第二十五話
ゴブリンがどこから現れたのか探していくと、大岩で巧妙に隠された道があった。
既にゴブリンたちにこちらの存在を気付かれているので、松明を捨て魔法で光の玉を生み出すことで周囲を照らしながら先に進む。
そして進むにつれて周囲に立ち込める異臭がキツくなるので顔を歪めていると、パキッという音をさせながら骨を砕いてしまう。
「これは…………動物の骨か」
大きさから動物の骨であると確かめられたのでとりあえずは安堵する。
ゴブリンの群れは大きくなると人を襲うようになるので、やはりここにはそこまで強いゴブリンはいないのかもしれない。
「しかし……」
もっとゴブリンに遭遇すると思っていたのだが、ゴブリンがいた形跡があるのみで姿が見えない。
単にケインたちの方に向かっただけであれば良いのだが、そうでないならば話が変わってくる。
既に洞窟の外に出たのかあるいは──。
「えっ!? レックス様!!」
「って、ディア!?」
暗闇の中からディアが、ナイフを振るいながら飛び出してきたので受け止める。
「なんで一人……ってああ、そういうことか」
血にまみれな姿とその手に持つナイフで、なぜディアが一人でいるのか納得がいった。
たしかにこの状態のディアをケインたちだけで止めるのは難しいだろう。
「ほらディア、これで体についた血を拭け!」
強引に顔についている血を拭いディアを落ち着かせ、平常心を取り戻させた。
そして体に残った血は自分で拭かせる。
「……すみません」
「謝るなら俺にではなくケインたちにだ。その前にこれを飲んでおけ」
落ち着いてきたディアに回復用のポーションを手渡す。
ディアはバーサーク状態になると、まわりを気にしないどころか己が傷付くことすら気にせず無茶をして戦うので、今回も少なくない傷を負っている。
まだまだ戦闘は残っているので、こんなところで傷付いて戦えなくなっては問題だ。
そしてしばらく待っていると、ヘトヘトになりながらケインたちが追いついてきた。
「レックス様!」
「ああ、無事かコンフラット。それにケインたちも」
「ええ、なんとか。そこの馬鹿が我を失うから酷い目に会いましたよ……」
話を聞くとディアがバーサーク状態になり先行していったのだが、討ち漏らされたゴブリンと何度か戦闘になったそうだ。
しかし負担の重くなったリアーナの弓矢がなくなったことで戦闘のバランスが崩れ、苦戦しながらなんとかここまで辿り着いたらし。
「そうか……だがコンフラットはどんな状況でも上手く立ち回れるようにならないと駄目だぞ」
「すみません……」
「まぁお前たちもこれを飲んでおけ、本番はここからだからな」
言いたいことはまだあるが、とりあえず全員にポーションを手渡す。
その値段を知るコンフラットは一瞬止まるが、ケインたちが気にも止めず飲むのを見て、ようやく自分も飲み出す。
値段のことを言ったらケインたちが気にするであろうことを理解してくれたのだろう。
そして落ち着いた所で、ディアに指示を出す。
「ディアは残っている矢をリアーナに渡してくれ。あとここからはナイフは使うなよ」
「はい……」
どうせなら取り上げておきたいが、不足の事態が起こらないとは限らないのでやめておく。
「あと、ケインとゴルドフの剣を浄化して加護も加えておいてくれ。レイナも今後は出来るようになって貰いたいから、しっかりと見ておくように」
「はい!」
大楯を使うゴルドフだが、盾の裏に隠してある剣でも戦う。
それを使うということはよほど状態だが、接近してきたゴブリンに慌てたのかもしれない。
そしてレイナも浄化は出来るみたいだが加護は特別に難しいので、ディアに教わることも多いだろう。
「あと、みんなに話しておかなくてはいけないことがある……」
コンフラットの説明を聞くに、そこまで多くのゴブリンを倒してはいないことが分かった。
ということは悪い予感が的中してしまう可能性がある。
そうなってしまった場合はケインたちもそうだが、ディアとコンフラットの心構えが出来ていなければ思わぬ被害が出てしまうかもしれない。
こうして洞窟の最深部に向かう前にこれから起こりうる可能性、魔物の進化について話すのであった。




