↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元・社畜系女子が人生フルベットで運命ガチャを回したら~傾国の美女の人生は一度でいい~  作者: いづかあい
第11章 人生、長い休み程人は成長する

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
127/127

第128話 兄弟


「うっ……」


カーテンの隙間から強烈な朝日が差し込む。

突き刺すような光の矢に、目をそらした。


(うう…頭いてえ。この頭痛は、いわゆる二日酔い、と言う奴なんだろうか)


昨晩、結局最後まで丁重にお断りしたが、その場の雰囲気のノリのせいか、空気感にすっかり飲み込まれてしまった。


「お酒は飲んでないのに……」


まだ少し布団が恋しい思いもあるが、いかんせんここは人の邸。

あまりゆっくりしているわけにはいかない。


「あ、おはようございます!ゆっくり休めましたか?」

「勿論です。…あの、公爵様は」

「もうすでにご自身の任務に就かれております。」


(けっこう淡々と飲んでいたのにすごいなあ……)


これが、大人か。

などと考えていると、中庭の方で元気のいい掛け声が聞えてきた。


「この声…?」

「ああ、イスメテ様と、タクト様でしょう。お二人はまだ正式な騎士の訓練には参加できませんので、よくお二人で稽古されています」

「見に行っても?」


すると、執事はにっこりとほほ笑んだ。


「ええ、ぜひ。お二人も、きっとお喜びになりますよ」

「ありがとう!」

「もう一つ、エイデン侯爵様がこちらに向かっているというお知らせもいただきました」

「!父上が?」

「ええ、昼前には到着されるご予定のようです」


何でここに、と言いかけて、昨晩の出来事を思い出す。


(……確かに、連中が関わっているのだとしたら)


「わかった!」

「行ってらっしゃいませ」


階段を駆け下りていくと、途中青白い顔をしたレイルとすれ違う。


「あ!……昨日はありがとうございました。とても、何物にも代え難い経験をさせていただきました」


すると、レイルは一度咳払いをしてから、背筋を伸ばした。


「いい、表情になった。君は、必ずいい騎士になれるだろう」

「……はい!」


そして、再びゆっくりと背を向けたが、いかにも気持ちが悪そうだ。


(公爵様は別格なんだな……)


メイドの案内でたどり着いた中庭では、丁度、兄のタクトが弟のイスメテに負けた瞬間の時だった。


「あ!!おはようございます!!ケディックさん!!」

「く、、ま、負けた……」

「おはよう、イスメテ、タクト!朝から精が出るね」

「聞いてください~オレ、また負けたんです…くやしい!」と、イスメテが言うと、タクトは口元をふよふよと動かした。

「んんっ。……ま、まだまだ修行が足りませんね、イス」

「クッソ―――」


(素直に喜べばいいのに…あ、そっか、タクトはクールな性格、だっけ…そう言う、個性ってこと?)


昨日話した限りでも、タクトはそう言う性格というよりも、そういう風に見せている、が正解のような気がする。


「なあ、今はタクトが勝ったの?」

「ええ、まあ」

「ふうん……よかったら、もう一試合やってみない?僕、二人の戦ってるとこみたいな」

「!マジで!指導してくれるんですか?!」

「指導できるほどじゃないけど、もしかしたら、イスメテの勝利のためのアドバイス位ならできるかも?」

「ええ……それ、ずるいです」

「へへ!いいじゃん!最初は俺!次はタクトの番!」

「それなら、いいけど」


少し離れたところでは、メイドや従者たちが温かい目で見守ってる。


「じゃあ、審判は僕が。両者、構え」


2人は対峙し、それぞれ剣を構える。

まず、最初に大きく振りかぶったのは、兄のイスメテのほうだった。


「やあっ!!」

「はあ!」


大き目の第一歩を阻む形でタクトは踏み込み、腰を低くして一手目を模剣で受け取る。


「…くっ」

「!」


そのまま剣を滑らせ、イスメテの脇めがけて大きな一撃を放った。


「させるか!」

「へえ……」


かわす、受ける。

2人のやり取りはリズミカルな音に載せ、まるで音楽のように規則正しく響いていく。


(動きはイスメテの方がいい……でも、それ以上に、タクトは兄の動きをよく見ている。しかもイスメテは少し荒く動くから、一手先がタクトにはよくわかるんだ)


ただ、中々勝敗が決まらないのは、恐らくタクトの力が及ばぬところでもあり、イスメテが技術でカバーしているという感じだろう。

その二人の様子を見て、ケディックは引っかかるものを感じた。


(相手の一歩先を見て、先回りして行けばきっと)


「……先、周り」


ぽつりと出た言葉は、周りの音よりも、より多く自分の耳に届いた気がする。

あいつが困らないように、あいつがやりやすいように、自分が常に先を行く。

それは――――――


「あいつがしたいことを…置き去りにしてるって、事、だ」

「やあ!!」


木造の剣は、良く音が響く。

カーン、と小気味のいい音が聞こえ、ケディックは顔をあげた。

今回は、イスメテの勝利だ。


「やった!」

「…ま、負けた」

「見てくれてました?!俺、勝ったーー!」

「うん!すごいな」


ハイタッチをしあうと、タクトは唇を尖らせた。

その表情が微笑ましくて、思わず頭を撫でる。


「な、何するんですか!」

「タクトは良く、兄の動きを見てるね」

「!」


一瞬ぱあっと表情があかるくなる。


「は、はい。イスは、その…行動が雑だから」

「そう。そこをうまくつけば勝てる、でも…それ以上に基礎訓練をしっかりしないとな!」

「う……」

「下半身に力を入れて、一発目のイスメテの一撃を受けることはできるけど、それが二回三回と続いたら、防ぎきれてないだろ?」

「それは…はい」

「兄を見てそれに合わせて動くんじゃなくて、タクトは自分がどう動くか、どうやって勝つかちゃんと勝利のパターン?みたいなものを見つけれるといいね」

「は、はい!頑張ります!!」

「ケディックさん!オレもオレも!」

「あ、うん。イスメテは―――」


ふと、視線を感じて顔をあげると…父が居た。


「父上……」

「いい、きちんとその子たちに教えてあげるといい」

「はい!」


その後、二人の稽古にもう少しだけ付き合ったあと、公爵に挨拶を済ませ、帰路についた。

馬車の中で思わず伸びをすると、イルモンドは少し笑った。


「いい経験ができたようだな」

「あ……」


(そう言えば……僕は、父上とちゃんと二人きりで話したことがなかった)


そう思うと、剣術大会からの行動が、自分にとっては最善と思っていても独りよがりの行動だったな、と顔から火が出そうだった。


「すみません……」

「ん?」

「僕、勝手にから廻って、色んな人を傷つけて……迷惑をかけました」


一瞬、目を丸くしたイルモンドだったが、やがて笑った。


「ははは!そこまで気が付いたなら、上出来だよ」

「……これしかない、って。勝手に思い込んでいまして……本当に未熟でした」


思いもよらない息子の言葉に、胸がいっぱいになる。


(本当に……子と言うのは、ほんの数日でもがらりと成長するものなんだな)


「……ならば、今一度問う。お前が目指す未来は?」


即答するのかと思いきや、ケディックは少しだけ何かを考える表情をした。が、意を決した様子で答えた。


「誰かを……守ることを誇れる自分になりたい、です」

「うん」

「この力で、この剣で……守れる人がひとりでもいて、それを必要としてくれるなら。みんな、未来があって、それを誰かが勝手に奪う権利なんて、ない」

「………」

「そこに、理由があっても。……何か事情があっても……理不尽に命を奪う奴がいるなら、そいつからできるだけ守りたい」


あの小さな姫君の笑顔も、ラデュオン殿下の言葉も、全て勲章。

それを、ケディックは身をもって知ることができた。


「昨日……僕はここで、初めて人を殺めました。守るために……でも、人を殺めたことを後悔するより、守れた人からのありがとう、の方が何倍も嬉しいって。まだ、簡単には割り切れないけど…」

「……そこまで、言うなら、私は止めない」

「……父上」

「だが、それはお前の結論であって……選んだ道。それに伴い、お前がすべきことだったことを誰かに託すのは別の話だろう?」

「はい」

「なら、しっかり……二人ですり合わせをしなさい。お互いの選んだ道を」

「わかりました!!—―-あいつに」

「そのフォーレだが」

「?」


そして、イルモンドは少し笑いをこらえて続けた。


「全く、どこから聞きつけたんだが。今は押し寄せる親戚から逃れるため、街に逃げ込んでる」

「あー……それって、もしかしてお見合いの」

「フォーレの分までお前も、覚悟しておけよ。それが、今回の一件のお前の罰、だ」

「えぇ~……」


年頃の子がいるともなれば、周辺の親戚は放っておかない。

別荘につく頃には、見合い写真を携えた傍系が列を連ねて待っているのだった。



その頃―――カナルアの街。

フォーレストは、街の港にあるベンチで座り、ぼうっと海を眺めていた。

びゃー、びゃーとウミネコたちは盛んにこちらを向き、餌を寄越せとねだっている。


(……あー平和だ)


今でも、耳元では傍系の甲高いおべっかやおしゃべりが聞こえてくるようだ。そして、気のせいだろうが、色々なものが混ざり合った香水の匂いすらまとわりついている気さえする。


「いや、違う。これは海の香りだ……間違っても、香水の香りじゃない」


などとぶつぶつ自分に言い聞かせ、ここ数日のことを思い返していた。


(色々、あったなあ……)


空は高く、手が届きそうな程。

ゴロンと横になり、空に手を伸ばした。


「天気がいい」


時刻は午後14:00

南の街特有の気だるい空気と、熱と湿気を含んだ風を受け、深呼吸をする。

―――少しだけのどに刺さり、むせてしまった。


「水……でも飲むか」


実は、今、フォーレストは結構緊張している。

昨日兄の身に何が起こったのか、朧気ではあるが聞いているし、今日の夕方頃には戻る、という話も聞いている。


(今回は、俺から切り出そう……兄さんに、この後の事)


心の中で決めていることがいくつかある。

それを口にすることで、フォーレストにとっては手放さければならないこともある。


「うん……ちゃんと、けじめをつけよう」


自分の、幼馴染に対するこの想いも一緒に。

そう、決めた。


読んでいただき、ありがとうございました!!

不規則ですが、ちゃんと年内で終われる予定…お付き合いいただけると、幸いです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。