で繋がれる」


「ゆ、許せないわゲーム会社!!レオナルド様はそんなこと絶対にしないのに!!!」


「第2部はね、ほぼほぼバッドエンドよ?第1部のゆるーい設定とは訳が違う。ハッピーエンドに持ち込むには相当な努力と課金が必要なの!ナタリーがバッドエンドで命を落とさずに済むのはレオナルドの監禁ルートだけ」


「じゃ、じゃあナタリーはレオナルド様のこと好きになっちゃったり‥‥するの?」


「まさか!!何が悲しくて前世の自分みたいなムキムキマッチョを好きになるのよ!あたしは前世から今世までずーっとトーマスひと筋よ!第2部はあまりの難易度の高さに、ついファイティング魂に火がついてムキになってクリアしただけだから」


「レ、レオナルド様!!レオナルド様はヤンデレなんかじゃありませんよね?私を鎖で繋いだりしませんよね!」


「あ、当たり前だ!!俺はそんなことはしない!セバス!なんだその目は!」


「ん?どんな目でしょう?おや、いかがされました?レオナルド様、顔色がお悪うございますが」


「何を言うセバス!おれの顔色は悪くなどないぞ!それより、お前はロリコンなのか?!」


「は?まさか。わたくし、こう見えて前世でも今世でも女性に苦労したことはございませんよ?」


「もういい!リリア、庭園に行こう!キンモクセイが見事に咲き誇っているぞ」


「まあ!私、キンモクセイの香り、大好きなんです!ぜひ!」




「‥‥‥逃げましたね」

「逃げたわね」

「まあ、リリアは鈍いから一生気付かずに幸せに暮らすだろ?」

「「確かに」」



────────────────────

35 レイモンド・ボーイング

 ~レオナルド・ボンディング目線 へ


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