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第十三話Part4⑧



 片足で跳ねるゴズマリアの顎に、タンザニオMはアッパーカットを叩き込んだ。のけ反りながら真上に吹き飛び、巨躯が落下する。タンザニオMはその下に潜り込み、両肩で巨大な背中を受け止め、片手は顎を、もう片方の手は膝を掴んで、落下の衝撃を加えつつ背中を弓なりに曲げる技…見事なアルゼンチンバックブリーカーを決めた。

 「でぇあありゃあああっ!!」

 両肩に乗せたゴズマリアの巨躯を全力でへし折らんとする。顎を押さえられたためにゴズマリアは叫び声を上げられず、背中の激痛に目を白黒させ、無事に残っている左腕を振り回した逃れようとしていた…だがその拳がどこかに当たる前に、バゴリと鈍い音が周囲に聞こえた。ゴズマリアの醜いうめき声が一層大きくなった。

 「んぶぅぐ、ふぐぅぅ!!」

 「何、今の音!? ねえメイ!」

 パルルスは隣に立つペルドッサに問いかけた。ペルドッサはその音の正体に気付いていた。

 「恐らく、背骨を脱臼させた音です…!」

 「せぼ…ひぃ!?」

 「郡上様、なんとエグいことを…! アルゼンチンバックブリーカーはもともと、エアプレーンスピンからの脱出を阻むために起こった、いわば事故(・・)…つまり」

 「技の成り立ちからして、人体にかける想定なんぞされておらんのだぞや。これはデンジャラすぎるがや…」

 隣に寄ってきたオネスキア・オベスティア姉妹も、青ざめながらその光景を見ていた。姉妹が技の成り立ちまで知っていることについては、この際置いておいた。

 そして思うさま天使の巨躯をへし曲げると、抱え上げて頭から地面に叩きつけた。同時にガコッと硬質な音が聞こえた。その正体に最初に気付いたのはアクアルマだった。

 「オマイガッ!! なんてことを!」

 「なになに、こなちゃん何したの!?」

 「脱臼した背骨を、たたきつけて無理やり押し込んだのヒョ!」

 「え、それって治…治るわけない! 却ってやばい奴!」

 無理に押し込んだのだから、当然背骨が正しく治療するわけが無い。タンザニオMの怒りがどれほどのものか、アクアルマの語尾が震えたことでモルガナスもよく理解し、そして納得した。かつてサフィールことアキラを危険な目に遭わせていると見て、彼女はブライド達に喧嘩を売ったことがあった。その直情は今や凶暴さとなって天使に牙を剥いている。それもこれも、ブライド達の友情や愛を、ゴズマリアがただの劣情や無駄な感情呼ばわりしたせいであった。

 「ぎっぐぅ、ぅぐぃいぃぃぃ、おの、お()れぇぇぇ」

 全身を震わせ、口から血と涎を垂らしながら、ゴズマリアは何とか立ち上がろうとしていた。歯が零れ落ちた口では、もはやまともに会話もできなかった。そんな彼の震える脚を指し、タンザニオMは笑った。

 「へいおっさん。足が小鹿のベイビーちゃんみたいになってんぜぇ」

 「もはや生まれる以前では」

 聞こえないようにアメイジアが小声で突っ込む。

 ゴズマリアが最早闘えぬことは、誰の目にも明らかだった。顔面や手足のみならず、背骨まで痛めつけられてなお動けるのは、その異常に頑健な肉体のたまものか。だが、動けるというだけのことだった。

 タンザニオMのジュエル、そして両腕のアームカバーが強い輝きを放った。相手が神造天使だから使っていなかっただけで、今やブライド全員が『ピュリファイア・フラッシュ』を使えるようになっている。その上位に当たる『ピュリファイア・スパークル』をタンザニオMが使えるのは、自明の理だった。

 「()らまぇ(だまれ)ぇぇぇ…ご、ごの、でぅせぇびぁ(ディセイヴィア)さまに、じゅぐふぐ(祝福)された、からだで、ぶぁげる(負ける)わげがぁ…」

 「折っちゃったけど歯ぁ食いしばれよ。あんたのジュエル、今キレーにしてやっからなコラァァ!!」

 輝く拳を構え、タンザニオMはゴズマリアに迫った。恐怖におののいて彼は腰を抜かし、もはや言葉にならぬ悲鳴を上げ、その拳を受けるのみであった。わずか一秒の間で、数百万発の拳打が天使の巨躯にめり込んだ。


 「ピュぅリッファイアァァァッ!!」


 「うげおぼぁえべぐへあびゃおがぶ、でゃばごがりゃうばおぽぁあべぶばおほばぉばあっっ!」

 全身の激痛にゴズマリアが悲鳴を上げる。とどめの一撃をタンザニオは振りかぶり、光速を遥かに超えた拳が、電光を伴ってオーラクリスタルを捉えた。


 「スパークルァァ!!」


 表層のバリアを破壊、神の力を砕く光がジュエルを貫いた。群青色の閃光を放ちながら巨体が吹き飛んでいく。合わせて白い炎に似た不定形な輝きが飛散し、空中に消えた。

 光が止むと、崩れかかったビルの壁に中年の男がもたれかかっていた。白い詰襟の服と灰色の丸い石から、ゴズマリアであろうことは察せられたが…無傷であることはともかく、その体はガリガリにやせ細り、それでいて腹だけがたるんでいた。誰だと思ってタンザニオMがその男の顔を覗き込む。頬の弛みや落ちくぼんだ目元、醜く禿げ散らかした髪のせいで一瞬老人と見間違えたが、顔立ち自体は確かにゴズマリアの物だった。

 「…おっさんだ、ホントに。ちょっと加齢臭もする」

 「あ…師匠、このひと、言ってた。神様に祝福された体、って」

 「そっか。もしかしてあの筋肉は、祝福つって神様にドーピングされたってことかな…」

 アメイジアの推察からするに、恐らく彼の肉体はディセイヴィアに強化されていたということだろう。理想の筋肉を手に入れ、ブライドを叩きのめそうと考えて殲滅を請け負って地上に降りてきて、しかしディセイヴィアの『祝福』とやらを失い、元の体形に戻ったというところか。脆弱な肉体と尊大な精神から生まれたコンプレックスを晴らすべく、神に縋りついたのでは…と、つい邪推してしまう。

 「…ま、どーでもいっか。それより紫織さん!」

 「はひっ!」

 振り向いたタンザニオMに手を握られ、アメイジアは跳び上がった。

 「さっきの約束! ね! 結婚!」

 「け、け、けっこん!」

 「そ! 友達同士の結婚だから…トモ婚だ! してる人いるみたいだし! ウチらだってできる!」

 「は……」

 目をしばたたき、アメイジアの頬が紅潮していく。喜びに満ちた笑顔に変わると、大きくうなずいた。

 「はい!」

 「やった! プロポーズ大成功! トモ婚だ!! ひゃほーい!」

 「ひゃ、ひゃほおーい!」

 二人で喜ぶ姿に、ブライド達の頬が緩んだ。その光景にアンベリアは目を輝かせ、ヘリオールは苦笑し、ガルナは半ば呆れ、スピルナスは何故か偉そうにうなずいていた。

 「菫先生、これはっ!」

 「ええ、ええ。恋なんかする暇もない、全身全霊の友情が二人を結んだのよ。この世で最も清廉な心にして絶対の無欲! つまり!」

 「急に早口になりましたね。つまり何です」

 「アレだな?」

 その次に出る言葉を、ガルナとヘリオールは理解しつつも問う。カッと目を見開いて、スピルナスは答えた。

 「そう。人類の、尊厳…!!」

 「尊厳! ですねっ!」

 「尊厳ですかー」

 「尊厳なんだよなぁ…」

 この場にいるブライド全員が集まり、タンザニオMとアメイジアを祝福した。尊厳! 尊厳! ベリー尊厳!と謎のコールで盛り上がる中、タンザニオMとアメイジアが照れながら仲間達に答えている。そんな緊張感のない光景に、天使四姉妹はすっかり脱力し、大きく息を吐きだした。とりわけ、長女のダシルヴァはすっかり呆けてしまっていた。

 「はあー………」

 「ダシルヴァ姉様?」

 「ロゼル…いや、ゴミ野郎とか言ってしまってなあ、我が主を。…何でこうなったかなあ」

 後悔に満ちた言葉だが、その顔はどこかすっきりしていた。隣に座ったロゼルはその言葉に破顔し、姉の肩にもたれかかった。その頭を長女は雑に撫でる。恐らく、プリマ・サフィールことアキラと出会い、その言葉を聞いてしまったからではないか…と、ダシルヴァは思っていた。

 彼女は自身の恋を妄信し、神を殴ってまでそれを叶えようとする、どこまでも独善的な少女だ。それでいて愛する緋李やブライドの仲間達に対し、どこまでも誠実である。強靭な意思と真摯さを兼ね備えたアキラは、僅かな時間だけでもかかわった相手を、真正面から見つめ、手を取り、あっという間に仲間にしてしまうのだ。

 (…引っ掛かったのかなァ、私も。チョロいなー)

 ダシルヴァは自嘲した。だが、隣で笑う妹…普段は無表情なロゼルもまた、同じような物なのだろう。悪い気分ではなかった。

 「素敵でした、姉様。さすが我らが長女です。あのような下衆を遣わす輩、ゴミ呼ばわりで充分です」

 「これで私達全員、裏切者か。…この間は殴ってしまって、すまなかったな」

 「いいえ、私もひどいことを言いました。すみませんでした」

 そしてこれがきっかけで、二人は結局あっさりと仲直りしてしまった。その背を見ながらゴルディエは苦笑し、アグレアは安心して滂沱の涙を流していた。

 「やはり、うん、やはり仲が良いのが一番だ…ロゼル、ダシルヴァ姉様…おぅぅんおぉぉぉん!」

 「お前涙腺疲れてない? 一回ババアんとこ行って茶ァもらってくっか?」

 「いや、いらない…お気遣いありがとうゴルディエ姉様」

 涙を拭う三女を、次女がやさしく撫でた。

 全員がすっかり緊張感をなくしてしまっていたが、まだ神造天使が全滅したわけではない。天上の『通用口』からは新たな天使もどきの群れが降りてきていた。ブライド達は迎え撃つべく、再び気を引き締めた。先頭に立つペルドッサが全員を振り返った。

 「まだこの先、たくさんの天使もどきが来ます。さっきと同じく必ず二人一組で行動してください」

 ブライド達はうなずく。

 神の世界ではまだサフィールM達が闘っている。そしてここから一体でも逃がしたら、ブライドになり得た者達に被害が及ぶ。現時点で地上に降りた神造天使は全て破壊したが、だからと気を抜くわけにはいかなかった。しかしタンザニオMのおかげで、戦力も体力も持ち直した。まだ充分に闘える。闘いは続いているのだ。

 新たな群れが地上に降りた。ブライド達は怒号と共に、再び神造天使の大群へと向かっていった。



 クリスタMとヴァルオラが訓練場で対峙してから、膠着状態が続いていた。ヴァルオラは熱線を打ち続けていたが、クリスタMは照射直前の掌の発光を目視し、全て回避していた。遮蔽物が一切ないため身を隠す場所は無く、にもかかわらずヴァルオラの熱線は一度として直撃していない。熱線を受けた壁が焼け、抉れ、溶け落ちていく。

 一方のクリスタMも、熱線を回避して接近し、リボンを振るって両手を押さえ込もうと幾度も試みた。だがそのたびに防がれている。今もまた近づくべく、熱線を回避してジュエルを明滅させ、『アクロスカイ・マキシマ』を利用。重力操作で一瞬にしてヴァルオラの前に迫ったのだが。

 「やぁァッ!」

 「むだだ」

 ヴァルオラがかざした掌を中心に、ドーム状のバリアが出現した。先刻から一度として有効打につなげられないのも、熱線からバリアへの切り替えがあまりに早すぎるからだ。『アクロスカイ・マキシマ』を用いれば一瞬で接近できるが、熱線を撃った直後にはすでにバリアを張れる体勢になっている。今までに見たことの無い技能ゆえ、クリスタMは学習能力をフルに利用して捕縛を試みていたが、ヴァルオラの防御はいまだ崩せずにいた。

 熱線の直後にバリアを張り、離れればすぐ熱線の連射に切り替えるという一連の動作から、クリスタMはある一つの仮説を立てていた。

 (―――あのバリアも、本当は熱線なんじゃないのかな…)

 すなわち直線状に投射すれば熱線となり、目の前で円盤状に形成すればバリアとなるのではないか、という推測だ。リボンが防がれた時、バリアには質量があるように感じられた。異なる技能かと一瞬でも思ったのはそれが理由だが、バリアを張りながら熱線を撃たれたことは一度として無かった。必ず『切り換える』のだ。

 (あの子は一つの技をかなり高いレベルまで鍛えた。でも―――)

 足元を抉る熱線をジャンプして回避する。

 (あの技しか使えないんだ)

 それさえあればブライドを殺せると教わったのだろう。クリスタMに対し、熱線とバリア以外の技を見せたことは一度として無かった。肉弾戦も恐らく不得手だ。

 壁を蹴り、『アクロスカイ・マキシマ』を用いた三角跳びで接近する。接近しながらリボンを指で撫で、サーベル状に硬化させた。その先端が届く寸前、ヴァルオラはバリアを張って防いだ。サーベルの先端とバリアが激突し、火花を散らした。クリスタMは『アクロスカイ・マキシマ』を再度発動し、サーベルの先端を押し込んでバリアを突き破ろうとする。だが先端がわずかにバリアを抜けたと思った直後、バリアの形状が変化し、クリスタMに向けて投射されたのである。

 「うわっ!」

 クリスタMは三度『アクロスカイ・マキシマ』を用いて真下に急降下した。熱線は背後の壁を貫通する。すぐに次の動作に移れるように真横に跳び、クリスタMは体勢を整えた。だがヴァルオラはそれを許さず、立て続けに熱線を撃ち込む。横や上に跳んで回避しながら打開の手段を探るが、彼女の技能だけではあのバリアを打ち破れそうになかった。

 「そのていどか。わたしの、あねのくせに」

 「……」

 せめてもう一人いれば。ヴァルオラを救うには、もう一人の助力が必要だった。

 (…ハル……!)

 エメルディMは、神造天使を全滅させてから追いつくと言っていた。『飛び込み台』の方から時折爆音が聞こえたが、まさにエメルディMが闘っている最中なのだろう。ならば今できるのは、愛する彼女を待ち、わずかでも天使の能力を観察することだけだ。

 ヴァルオラは熱線とバリアを同時には使えない。『ピュリファイア・スパークル』でバリアを破れる可能性はあったが、直後に熱線に切り替えられて吹き飛ばされるだろう。ならば、熱線を出している最中に撃ち込むしかあるまい。照射前の動作を目視して回避できるならば、不可能ではない。

 (…やるか)

 クリスタMは意を決し、身構えた。同時にヴァルオラも、その意志を察して掌を突き出した。照射か、それともバリアか。それだけでは区別が付かない。ヴァルオラにしても至近距離での戦闘は苦手なため、迂闊に熱線を出して隙を作るわけにもいかなかった。両者は沈黙し、時間だけが流れる―――その静けさの中、クリスタMは気づいた。

 後方からの爆音が聞こえない。その意味を理解した瞬間、彼女の胸に希望が生まれた。そしてジュエルの中でシプルゥが叫んだ。

 《ステラ、来たぷきゅ!》

 (うん!)

 ほぼ同時にヴァルオラも何かを感じ、廊下側の壁を見た。途端に一本の銀の矢が壁を破壊し、ガントレットに包まれたヴァルオラの手を弾いた。矢はガントレットの表層に突き刺さり、小さなヒビを入れて消滅した。壁の穴の向こうに立っているのは、クリスタMが待ち続けた愛する人の姿だった。

 「ハル!」

 「お待たせ、ステラ!」

 エメルディMは体のいたるところに擦り傷を作っているが、数万の軍勢を相手取ったにしては軽傷であった。ここで連闘するにしても、何一つ問題はなさそうだった。壁の穴からエメルディMは訓練場に踏み込み、クリスタMの隣に並んだ。

 「ステラ、あの子は?」

 「『アンジェ・ヴァルオラ』、ステラ達の―――もう一人の『妹』。天使になってしまった、って…」

 「なるほど。それでステラは今、あの子を助けようとしてるわけね」

 「うん」

 エメルディMはクリスタMの顔を見て、一目で意図を悟った。

 「ハル、力をかして」

 「判ってる」

 飛び道具を持ったブライドは少なくないが、主体とする相手は二人とも初めてだった。クリスタMが身を低くして構えたのに合わせ、エメルディMは弓に矢をつがえてヴァルオラに狙いを定める。対するヴァルオラも両手を構え、二人に向けて広げた。どちらが先に来ても対応できる自信はあった。

 最初に動いたのはエメルディMだった。矢と言うにはあまりにも大きな銀の矢が、風を切ってヴァルオラの目の前に飛来する。ヴァルオラは冷静にバリアを張って矢を消滅させる。クリスタMはエメルディMが矢を放ったとほぼ同時に走り出し、バリアの閃光でヴァルオラ自身の視界が遮られた一瞬を狙って接近した。だがヴァルオラはすぐにその場から跳び退く。天井近くまで跳躍し、眼下の標的へと熱線を連射した。クリスタMは全て、連射の前動作を見て熱線を回避しながらヴァルオラの着地地点まで走る。その姿が不意に消失した。

 「―――そこ!」

 低空での跳躍に『アクロスカイ・マキシマ』による反重力を加え、一気に加速して自身の前方に跳んだのだとヴァルオラは察した。着地する直前で熱線の投射を打ち切り、バリアを張ってクリスタMに叩きつけようとする。だが、その後ろの気配に気づいてその動作を打ち切った。エメルディMが助走を付け、空中にいるヴァルオラへとドロップキックを放ったのだ。

 「後ろがお留守!!」

 「ちぃっ!」

 バリアから瞬時に熱線へと切り替え、ジェットのごとく噴射して再び跳び、ヴァルオラはドロップキックを回避した。が、その視界から床にいたはずのクリスタMの姿が消えていた。どこに消えた―――と探していると、背後からの羽交い絞めで両肩を固められた。

 「つかまえた!」

 「きさま、いつのまに!」

 クリスタMは、ヴァルオラがドロップキックを回避して再び跳ぶものと一瞬で判断し、同時に跳躍していたのだった。そして空中で捕まえ、直後に『アクロスカイ・マキシマ』を発動。空中から落下しながらのフルネルソンスープレックスでヴァルオラを床に叩きつけた。

 「ぐぬぅっ!」

 落下してすぐにクリスタMは体を離すと、仰向けに倒れたヴァルオラに飛び掛かり、サーベル状のリボンを突き下ろした。ヴァルオラは両手を真上に上げてバリアを張り、その先端を防ぐ。直後にバリアを消し、熱線を放った。

 「うぁぁっ!!」

 熱線はクリスタMの腹を直撃し、真上に吹き飛ばした。天井に激突するかと思われたが、そこへエメルディMが跳んで受け止める。二人はそろって着地し、立ち上がったヴァルオラと再び対峙した。

 「ステラ、大丈夫?」

 「平気。この服、まえより丈夫になってるから…」

 「怪我は無いようね。この後は神様もいるんだから、ここで怪我なんてしていられないわ」

 装束の焦げ目や体の痛みこそあるが、傷らしい傷にはなっていなかった。ヴァルオラはそれを見て眉を顰める。

 「…はかいりょくが、たりない」

 どうやら彼女の想定では、これまでの威力の熱線でブライドの体を貫通し、物の数秒で命を奪っていたようだ。だが『マリアージュ・リング』発動で装束も肉体も頑強になり、結果はこの通り。直撃を受けてなお平気でいる…ヴァルオラはその事実を瞬時に理解し、考えを改めたようだ。身にまとう空気が一変する。



―――〔続く〕―――

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