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元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第5章 主人公(仮)VSヒロインにさせられそうな主人公

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第50話  布石


同じ頃・ランザ王国


「よし!…これでいいかな」


ククナ=ルミノは、机いっぱいに広げられた手書きのノートを集め、紐できっちりと結びつけると鞄に詰め込んだ。


「ククナ。準備はできた?」

「うん!お母さま」

「それにしても…ちょっと思った以上に荷物が多くなってしまったな……」


玄関先にずらりと並べられ、粛々と運ばれていく箱の数々を見て、ため息をつく。


「あなたってば、久しぶりの帰国ではしゃぎすぎちゃったわね。今日午後の便で行けば、ククナも入学式に間に合うし…そろそろ行かないと。船を待たせたままだわ」

「…長かったな。あちらに初めてわたってから…8年近くなるのか」

「ええ。…本当に」


鸞坐王国でも名のある商家のルミノ家は、実はつい先日、自分達の商会の船を購入したばかり。

これまでアズレアとの定期便は月に一度の往復便のみだったが、ルドヴィガ家とキアロ国王の尽力もあり、アズレア側での船舶登録を無事完了できた。…つまり、今ここに、アズレアとランザを結ぶ新たな交通手段が誕生したのだ。

既存の定期船には及ばないが、船員乗客併せて50人以上も乗船できる。この船は帆にはランザ王国の紋章とルドヴィガ伯爵家の紋章が描かれており、キアルーン山脈から流れる強烈な突に晒されても、びくともしない。


「しかし…最新の技術を駆使した船か…すごいな」

「あ!良かったあ……間にあったようね」


それはまるで、何かのパレードのようだった。

年齢も性別も様々な、見目麗しい従者たちはそれぞれ大小の荷物を抱え、船に荷物を運んでいく。その数は数十にも及び、全てが船に持ち込めるか心配になるほど。

その行列が途絶えた先に、色彩豊かなドレスを着こんだランザ王国第16王女、ダイアナは極上の笑みを浮かべやって来た。


「ダイアナ様…」

「はあい、ファネア=ルミノ!処女航海にはうってつけのお天気じゃない!」

「ありがとうございます」


(嘘…ダイアナ王女様)


大きく張り切った胸に辛うじて巻かれた布は、くっきりと谷間を作り、色気漂うしなやかな身体と香水に、ククナは圧倒されてしまう。


「だ、ダイアナ様も乗船されるんですか?!」

「そうよお、可愛いお嬢さん。私には大切な任務があるの」


黄色の瞳が宝石のように鋭く煌めく。


「任務…」

「ミナル。…いつも私のドレスのデザイン、ありがとね」


そして、ダイアナは流れるように腕を伸ばしてミナルの肩を抱く。

あまりの二人の距離の近さにククナが目のやり場に困って赤面していると、ダイアナの背後に控えていた背の高い従者の一人がため息をつく。


「また悪癖が…さあ、お戯れはそこまでにして。ファネア様、出発時間は」

「あ、ああ…あと30分後だ。荷物の搬入は無事完了している。私たちの準備が整えば、いつでも出航できるでしょう」

「わかりました」

「あら…んもう、ノックスってば。じゃあ、先に乗ってるわねえ!」


ぐい、と横抱きにしてすたすたと当然のように歩きだす。


「お、お母様。気を付けてね」

「大丈夫よ。あの方はああいう方だもの…美しい物を愛でるのが趣味で、でも頭の切れはランザ王国一!なんて…女性として憧れてしまうわね」

「美しい物を愛でるのが好き…って、どこかで聞いたような」


ふと、ククナの頭にヴァラモ家の名前が浮かぶ。

そして、デビュタントで大勢の前に立つリッハシャルの姿も。


(シャルちゃんは…私が守ってあげるね!)




「ふうー…スカッとした出来事の後のケーキセットは絶品だね!」

「ラシーってば…三個はさすがに食べ過ぎだよ」

「大丈夫!デザートは幸せなエネルギーに変わるから!…あら、お迎えだ」


見れば、通りの馬車待合駅にはすでにニッカ伯爵家の馬車が停まっていた。


「今日は来てくれてありがとね、お土産は今度渡すから…入学式前にもう一回会おうね!」

「うん!お手紙待ってるよー!じゃね、フォーレ!」

「…別に、俺に挨拶なんてしなくていいですよ、先輩」


ふと、フォーレとケディに妙な空気が流れているの感じた。


(…ん?なんかこの二人…)


「さて、シャル。私はこれからカシオス様と居住先と…あとは行かねばならないところが――」

 

お父様がそう言いかけると、カシオスは横から割り込んだ。


「どう?シャルも一緒に来ない?」

「いいえ、私は一度お邸に戻ります。荷物も整理しないといけませんし…あ、そうだ。先ほどはありがとうございました」

「ん?…ああ、全然。むしろ相手がどの程度の実力か見ることができたから……収穫は十分かな」


そう言う言葉を出すとき、銀色の瞳は剣の刃のように光る。

…それが時々、少し怖い。


「殿下、うちの娘を拘束するのはいい加減になさってください」

「…最近、遠慮がないねレイドックは……それじゃ、またね」


すっと手を取ると流れるようにハンドキスをしてくる。

なんだかくすぐったくて、手をひっこめようとするけど、カシオスは満足げにほほ笑み、ぎゅっと握られてしまった。


「……うん、これでしばらく会えなくても頑張れるかな。また会い行くよ、シャル」


(くっ。相変わらずこういうところはしっかりというかちゃっかりというか!)


すると、間髪入れずにお父様の声が天から降り注ぐ。


「殿下、シャルに会うときはか・な・ら・ず!私に一言いうように!まだデビュー前ですからね!!」

「…耳がいいね、全く」


それにしても……さっきのイリシユ王子と比べたら、立ち振る舞いも仕草も天と地ほどの差がある。

同じことをあの人にされたら、と思うとぞっとしてしまう…。


「ケディック、フォーレスト……その内、君たちのところに挨拶に伺わせていただくから。イルモンドによろしく伝えてほしい」

「あ…」

「わかりました。必ずお伝えします」


やっぱり、この二人ちょっと変。

ケディックを押しのけ、フォーレは一歩前に出る。…別にこれ自体はいつものことだけど。少し、顔色が良くないみたい?


(さっきの表情…気のせいじゃなかったかな)


カシオスもお父様たちと馬車に乗り込むのを見送り…私達は三人になった。


「……今日は二人とも、来てくれてありがとう!久しぶりに会えてうれしかったわ。…入学したら、よろしくね?」

「ああ。…シャルはもう帰るのか?」

「うん。ケディとフォーレは?」


一瞬の沈黙、

2人は何となく顔を見合わせると、ふ、と目をそらした。


(んん?!)


「ねえ、ちょっと。フォーレ、ケディ?」


思わず腰に手を当て、背が高くなった二人の目線に合わせるようにぐっと背伸びをした。

…くっ、届かない……これでも4センチくらいのヒール履いてるのに!


「何してるの?つま先立ちしたら危ないだろ」

「…背伸びしてるんじゃないの??」


(こ、こういう時ばっかり息がぴったりなんだから!)


「何かあったでしょ」

「!」

「…別に」


まあ、なんとわかりやすい二人の反応。


「気まずい時、眼を泳がせるのはケディの癖、下を向くのはフォーレの癖!」

「え…そ、そうだっけ?」と、宙を見るケディ。

「別に癖じゃないし」斜め下を見るフォーレ!

「ほら!やってるじゃない!……なあに?喧嘩でもしてるの?」


そして、図星になると二人とも黙り込んじゃう!


(まあ……思春期、あるあるかなあ)


私だって悩むことは多い。2人だってそんなの当たり前のことだ。


「二人にもいろいろあるだろうし…でも、せっかく久しぶりに会ったんだし…こういう空気は」

「ごめん!」

「…ケディ」

「シャル、そうだよな…気分悪くさせて、ごめん……」

「……そうだよ」


どこか、苦し気な声。

やっぱり……ケディより、フォーレの方がどこか様子がおかしい。


「……フォーレ?」

「ケディが…っ…兄さんが全部悪いんだよ!!」

「あ!」


そう吐き捨て、フォーレは走って行ってしまった。

思わずケディを見てしまうけど、…ケディはそこから動かなかった。


「…ケディ…?」


追いかけようとすると、私の手をケディがぎゅっと握った。


「……ごめん、シャル。今は……」

「何が…」


あったの、と言いかけて、あまりに当然すぎて大事なことを忘れていたことに気が付いた。

2人は私よりも一つ年上。

私でさえ、ルドヴィガの後継教育が始まっているのに、二人はどうなんだろう?

…ううん、何もないわけがない。

だからこそ……双子の彼らは、どちらかが選ばなくてはいけなくなる。


「後で…色々まとまってから……僕たちの話、聞いてほしい」

「……うん、わかった」


(もしケンカの原因がそうなら、私はこれ以上口が出せない)


「待ってるよ」


だってそれは、2人が決断することだから。



「今日は人が多いね」

「ほら、大きな船が――あら、失礼」


道行く人の雑踏をかき分けていく。

所々笑い声が聞えたり、はしゃぐ子供の声が聞えたり。

でも……それらすべて、今のフォーレには耳に響き、うるさく聞こえてしまう。

ある程度走り、人がいなくなった埠頭にたどり着くと、塩辛い風が吹き抜ける。


「……みんな、楽しそうだよな」


近くにあったベンチに腰掛け、少しずれた眼鏡を外して胸ポケットにしまおうとして……青いハンカチを手に取った。


(すごく大人で…綺麗になってた。シャル)


――ずっと、さっきの場面が頭で繰り返してる。


正統なる血の証明の、空の青に、銀色の瞳。

毅然として、その場にいるだけでも周りの空気さえのみ込んで支配してしまう程、強烈な印象


「あんなの、かないっこな」


ぱっと。

思わず口元を抑える。


(こんなに簡単に、諦める…自分)


ケディはどうだろう?

「……つえぇ。」

あの瞬間、ケディの口から出た言葉は、自分と真逆の言葉。

いつも前を向いて、立ち向かっていく、あいつらしい。

それに比べて自分は?


「それって」


ふと、思った。

手の中にある青いハンカチ、彼女と同じ瞳の色。でも、簡単にあきらめる意気地なさ。

もしかして、彼女への想いは……


「ただ、ケディに勝ちたいだけ……?」


でも、やっぱり諦めたくない。

そして、心が揺らいだ。



読んでいただき、ありがとうございます!コメント、評価、ブクマ嬉しいです。精進します!

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