第二章 第58話 ──棺の少女──
第58話 ──棺の少女──
遺構の門をくぐった瞬間、
空気が変わった。
重さも圧もない。
ただ、深い水の底に沈んだような静けさが広がっていた。
紗月
「……なにこれ……気味悪い……」
天井からは根のような構造が垂れ下がり、
柱は樹木の幹のように分岐し、
床には波紋のような紋様が広がっている。
玲奈が壁に触れたが、
何も起きなかった。
玲奈
「……遺跡の中は私には反応しないんだね。」
ミリアは周囲を見渡し、
眉をひそめた。
ミリア
「深層の気配が強いです。
気をつけてください。」
胸の奥が熱くなる。
(……奥に……何かがいる……)
紗月
「悠斗、顔色悪いよ……?」
悠斗
「いや……呼ばれてる感じがする……
もっと奥から……」
オルタ
『……行こう。
中心に“棺”がある。』
曲線の回廊を抜けると、
巨大な円形の空間に出た。
天井の根が中央に集まり、
柱が森のように立ち並び、
床の紋様が中心へ向かって収束している。
その中心に――
棺があった。
玲奈
「……これが……封印……」
棺の前には、
御門家の封印装置が設置されている。
ミリア
「御門家の紋章……
玲奈さん、あなたしか開けられないようですね。」
玲奈は震える指で封印装置に触れた。
装置が淡く光り、
玲奈の血を求めるように紋様が浮かび上がる。
玲奈
「……私の血が……必要なんだね。」
紗月
「玲奈……無理しないでよ……」
玲奈は指先を噛み、
一滴の血を封印装置に落とした。
その瞬間――
棺が脈動した。
深層の波形が空間全体に広がり、
床の紋様が揺れ、
天井の根が震える。
棺の蓋が、
ゆっくりと開いた。
中には――
少女が眠っていた。
白い髪。
静かな呼吸。
胸の奥で深層核が脈打っている。
玲奈
「……この子は……?」
オルタ
『僕の“オリジナル”。
僕は……この子の遺伝子データと深層波形を元に作られた……
深層系制御AI。』
悠斗
「……人間だったのか……」
オルタ
『僕は……この子の“コピー”。
でも……
肉体を得れば……
君の空間欠損も……深層暴走も……
完全に制御できる。』
その時――
遺構全体が震えた。
紗月
「なに……!?」
ミリアが顔を上げる。
ミリア
「外側から……強い深層反応が来ます。」
オルタ
『……戦略級魔法師かもしれない。
でも、目的は分からない。
ただ……
“こちらに向かっている”のは確か。』
玲奈
「棺を……狙ってるの……?」
オルタ
『可能性の一つとして……
深層の異常を抱えた魔法師なら……
制御手段を求めるのは自然。
でも……推測の域を出ない。』
悠斗
「……つまり、
“来る理由は分からないけど、危険”ってことか。」
オルタ
『うん。
だから……
僕を守って。』
遺構の奥から、
深層の“視線”が迫ってくる。
悠斗
「……来る……!」
俺たちは――
ついに“本体”と対峙する。
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