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後編

薄いR15

それから数年後、まさかの電車遅延。

高校生の時は昼だったからまだいい、しかし今は夜。深夜近い時間だった。彼と彼女は大学へ進学、友達以上恋人未満のあやふやな時期。


「……どうしよう」

「……あきらめて、泊まるところ確保しようか?」


カラオケか、ファミレス、それとも


「ラブホにする?ベッドがあるからちゃんと眠れるけど」

「…………ん」


彼女は真っ赤になりながら彼と手を繋いで歩いて行った。


そして


彼女は泣きながらこう言った「ごめんなさい」と。彼は何を謝っているのかわからずに、理由を聞くと彼女はこう言った。


「……今、生理中なの。それなのに……思わせぶりについてきてしまってごめんなさい」

「あぁ、なんだ、そんな事。別にいいよ、寝るだけだし」


彼はそっけない。確かにまだ恋人ではないけれど異性の中では、一番近くにいると思っていたのに、彼女は悲しくなって、さらに泣き出してしまった。


「誤解のないように言っておくけど、別に君が好きじゃないから、どうでもいいって思っているわけじゃないから……、その、無理強いとか好きじゃないし、君の方から飛び込んできてくれたら俺は……って、あぁ、これじゃ卑怯だな?」


髪をガシガシかいた後、彼は彼女をきゅっと優しく抱きしめた、彼女は驚いて涙がひっこんでしまった。


「君の事好きだよ。大事だから……その、意気地が無いとか言われそうだけど、……大事すぎて手が出せない」


初めてのキス、軽く触れるものから、おずおずと舌を触れ合わせる。ギュッと抱きしめた後、そのまま2人並んで就寝。早く起きてどこかでモーニングを食べよう、そう言って。


翌朝駅ナカにある、モーニングビュッフェのお店で朝食中、怒り心頭の父親が彼に殴りかかってきたのだが、するりとかわして、慌てた店員に取り押さえられるという、父親あわや警察沙汰!?なんて騒ぎがあったりした。




さらに、それから数年後。


養子に入ろうか?

彼は唐突に言った。


彼には兄と弟がいるので、苗字が変わっても問題ないよと言ったのだが。


「お嫁さんになりたい?」

「まぁ、できれば……」

「今住んでいるマンションいるか?って聞かれているんだけど、あそこでいい?」

「え、あの駅前の?」

「そう、親は引っ越しするらしいよ。あそこ子育てにはむいていないらしくて」


住民の高齢化にあたり、小学校は無くなり、小児科も無くなって、まだ幼い子供のいる(彼の弟のことだ)彼の両親は、少し離れたところに新居を構えることにしたらしい。知っていたけど、本当にお金持ちなんだなぁなんて思う彼女。


でも……


「子育てに向いていないってことは、私達の子供はどうするの?」


彼女としては、素朴な疑問だったのだが、彼は艶やかな笑顔を浮かべ言った。


「うん、どうしようかな」

「……う、あ、い今の無しで」

「……うん、どうしようかなぁ」


うわぁ、スイッチはいっちゃた……昔は大事過ぎて手が出せないとか言っていたのに、今は大いに手を出されている。口づけから始まり、他愛もない触れ合いから、深い触れ合いに。君のお父さんも子育てにこき使おうと、冗談めかして囁く彼。結局彼は婿養子として入るつもりだったのだが


「俺も次男だし、別に名前にはこだわってない。娘を幸せにしてくれるかが重要だ」


と言った父親の言葉に大泣きしてしまった彼女。最終的に彼女は彼の籍に入り、父親と同居となった。お義父さんをこき使えるから楽なもんだよと彼、そ・そうなんだと彼女。


要領のいい彼は、爺馬鹿となる義父を大いにこき使い、自らも良く働き、彼女と子供達(と、ついでに義父)を大切にした。将来的には俺がこき使われる立場になるよ、なんて笑って言っていたけれど、おそらく婿をこき使う舅になるんだろうなぁ、なんて自分の嫁に思われていたことを彼は…………多分知っている。






「お義父さん、河原でバーベキューなんてどうですか?」

「なんで河原で焼き肉食わなくちゃいけないんだよ。俺は河原は嫌いだ、虫がいる」

「じゃ、じゃあ。最近流行りのラグジュアリーBBQなんてどうですか?ソファーとかある半個室みたいな作りで、ゆったりバーベキュー出来ます!!」

「ラグジュアリーの意味解って言っているのか?義理の息子」


義理の息子はタブレットを出してきて検索しだし、贅沢・豪華なさまです!!と元気に告げる。何故こんなに元気な奴が、いつも気だるげな娘の夫になれたのだろう、少々ウザ……いや、体育会系。そんな風に義父に思われているとは知っているのかいないのか、義理の息子は楽しそうに説明する。


「ここなんですけど、家から近いですし、なんなら一泊できたりするんですよ。どうですか、お義父さんッ!!」

「わかった、わかった。そこでいいよ。ちゃんと予約しておけよ。行き当たりばったりも楽しいかもしれないが、よく計画を立てておけ」

「了解です!!」


義理の息子は嬉々としてタブレットを操作する。なんであんなにウザ……元気なのかを己の妻に愚痴ったところ、彼の妻は微笑みながら言った。


「あなたがいつもスマートに行動するのが格好いいんだって。周りをよく見ていて的確な指示を出すところが」

「的確な指示ねぇ……」

「人をこき使っているだけなのにね」


お父さんもよくパシられていたわよね~、なんて彼女は言う。生きがいをあたえていただけだよ、なんて彼は返す。


お義父さん、予約取れましたよ!!と叫ぶ義理の息子に、わかったから夕飯の買い物でも行って来い、と的確?な指示をだす彼。あの人お父さんに夢見すぎよね、なんて実の娘から言われながらも、幸せな我が家。




「……ちょっとまて、それじゃあ俺がすでに亡くなっているようじゃないか!」

「お義父さんはもう年でこき使えないので、居ないのと同じです」

「義理の息子~ッ!!」

「(うんうん、仲いいなぁ)」

じれじれな感じを出したかったのですが微妙。電車の遅延ってすごくイライラしますが、こんな2人が居たら余計イライラしますね(笑)。最後ちょっと飛ばし過ぎですが、彼のしたたかな部分と家族想い?な部分にニヤリとしてもらえたら、嬉しいです。


読んでくださって、ありがとうございました。

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