第10話「距離」
「ゆい」って呼んでくれた。
ユウは何を言おうとしてたのかな。
次の日、昨日のことが気になってるけど、私はもっとユウに近づいてみようと思って…
おはようと手をあげる。
ユウも手をあげてくれる。
そのままちょこちょこ手招きして、呼び止める。
話があるときはこれが合図。
スマホを出して、「連絡先」と言いながら、私と彼を交互に指差して、「教えて?」とお願いの、ポーズ。
《ライン?》ユウもスマホを出して、画面のアイコンをタップする。
「うんうん!」私は嬉しくて大きくうなずいて、連絡先を教えてもらった。
早速、テストを兼ねて送ってみた。
[昨日の帰り、何か言おうとしてた?]
ユウはその場で見てたけど、直接私に首を振って《何にもないよ》と答えた。
そっかぁ…名前を呼んでくれたと思ったのも気のせいかな…。
ユウはいつも就業前に座っている所へ行ってしまった。
なんか連絡先聞いたのとか悪かったかなぁ。
一人で勝手に落ち込んでしまう。
その時、スマホが鳴った。
[今日は後ろ乗る?歩いて帰る?]
パッとユウの方を見るけど、下を向いている。
でも一気にテンションが上がった!
[歩いて帰る(o^-^o)ありがとう!]
ユウの方を見ていると、私の返事を確認したみたいで、スマホをしまって立ち上がった。
こっちを見て、ニコッと笑ってくれる。
あぁ、多分もう、このままなんて無理。
好きで好きで、我慢できないよ。
その日の帰り、途中の公園で座って話そうとユウを誘った。
ユウはちょっとびっくりした顔をする。
《暑いかな?》私は照れ笑いして、やっぱりやめとこうと手を振った。
ユウは何か考えてる顔で黙ってたけど、《後ろ乗って》とちょっと急かすように自転車の後ろを指差して言った。
私は素直にしょんぼりして後ろに乗った。
あーあ。告白する前に失敗しちゃったよ…
本当に私ダメだな。
ユウどんな顔してるの?
自転車をこぐ後ろ姿を見ながら、ボーッとしていた。
こんなに近くに居れるのに、ユウが遠くなっていきそうで、怖かった。これからも一緒に帰ってくれるかな?
涙が出てきてしまうのを気づかれないようにうつむいていると、自転車が止まって、とんっとユウの背中にぶつかった。
パッと周りを見たけど、駅じゃない。
え?私がポカンとしていると、《ついたよ》と言われた。
ユウの部屋?




