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32 狂ってる ~レオナルド目線

レオナルド目線です。


~レオナルド目線


リリアの部屋から連行された俺は今、項垂れてセバスの説教を受けている。


「レオナルド様、わたくしは貴方を見損ないましてございます!よもやリリア様にあのようなハレンチなマネをなさろうとは!」


「い、いや、さっきのはあれだ!リリアがあんまり可愛い顔で俺を煽るから!」


リリアの方から唇にキスをされたのは初めてだったんだ!

しかも、あんなセリフを言われて、潤んだ瞳で『約束して?』なんて。

理性を保てる男がこの世に存在するはずがないだろう!


「慣れて下さい。あれはリリア様の普通でごさいます。リンの頃からそうでした。前世の彼女は『魔性の女』という俗称を持っておりました。本人に全くそのつもりはなくとも、男は皆、彼女に狂ってしまう。わたくしはそんな男たちからずっとリンを守って来たのでございます。最後は守りきれずに殺されてしまいましたが」


「ま、魔性の女・・・・・・」


「レオナルド様、貴方も彼女に狂った男の一人。リリア様を苦しめるような事をなされば、わたくしは貴方を絶対に許しません」


「お、俺は狂ってなどいないぞ!」


「いえ、貴方は狂っておられます。マサヤと何ら変わりありません」


「何だと!いくらなんでもそれはあんまりだろう!」


「では貴方はリリア様が貴方のもとから逃げ出そうとなさったらどうされます?貴方はリリア様を閉じ込めてしまうでしょう。この屋敷に、貴方の部屋に。誰にも会わせず、貴方だけの腕の中に繋ぎ止めるでしょう?それでもリリア様が逃げようとなされば鍵を掛け、鎖を使う。貴方はそういう人間です」


俺は何も言い返せなかった。

確かに、セバスのいう通りだ。

俺はリリアの事になると自制が効かない。


リリアがセバスと抱き合っているのを見た瞬間、セバスを殺してリリアを檻に閉じ込めようと本気で思ってしまった。

あの場にトーマスがいなければそうしていただろう。


「愛の深さには際限がありません。貴方のその海よりも深い愛を、リリア様が心地よく感じているうち何も問題はないのです。努力なさいませ、レオナルド様。リリア様にずっとずっと愛されるための努力を。わたくしも協力いたします。わたくしはこう見えても、貴方のことが好きなのですよ。今回リリア様を繋ぎ止める鎖として、トーマス様を養子になさったことも評価しておりますしね」


さすがセバス。

年の功ってやつか、長く生きているだけはある。

説得力が半端ないし、全てお見通しってことか。


「セバス、有り難う。お前の言う通りだ。俺は確かに狂ってる。リリアを手放す事を考えただけで、生きてはいけないほどだ。リリアにずっと愛されるように努力する。それでももしリリアが俺を拒んだときは、リリアを連れて逃げてくれ。俺がマサヤと同じことをしてしまう前に。お前はリリアの『父親』だ。その権利がお前にはある」


「ええ、勿論です。リンの幸せはわたくしの悲願でございましたから。わたくしは前世でたくさんの人間を傷つけ、苦しめて生きておりました。わたくしのせいで地獄に落ちた者もいたでしょう。死を選んだ者もいたかも知れません。そんなわたくしをまともな人間にしてくれたのがリンなのです。リリアとなった今でも、わたくしにとっては可愛い『娘』なのです。」


リリアを大事に思う気持ちは充分わかったが・・・・・・

地獄に落ちたとか死を選んだとか、こいつはいったいどんな生き方をしていたんだ?

詐欺師だったと言っていたが・・・・・・


「聞きますか?」


「は?」


「顔に書いてございますよ。わたくしの前世での行いを知りたいのでしょう?リリア様には口が裂けても教えられませんがね」


「き、聞きたい」


「まず、詐欺と一口に申しましても色々な種類がごさいます。ギャンブル詐欺に融資保証詐欺、先物取引詐欺に結婚詐欺等々。その全てはやり尽くしました。名を偽り、歳を偽り、良い人間を装い他人の懐に入り込んで信用させ、依存させる。後は金を引っ張れるだけ引っ張って、用済みになれば霧のように消える。わたくしにとって、他人とはカモとなりうるか、そうでないか。わたくしは失敗したことはございませんでしたから、金は腐るほど持っておりました。それでも詐欺師を続けていたのは、ただ "楽しかった" から。それだけです。わたくしに全財産を騙し取られ丸裸となり骨の髄までしゃぶり尽くされて全てを失った者のその後など、一度も考えた事はごさいませんでした。わたくしは、人間の皮を被った悪魔だったのですよ。」


もしかしたら、『瀬川修』もリンと同じように心に闇を抱えた悲しい人間だったのかも知れない。


「そんなお前が何故『加々美リン』という、たった一人の少女に変えられた?」


「失礼、ちょっと瀬川に戻りますね。このしゃべり方、面倒臭いんで」


「構わない」


「俺はリンを新しいカモにしようと近づいた。でもリンの裏側を見てしまったからな。騙せねぇよ。・・・・・・俺は壊れてるリンに、壊れてる自分を重ねてたんだ。俺にとってリンは自分と鏡合わせの存在だった。だから自分がずっと求めてた『本当の愛情』ってヤツをそのままリンに向けた。そんなある日、リンが言ったんだ。『瀬川さんがお父さんならよかったのに』って。俺はそん時生まれて初めて、自分の存在を肯定出来た。リンの父親、それが俺の生きる理由だと。だからリンが死んだあとは・・・・もう生きてはいけなかったんだ」


ああ、セバス、何だお前、お前も俺と一緒じゃないか。


「そうか、じゃあ、お前も仲間だな。愛情の形は違うが、お前も彼女に狂ってる」


セバスは大きく目を見開くと、自分の膝を手のひらでポンっと叩いて


「あー、そうだな、うん、確かにそうだ、あははは」


おかしそうに笑うから、俺もおかしくなって一緒に笑った。



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33俺の妻

   ~トーマス目線 へ




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