表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
84/95

第十三話Part4⑦



 「……なんだ、出来損ないが」

 「…やめろよ。お前、何してるんだ」

 妹達が追い付き、力なく問い質すダシルヴァをかばうように周りに立った。長女の余りに無謀な行いに、アグレアなどは同じくらい顔面を青くしている。

 「何をしているだと? 矯正に決まっている」

 ゴズマリアは拳をゆっくり下ろして立ち上がり、ダシルヴァへと歩み寄った。置き去りにされたタンザニオの顔面は、醜くはれ上がり、眼球の片方が破裂し、歯も何本か折れていた。

 「我が主の理想たる平和を魂の底に教え込み、それを穢したことを地獄の底で後悔させてやるのだ。貴様らとてこいつらを痛めつけたろうに、いまさら何を」

 「だったら一発で殺せばいいだろう。あんなに顔面を破壊する必要なんて無い。あんなに殴る必要なんて無かった!」

 「ディセイヴィア様は私に全てを委ねられたのだぞ。それに異を唱えるのなら―――」

 「お前がっ!! …お前がやってることは! ただの暴力じゃあないか!!」

 ダシルヴァの訴えは、本人の意思でも止められずに続いた。

 「…何が平和だ。お前は主の理想を盾に、気に食わないブライドを虐めて、悦に入ってるだけだ…! 何が平和だ!」

 「それを私にお任せになったということだ」

 だが涙を流すダシルヴァの切実な訴えに、ゴズマリアが返したのは嘲笑だけだった。

 常々地上の平和を提唱してきた神が、このような…下衆な男に地上の平和を任せた事実から、ダシルヴァは神の真意を理解した。ゴズマリアが言ったような、豊かなる命に満ち、人々が心身を育てていく未来など、ディセイヴィアは本当は微塵も求めていないのだ。ディセイヴィアが願う『平和』とは、今ゴズマリアが暴力で以って行っているように、あらゆる願いも心もひねりつぶして、神への反逆行為を一切封じ込めた世界のことだ。これはロゼルとの闘いでアキラが気づいたこととほぼ同一であった。そこに見捨てられた事実が加わったことで、ダシルヴァの中の何かが決定的に崩壊した。

 この瞬間、彼女は主であるディセイヴィアを見限ったのである。

 「…じゃあ我が主…いや、ディセイヴィアは、お前と似たようなものか」

 「何だと?」

 「同程度のゴミと言うことだ、このゴミ野郎!!」

 ダシルヴァの叫びに、ゴズマリアは今度こそ怒り、彼女をかばう妹達ともども平手で吹き飛ばした。激痛に悲鳴を上げ、姉妹は砕けた大地に倒れ込んだ。妄信する主を罵倒され、怒り狂ったゴズマリアは無表情で姉妹に歩み寄った。

 「わが主を愚弄するか。許さんぞォ、出来損ないども…」

 「バカにしたのはダシルヴァ姉様一人だけなのですが…ああ、ですが私も同意見です、姉様」

 長女の隣に倒れたロゼルが、ダシルヴァの肩を軽く叩いた。数日ぶりに、お互いにまともに目を見て話していた。

 「…ロゼル」

 「神は人を愛さないと、クリスタは言ったそうですが…ディセイヴィアは誰も愛さないのでしょうね。だからあんな下衆に任せられるのです」

 ロゼルの言葉で、神の人格についてダシルヴァ、そしてゴルディエとアグレアも気づいた。

 「―――愛が無いのです」

 ロゼルがそこまで言うと、姉妹そろってうなずいた。そして歩み寄るゴズマリアを前に、どうしたものかと途方に暮れる―――。

 その少し前、アメイジアはふらつく頭を無理やり起こし、這いずってタンザニオの隣に寄り添った。彼女とて無傷ではないが、それでもタンザニオに比べればまだ傷は軽いと言えた。タンザニオの顔を覗き込み、アメイジアは息を呑んだ…前髪に隠れたその両目から、絶望の涙が零れ落ちた。

 「し、ししょう…」

 「あー…しおり、さん…?」

 「ししょう、師匠…!」

 どうにか生きていたタンザニオの声に安堵しつつ、最早人として生きていくことが叶わぬほどにボロボロになった姿に、どうしていいか判らず、涙が止まらなかった。

 「このままじゃ、師匠しんじゃう…やだ、そんなのいやだ…!」

 アメイジアはタンザニオに縋りついた。同時にウミミとパップがタンザニオにしがみつき、治癒を試みる。しかし、全身を破壊した負傷はまるで治る気配が無い。

 「…しおりさん、も、血が、いっぱい」

 「わ、私の事、なんかいい! …師匠、師匠は、がんばった」

 「うん…」

 周囲を見渡すと、仲間達は神造天使を蹴散らしながら、どうにかタンザニオの傍に駆け寄ろうとしていた。だが神造天使の数は増える一方で、しかも二人がゴズマリアの相手に回ったため、一組で担当する数が一気に増えて、わずかながら押され始めていた。そんな仲間達と目の前のタンザニオ―――かけがえのない親友を、アメイジアは心の中で天秤にかけていた。傾くのは当然タンザニオの方だ。

 「…ケガは、一生かけても、私が治す、から」

 「…うん」

 「だから。だから―――」

 だから、逃げて。アメイジアは喉元まで迫った言葉を押し出そうとするが、どうしても出てこなかった。ブライド全員、ここにいるのは自らの意志による行動だ。それをタンザニオ一人だけ裏切らせることになる…仲間達を裏切ることになるのが判っているからだ。そして何より、タンザニオこと小波が親友の恋を全力で応援していると、判っているからだった。

 逃げてと言おうとして言えず、アメイジアは何度も息を吸い、吐き出す。

 「なんでえ…なんで、ちゃんと、言えないのぉ……」

 「しおり、さん…」

 アメイジアはタンザニオの肩に顔をうずめ、ただひたすら涙を流し続けた。タンザニオはそんなアメイジアを撫でようとして、両腕のどちらも動かせず、腫れあがった口元でいびつにほほ笑みを浮かべた。

 「しおり、さん」

 「なに…」

 「にげていい。みんな、おこんないから。ウチがちゃんと説明、する…」

 「やだぁ!!」

 アメイジアが金切声で叫ぶ。普段オドオドしている彼女の、必死の叫びだった。

 「やだ、師匠を置いてくなんていや!」

 「……」

 「師匠を、友達を置いてなんて、いけない…やだよぉ、どうしたらいいの…」

 またも泣きだしたアメイジアの嗚咽を聞きながら、タンザニオはしばし考えた。このままでは二人とも…そして天使四姉妹、他のブライドも、ゴズマリア一人に殺されてしまう。それは勝利ではない。アキラ達が神への訴えを通したところで、ブライドが一人でもいなくなっては、勝利ではないのだ。だが、覆せない状況を打開する方法は見当たらない。せめて、アメイジアを慰められたら…。

 そう思った瞬間、タンザニオの脳裏に何かがひらめいた。タンザニオは僅かに顔を起こし、アメイジアにささやく。

 「…しおり、さん」

 「なに…?」

 目が合うと、タンザニオは笑いながら言った。

 「―――この闘いが終わったらさ、結婚しよ。ウチら」

 それは、言えば絶対に失敗する言葉だった。多少マンガを読んでいて知識もあるし、何よりスピルナスこと菫からその意味をよく教わっている。慰めの言葉としてはあまりにも残酷で、アメイジアは友の優しさに却って絶望してしまった。

 「そ、それ、言ったら、ダメなやつ…師匠、ひどい……」

 「へへ。これなら生きる気力湧くかって、思ったけど。ダメ…?」

 「だ、だめ…それに、わたしたち」

 アメイジアは一度言葉を切り、涙を拭った。無理やり笑おうとしたその顔が引きつる。

 「友達で、女同士で…だから」

 「うん」

 「だからムリ、無理だよ。ひどい、師匠、何でそんなこと、言うの……冗談でも、ひどい…」

 アメイジアはそれ以上何も言えず、黙り込んでしまった。タンザニオはまるでそれを意に介さず、弱弱しいながらも微笑みを浮かべている。冗談で笑わせてやりたかったのではなく、あくまでも彼女は真剣に言ったのだ。アメイジアにもそれは判った。だが叶わぬからこそ、冗談でもなどと言って、冗談にしてしまおうとしたのだ。

 しかしタンザニオは、そんな友を慰めるのではなく、励ますように言い聞かせた。

 「だいじな友達と、ずっと一緒にいるために結婚。何か、まちがってる?」

 「……」

 「…アキラが神様をぶんなぐって、世界を変えてくれたなら……きっと、できると思う。できるよ」

 「ししょう……」

 タンザニオのこの言葉の根拠は、サフィールらが神への訴えを押し通すことが大前提であった。普通の人間であれば、そんなものは無理だと一笑に付すだろう。だが彼女たちは、プリマ・サフィールことアキラを信じていた。誰より傷つきながら闘って、ついに神の許に辿り着いた彼女を信じていた。

 アキラが緋李との恋を『普通の恋』として叶える。ならば、もし二人の恋が普通になったのなら、同性の友達同士での結婚も普通のことになるではないか。単純かつ非科学的故に、これはあまりにも強固な根拠であった。

 「ウチ、紫織さんといっしょにいたい。ずっと一緒にいたい。恋じゃない、友達として」

 「ししょう……    私も、師匠といっしょがいい。友達と、いっしょにいたい…」

 「そっか…。じゃあ、ケッコンしようよ」

 涙を呑んで、アメイジアがうなずいた、まさにその時―――丁度、ゴズマリアが天使の姉妹へと歩み寄って、目の前まで迫った瞬間だった。

 タンザニオの装束の上を、銀色の細い線が走り、消えた。銀の線は一つ、二つ、三つと増え、やがて全身に、更には周囲の空間に走り始めた。二人は呆然としてそれを見て、そしてすぐに気づいた。サフィール達が、愛しい人と愛を結んだその時。天使に匹敵する恐るべき力を発揮する、進化。タンザニオの全身が銀色の光を放った。

 「はは…そっか、あはは…」

 タンザニオの傷は見る間に癒えていった。はれ上がった顔も、つぶれた眼球も、口中の折れた歯も元通りになっていた。砕けた腕、つぶれた脚、千切れた装束、すべてが癒えていく。銀の光に、いつしか群青色の閃光が混ざっていた。立ち止まったゴズマリアが振り向き、呆然としてその光景を見ている。他のブライド達も、天使四姉妹も同様だった。神造天使達に至っては、理解できぬ状況に完全に動きが止まってしまっていた。

 《うみゅ、うみゅみゅ!!》

 《これはこれはこれは、師匠どの! 師匠どの!》

 ウミミとパップが半ば混乱する中、完全に復活したタンザニオは、アメイジアに縋りつかれたまま地面に座っていた。ゆっくりと胸元のジュエルに両手をかざす。その意味に気付き、ゴズマリアは踵を返してタンザニオを取り押さえようとした。

 だがそれを意に介さず、タンザニオはささやくようにアメイジアに言う。

 「紫織さん、一緒に誓ってほしい。いい?」

 「うん」

 タンザニオがかざした手に、アメイジアは自らの手を重ねた。彼女自身が進化できるわけではないが、共にあるものとして、それは彼女なりの約束の証でもあった。二人、揃って進化の名を宣言する。


 『マリアージュ・リング』


 爆裂する閃光がブライド達を照らし、体の疲れや痛みを癒していった。更に神造天使はこの光を浴びた途端に機能を停止し、次々と倒れた。

 同時にタンザニオの装束が形を変えていく。キュロットスカートは足首までを覆うレザーパンツに。肩のプロテクターは消失し、その代わりジャケットの肩口にいくつかのスパイクが出現した。両腕を覆う分厚いアームカバーも同様、無数のスパイクに覆われた。足元は重そうなレザーブーツに変化。どっしりと大地を踏みしめ、タンザニオは立ち上がった。そして何より、一回り大きくなった胸のジュエルと、それをぐるりと囲む銀色のリングが輝いた。光がやみ、その中から現れたのは。


 友を思い、生涯を分かち合う約束を結んだ証。プリマ・タンザニオ・(マリアージュ)の、堂々たる姿であった。


 タンザニオMは、大きく変化した装束を手で触って確かめた。金属製スパイクの硬さと冷たさ、それらが現わす屈強さに、思わず頬がゆるむ。

 「あはは、すっげ、超かっけえ! 何これ、ヘビメタ? セーキマツ? みたいじゃん! ぜってー強いやつじゃん!!」

 そのシルエットが気に入ったのか、タンザニオMは楽しそうにぴょんぴょん跳びはねた。横で見ているアメイジアは呆然としている…なにしろレザーやスパイクなどのいかついパーツが増えながら、ブライド標準装備の腰のリボンは変わらないのだ。そのせいで可愛らしさとのミスマッチが凄まじいことになっていた。

 ゴズマリアはご機嫌なタンザニオMを見て我に帰り、しかしこれまで四人の天使が『マリアージュ・リング』を発動したブライドに倒された事実を知りながら、何の警戒も無く歩を進めて近づいていく。彼にとって人類とは強者たりえる存在ではなく、だからこそブライドに負けたダシルヴァ達を出来損ない扱いしているのである。

 「ふんン。なぁるほど、多少は性能が強化されたようだが」

 ゴズマリアはダシルヴァらを横目で見ると、鼻で笑った。

 「そこの出来損ないを負かす程度の連中が、私に敵うと思うのか」

 「へへぇ! ビビって腰抜かしても知らないからね。この肉ダルマ親父!」

 「肉ダルマ…!」

 その悪口が彼の癇に障ったのか、途端にゴズマリアの額に青筋が浮かんだ。対するタンザニオMは余裕の笑みすら浮かべていた。その光景をブライド達が、天使四姉妹が見守っている。天使との闘いはタンザニオM一人に託した。そしてすべてのブライド、四姉妹は確信した。ゴズマリアに絶対に勝てると。

 「師匠」

 隣にいたアメイジアが邪魔にならぬように離れた。周囲のブライド、四姉妹とも距離がある。危険に巻き込むことはまず無いだろう。タンザニオMは拳をゆっくりと上げ、構えた。

 「―――やっちゃえ、師匠!」

 「まっかせろォ!」

 タンザニオMの返答を合図に、両者が駆けだした。ゴズマリアが拳を振りかぶった、その瞬間―――既にタンザニオMは彼の目の前にいた。驚愕する暇もなく、顔面に突き出された拳を受けた。もともとタンザニオは一度に踏み出す距離と速度、そして拳打の速度と破壊力、それらすべてにおいてブライドの中でもトップクラスであり、拳速に至っては音速を超えるほどだ。天使を大きく上回る速度で拳を叩き込んだのは、そのタンザニオが進化した結果として全くの道理であった。

 「でぁりゃぁあああああ!!」

 豪快に、かつ桁外れの速度で振り抜いた拳が、天使の顔面を直撃した。強烈な衝撃波が周囲の瓦礫を一斉に吹き飛ばした。

 「おぶごぁええっ!?」

 汚らしい悲鳴を上げてゴズマリアが吹き飛ぶ。その巨体で家屋の破片を粉々に破壊し、崩れかけたビルを貫いて、顔面で地面のアスファルトを抉り、更には乗り捨てられた運送用トラックに激突してもその勢いは止まらず、トラックごとまとめて高層ビルに直撃、外壁を爆砕し巨大な穴を空けてやっと止まった。直線距離にして約二百メートル、ただのパンチを受けた瞬間にそこまで吹き飛ばされ、ゴズマリアの頭は混乱した。

 「………何が起こったのだ…何が…」

 口を開くと、折れた歯がぼろぼろと零れ落ちた。頬にも強い熱と痛みがある…顔面が陥没骨折していた。超人とはいえ、たかだか人間の拳が自分の顔面を打ち据え、しかも骨や歯まで砕いたと気づき、彼は激高した。ビルから飛び降り、超高速で走って駅前に戻る。余裕の笑みを押さえ、真剣な顔のタンザニオMが待ち構えていた。少女の小さな体に向け、ゴズマリアは拳を振り下ろした。だが大きく硬い拳は、少女の小さな手で容易く受け止められた。力を入れても押すことは叶わず、一ミリもタンザニオMは動かない。逆にゴズマリアの方が押されるほどの膂力であった。

 ゴズマリアは一度拳を引き、今度は一度に数千発の拳打を繰り出した。アグレアの技に匹敵するそれは、直撃すれば少女の肉体を一秒以内にミンチにするほどである。だが、タンザニオMに対しては悪手であった。神造天使相手に幾度も音速の拳を繰り出していた彼女は、抜群の動体視力で全てそれを捉えていた。

 「遅いんだよ、オッサン!!」

 ゴズマリアの拳は、タンザニオMの乱打で全て弾き飛ばされた。それでもあきらめず、ゴズマリアは渾身の右ストレートを繰り出す。同時にタンザニオMの胸のジュエルが明滅した。友人たちに聞いた話が確かなら、これは『マリアージュ・リング』発動後に使えるブライドごとの特殊能力だ…自身がどんな能力を持っているのか、まだタンザニオMには把握できていない。その時、ジュエルの中のウミミが能力を調べ、伝えてきた。

 《うみゅみゅみゅ!》

 (オッケーオッケー、そんじゃあやってみますか!)

 「んっどぁりゃぁあああ!!」

 自身のリーチの範囲内まで引き付けてから、タンザニオMはゴズマリアの拳に自らの拳を叩き込んだ。硬く鈍い音が鳴る。天使の拳が砕けたかと誰もが思った瞬間、地鳴りにも似た音が彼の肉体で轟いた。タンザニオM自身を含む誰もが、何が起こったかを理解せずにいる。と、目の前のゴズマリアの右腕が突然膨れ上がった。

 「ばっ…ばくぁな、ごぉれは…」

 半分近くの歯を失った口でうめき声を上げると、右腕の皮膚が爆発的な勢いで裂け、大量の血と肉が飛び散り、骨も砕け散った。

 「ぎぃやあああああああーあっああああ!!」

 「決まったぁ! 『メテオライト・リフレクション』っ!!」

 《うみゅっ!》

 『メテオライト・リフレクション』。それはタンザニオMが獲得した新たな能力であった。拳を叩き込むことで、攻撃部位の内側に相手の運動エネルギーを増幅して跳ね返す技だ。その増幅割合は一度につき約二百倍。成人男性の拳打がパンチングマシーンの値にしておよそ二百キログラムほどとすると、単純計算で四十トンの重さが腕へと伝わることになる。すなわち相手の膂力が強い程、押し戻す破壊力は増幅する。さらにタンザニオM自身の拳打の威力が重なり、一撃で天使の肉体を爆散する破壊力が生まれるのだ。

 「ぎっぎぃ、きすぁまぁ…ごぬぁああ!!」

 「何言ってっかわかんねーよ、この肉ダルマぁ!」

 自棄になって繰り出されたゴズマリアの前蹴りに、タンザニオMはジュエルを明滅させながら拳を叩き込んだ。再び『メテオライト・リフレクション』が発動し、蹴り足が爆裂する。

 「ああぁあああぅ、ごあああああああ!!」

 「みんなの気持ちをバカにしやがて…ウチはぜってー許さねえからなぁあ!!」

 彼女が言う『みんな』とは、ブライドだけではない。この世界で異端とされる恋を抱くすべての人のことではないかと、怒りの叫びを聞いた者達は思った。



―――〔続く〕―――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ