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第十三話Part2②



 緊急警報が出てから住宅街にある市営体育館に避難し、祖母と共に警報が解除されるまで待っていたのが約3時間前。その後すぐにアキラと晴が迎えに来て、やむを得ないと言って連れ出したのである。祖母はさぞ心配していることだろう。

 玄関の戸を開けて踏み込んだ所で、どたどたと走る音が聞こえた。

 「ただい―――」

 「ああ、ステラちゃん、雪ちゃん! 怪我は無い? 大丈夫? アキちゃんに晴ちゃんも!」

 帰りのあいさつを待たず、祖母は四人を抱き寄せ、全員の無事を確認した。予想以上の心配ぶりであったが、しかし祖母をそれだけ心配させたことを実感し、ステラと雪は祖母にしがみついて小さな声で謝罪した。

 「…ごめんなさい、おばあちゃま」

 「ごめんね…ステラ達は大丈夫だから。皆大丈夫だから」

 「よかったわ…アキちゃん達も、怪我はないのね?」

 祖母はアキラと晴の手や肩にも触れ、擦り傷も打撲も無いことを確かめて安堵の息を吐いた。晴がその肩を優しく叩いてなだめる。

 「大丈夫です…すみません、ご心配をおかけして。どうしてもステラと雪が必要でしたから」

 「一体どういうご用事なの…? こんな小さな子たちまで」

 「それは…すみません、今は言えません」

 「…………そう…」

 答えをもらえずに落ち込む祖母と、申し訳なさそうにうつむく晴。その光景をアキラは黙って見ていた。神との決戦が…しかも人類と精霊、合わせてたった三十二人での決戦が始まったなどと、今の祖母に言えようか。そしてステラたちもその仲間で、二人とも神と闘う意思を持っていると。

 (…ごめん、お祖母ちゃん。もう少しだけだから)

 もう少しだとアキラは思いたかった。だが天使が何人も地上に降りて来れば、必然的に闘いは長引く。それを防ぐために神の世界に行く方法をロゼルに尋ねたのだが、成果が得られたとは言い難い―――曰く神に近づけるかもしれないという『マリアージュ・リング』が何を以って成し遂げられたのか、アキラには判らなかった。

 (小波の言う通りだ。手遅れになる前に方法を見つけなきゃ)

 そう思ったところで、晴が立ち上がり、アキラに帰宅を促した。家に帰ればまた家族の間に重苦しい空気が漂う…アキラは気が重くなった。どこかに泊まりたいが、そんなに都合よく止めてくれる家も無い。祖母や芽衣に頼んだところで、母から電話がかかってくるかもしれない。家に帰るしか無かった。

 「それじゃあ失礼します。…ステラ、雪、またね」

 「―――ハル」

 そう言って離れようとした晴の手を、ステラが掴んだ。ほとんど無意識の行動だったらしく、本人も呆然としていた…緋李を仲間達に紹介した日も、同じように晴の手を取っていたことを、アキラと雪は思い出し顔を見合わせた。祖母もキョトンとした顔で見ている。当のステラは何度かまばたきして自分の手を見ると、ゆっくりと晴の手から離した。困惑する晴から目を逸らし、ステラはうつむく。

 この中で一人、雪だけが何かを確信した表情でステラを見ていた。ステラが晴に抱く感情に気付いている…今しがた目が合ったアキラにも伝わった。だが、それはここでは言わなかった。しばしの沈黙の後、ステラは小声で言った。

 「…じゃ、ね。ハル。またね」

 「え、ええ……じゃあね」

 晴は握られた自分の手とステラを見比べると、おもむろに玄関から出た。アキラも三人に別れを告げて家を出る。外はすっかり暗くなっていた。

 アキラは隣を歩く晴の顔を見た。困惑している、しかし嫌悪や拒否は微塵も浮かんでいない…不思議な顔だった。

 「アキラ」

 「ん?」

 「私、ステラにどう思われてるのかしら」

 ステラは晴に懐いている。特に最近、晴が勉強を見に来た時などは積極的に話しかけていた。とても幸福そうな顔をするステラが、晴に対して何を思っているのか。以前から勘付いていたのは、今いた五人の中では雪だけだったのだろう。

 「本人に聞いてみないと判らないね」

 「…そうよね」

 「二人っきりの時とかさ、聞いてみなよ。手遅れにならないうちに」

 「手遅れに…」

 天使が地上に降りてブライドを狙い始めたとあっては、命の危機に遭う可能性が非常に高い。生き延びてもまともな会話ができなくなる…などという事態になっては、間違いなく一生後悔するだろう。

 「そうね」

 晴はそれだけ言って、暗い青に染まる空を見上げた。



 それが夢であることは、以前の光景であることからすぐに判った。

 天使たちに叩きのめされ、訓練場の白い床に『妹』こと雪と二人で倒れ、疲れ切った体を少しずつ癒していた。訓練が終われば無味無臭の栄養食を採らされ、その後は無理やり眠らされて全身に栄養を行き渡らせる。傷の治療が終わり、3時間程度で起床。その後訓練場へ連れていかれる。これを何度も何度も繰り返した。

 食事も睡眠も充分だと天使たちは言ったが、頑健な体を作る以外に目的は無く、それも『父』と天使たちが人体の強度や精神の疲労を一切無視して行っていたため、休んでも休んでも根本的な疲れは癒えなかった。それで倒れれば天使たちに罵られ叩かれ、逆に新しい技を憶えたり天使たちの動きに対応できても、一度として褒められたことは無かった。

 自分達がいつから神の世界にいたのか、ステラは憶えていない。物心ついた時には既に、訓練と称した虐待を受けていた。それが十数年間。そのため二人とも人類の世界のことを全く知らなかった。ただ本能的に、愛されたかったことだけは判っていた。

 (―――愛されたかった。とうさまに、愛されたかっただけなのに)

 愛されたかったと、ステラも雪も思い願っていたが、一度も叶えられなかった。サフィールことアキラを殺害するための道具として育成され、完成した所でステラが、そして失敗したステラを回収するために雪が送り出された。

 愛を教えてくれたのは、地上で出会った人間たち…最初に助けてくれたアキラと緋李。姉妹を迎えてくれたアキラの祖母。ブライドの仲間達。そして誰よりも…

 夢の中で、ステラはその人の名を呼んだ。周囲は宝石の柱が並ぶ異空間に変わる。その人に抱きしめられ、あたたかな腕に包まれて、夢の中にいながら安らかに目を閉じる―――そこで目が覚めた。

 「………」

 見上げるのはいつもの天井で、隣にはスノアを抱きかかえた雪が、枕元にはシプルゥが眠っている。最近の雪は手をつながなくとも眠れるようになってきた。大墨姉妹との出会い、そして芽衣と触れ合ったことで、心が成長したのだろうとステラは思っている。

 自分はどうだろう。ステラは小さな手を胸に当てて、自分の胸の内に問いかけようとした。

 「あれ?」

 胸の中から自分の手を叩く鼓動を感じた。全力で運動したわけでもない、眠っていただけにもかかわらず、心臓が激しく脈打っていた。自らの不思議な胸の高鳴りに、ステラは呆然とする。ふと熱を感じた頬に触れると、熱い。まだ早朝で、扇風機は弱めにして電源を入れており、暑いというほど暑いわけでもない。熱が出たのかと額に触れて、頬が熱いのだから額も当然熱いのだと思いなおして手を離す。

 何もしていないのに、こうも胸が高鳴るのは初めてのことだった。否、自覚したのが初めてであって、過去にもあったかもしれない。

 (いまの夢かな…夢…)

 思い出せるのは最後、誰かに抱きしめられる場面だけだった。そしてそれを思い出した瞬間に、また胸が高鳴る…自身を抱きしめた人物の顔は…ステラが思い出そうとしていると、隣で雪が起き上がり、大きく伸びとあくびをしてステラの方を向いた。

 「おはよぉ、お姉ちゃん…」

 「おはよ、ユキ」

 「…おきるの早くない? まだ、えーと…五時半だよ」

 まだ眠っているスノアを抱きかかえたまま、雪は目をこすった。少し体を動かすと、それですっかり目を覚ましたようだ。と同時にステラの表情に気付き、雪はスノアを抱えたままステラの顔を覗き込んだ。

 「お姉ちゃん、カゼ引いた?」

 「え?」

 「お顔真っ赤だよ。ちょっとまってね…」

 雪はステラの額に手を当てると、すぐに離した。

 「やっぱり。熱だけ? セキとか、鼻ぐずぐずとかしない?」

 「え、しない…じゃなくて、カゼじゃないよ。大丈夫…」

 本当に大丈夫かと雪は疑うが、声も明瞭で咳も無い。首をかしげて雪は顔を離し、スノアを抱えたままステラと向き合って布団の上に座った。疑わし気に、かつ心配げに自身を見る妹の目に、ステラもまた首をかしげる。

 「ユキ…?」

 「…お姉ちゃん、もしかしてハルのこと考えてた?」

 「えっ、え!? は、ハルの…え?」

 雪に指摘され、ステラの顔はますます赤くなった。今にも湯気が出そうなほどだ。だが雪はからかうでもなく、あるいは先日のように嫉妬を見せるでもなく、ただ得心が行った顔でステラを見ていた。ちょうどその時、シプルゥとスノアも目を覚ました。特にシプルゥはパートナーのステラがパニックになっているのに気づき、よじよじと近づいて問い詰めた。

 「ど、どしたぷきゅ?」

 「なんでも、ないよ…なんでもない…」

 「どう見てもなんでもなくないだす。ユキちゃん、何かあっただすか?」

 「うん…ね、お姉ちゃん」

 パニックになっていたステラは真正面から雪に見つめられ、思わず姿勢を正した。その隣にはシプルゥ、向かい合った雪の膝の上にはスノアがいる。今はこの四人だけでの秘密にしようという雪の目配せに、ステラ達は内心で緊張した。そして、雪はステラに尋ねた。

 「お姉ちゃん、ハルのこと好きでしょ」

 「それは…す、好き、だよ。友達だもの」

 それは何日か前の問答と同じようでいて、ニュアンスは微妙に異なっていた。雪の口調の中には確信があるのに対し、ステラの答えにはどこかふわふわした空気が漂う。雪は首を横に振り、もう一度ステラを真正面から見た。その真剣な瞳に、秘密を言い当てられたようにステラは緊張した。

 「違うよ。お姉ちゃんの今の顔、クロエとクロハと同じ顔してる」

 「同じ…クロエ達と?」

 「この間からずっと思ってた。今ちゃんとわかった」

 雪が何を言いたいのか…ステラも大墨姉妹と関わったことから、姉妹の関係を雪に続いて知った。そして大墨姉妹がお互いを想う時の顔と同じだと、雪は言う。つまり。

 「お姉ちゃんは、ハルに恋してる」

 「恋………」

 そう言われた途端、ステラは先ほどの胸の高鳴り、その直前に見た夢―――神の世界からいつの間にか抜け出て、晴の暖かな腕に抱かれた夢を思い出した。途端にまた鼓動が速まり、顔が熱くなる。胸の中で何かが猛烈に暴れ、にもかかわらず温かく満たされる幸福感。それは神の世界にいたころ、絶対に感じることの無かった感覚だった。真っ赤になった頬に手を当て、ステラは自分の中の整理できない気持ちに、激しく戸惑った。

 ブライドの中にも恋人同士として付き合っている者達が何人かいる。そんな仲間達…大墨姉妹が、アキラと緋李が、桃とリオが互いに抱く気持ちとは、このようなものなのか。しばらくの間両手を胸に重ねたステラは、そうなのだ、と理解した。

 「メイは言ってたよ。お姉ちゃんは自分でも判らないうちに、ハルに恋してるって」

 「…うん。今ならわかる…ずっとハルのことばっかり考えてたもの」

 ステラは自らの初恋を素直に受け入れた。思い返せば初めて出会った日…アキラに連れられてハルと出会い、ふと視線が合った瞬間。恐らく晴に恋してしまったのだ。それからはずっと晴に惹かれ続け、恐怖した時には晴に縋りつき、楽しいことはできるかぎり晴に伝えて…真っ先に、晴の事ばかりを考えていた。

 シプルゥがステラの膝に寄り添う。キョトンとした表情からは、まだステラの恋を理解していないことがうかがえた。その背をステラは撫で、大丈夫と言外に伝えて安心させようとする。

 「ステラは、ハルが好き…」

 自ら声にしてステラは確認した。言葉にすることで、改めて自らの恋を実感した。



 朝食の後、ステラと雪は居間で英語の文章問題を解いていた。隣でうんうん唸る雪に対し、ステラはまだ朝のことを引きずってぼんやりしている。目の前に英語のドリルが開いているのも判っていない様子だった。祖母はそんなステラをやや心配げに見ている。いつの間にかステラと雪の間に座っていたトラ猫が、ステラの足の裏をつついた。

 「フニ~」

 「……」

 柔らかな毛と肉球に包まれた手で触れても、ステラはわずかな反応も見せなかった。手元の鉛筆も動いていない。どうしたものかとため息を吐き、祖母は手に持っていた教科書をちゃぶ台に置いた。

 この日は平日だが、一昨日大通りに隕石の落下して周辺が破損したことをうけ、どこの学校も会社も臨時で休校あるいは休業となっている。そのせいか、静かな住宅街には言い知れぬ緊張感が漂っていた。トラ猫も張り詰めた空気から逃れるべくここに来たらしい。いつも通りなのは、せいぜいここで勉強する二人くらいだ。トラ猫はステラの膝に上がり、もふっとちゃぶ台の上に顔を出した。

 「フニ~」

 「あ、ねこちゃん…」

 ステラはやっとトラ猫の存在に気付き、膝に乗った猫を胸に抱いた。そして、その隣では雪がついにギブアップしてちゃぶ台に突っ伏した。

 「んー…もうダメ。全然アタマに入ってこない。エーゴむずかしい!」

 「そうね。じゃあ、今日の分は終わりにしましょうか」

 祖母の言葉に雪は全く手を付けていないドリルを閉じて、立ち上がると台所に向かった。

 「お茶いれてくる!」

 「おねがいね」

 少し前に冷たいお茶の淹れ方を祖母に教わってから、雪は試行錯誤を重ねて今ではちゃんと飲めるお茶を出せるようになっていた。どうやら筋が良いらしい。祖母はちゃぶ台の横に座り、リモコンでテレビの電源をいれた。朝のワイドショーでは、相変わらず先日の隕石災害のニュースが流れている。停電、断水、火事、ビルの倒壊…などの言葉がステラの耳にも入ってきた。ステラはトラ猫を抱えたまま、祖母と並んでワイドショーを見ていた。

 「アキちゃんのおうちの近くなのよね…あの子達、ケガも無しに済んで本当に良かったわ」

 「そう、だね…」

 「フニ~」

 そのアキラが先頭に立って隕石ならぬ天使と闘った…否、今現在闘いの真っ最中であることは、祖母には知らせていない。聞いたら間違いなく腰を抜かすだろう。

 画面に映るのはこの街の大通りの惨状であった。祖母やブライドの仲間達に連れられてよく出かける場所が、今では近寄るのもままならないほどに破壊されていた。祖母が心配するのもやむを得ない。

 ふと、祖母がステラの方を振り向いた。

 「ステラちゃん。朝からずっと考え事してたでしょう?」

 「っ……」

 祖母には見抜かれていた。答えに窮し、ステラはトラ猫を抱えたままうつむいた。叱りもせず促しもせず、祖母は優しい目でステラを見ている。

 「……うん」

 「そっか…あなたも考え事をするようになったのね」

 「へ?」

 祖母はステラに向き合う形で座りなおした。丁度その頃、冷たいお茶を淹れた雪が人数分の湯飲みとトラ猫用の皿をお盆に乗せて持ってきた。ちゃぶ台に湯飲みを三つ、床に皿を置いて水を注ぐと、トラ猫がステラの腕から抜け出て水を飲み始めた。祖母は一口お茶を飲み、あら美味しいと言って雪を褒める。祖母の分は胃腸に負担がかからないようぬるめにしてあった。

 「もうすぐうちに来てから二か月になるかしら。最初に来た頃はステラちゃんは世間の事を何も知らないし、雪ちゃんは甘えん坊だったし…ひどい環境にいて、心が年齢通りに育ってないのがすぐに判ったわ」

 二人に出会ってからはわずかな期間しか経っていないが、祖母は懐かしい光景を思い出すかのように話す。

 「考え事っていうのは、物事に対して『自分が』どうしたいか、どうしたらいいかを考えるっていうことだと思うの。それを考えられるくらいに、二人の心は育ったのよ」

 「心が…」

 「そう。雪ちゃんが、黒絵ちゃん黒羽ちゃんの恋を素敵と思ったように。素敵だと思う心が育ったように」

 祖母の話と先日の雪の事を頭の中で合わせて、なるほどとステラは納得した。雪は、大墨姉妹の恋を美しいと思う『自分』が存在するのだ。かつては大任と父の愛を姉に奪われたと、嫉妬に狂いステラを逆恨みしていた雪が。成長したとは思っていたが、成長するだけの心を、自分自身を、雪は取り戻したのだ。

 ならば、自分は? ステラは自問した。望みは、願いは、美しいと思うものは。『自分は』なにを愛するのだろうか。真っ先に思い浮かんだのはアキラ達ブライドの仲間と精霊達、そして目の前にいるアキラの祖母…自分の心を再生させてくれた人たち。そしてほんの数時間前に知った、晴への恋だった。

 「うちに来て色々なことをして、たくさんのお友達ができて、ステキだ、嬉しいって思って。二人の心がいっぱい大きくなっていったんだわ」

 「うん。おばあちゃんのことも、大好きだよ」

 「あたしも!」

 「嬉しいわ。やっぱり二人が来てくれて、本当に良かった」

 アキラ達も祖母も、このように二人の存在を手放しで受け止めてくれる。だからこそ心が育ったのだと、皆が育ててくれたのだと、ステラは思う。そしてそれを感謝の言葉にしようとするが、うまく頭の中で整理ができない。気持ちを言葉にして伝えるのは、語彙とはまた別に技能が必要なのかもしれない。

 アキラに願いを叶えてほしいのとは別に、すべてが終わってから、もっとたくさんの事を学びたい、たくさんの事を教わりたい…ステラも雪も、大切な人達と触れ合うのに、自分達には様々なものが足りないことを自覚していた。

 (…お話しの仕方を勉強したら、ハルとちゃんとお話しできるかな)

 言いたいことを一方的に押し付けるだけでなく、晴の言葉も聞きたかった。

 (ハルと、お話ししたい)

 生まれて初めて感じる、強烈な欲求だった。生存や肉体の機能を維持するための本能とは全く異なる、ステラ自身の心から生まれた恋と願いだった。この戦いが終わったら…と言い出したら失敗するなどと菫から聞いてはいたが、思わずにはいられない。全て終わったら、言葉や社会の事をたくさん勉強して、晴とたくさん話したいと、ステラは願った。



―――〔続く〕―――

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