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愛鴨  作者: 山本 宙
9章 どうぞ召し上がれ
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64話 鎖が取れた心美

「私の名前は林原心美です。よろしくお願いします」


長机に肘をついている男二人。

その男に向かって挨拶をする心美がいた。


「はい、どうぞ座って」


「失礼します」


心美がゆっくりと腰かけた。


部屋の中は静まりかえっている。

男の二人は心美に注目する。

丸坊主でスーツ姿の男が口を開いた。


「林原心美さんね。残りの借金を返済に来たとのことですが・・・用意はしてきたのですか?」


「はい、遅くなり申し訳ございませんでした」


「父の借金だ。仕方ないと思うよ。同情したいところだったんだが、こちらも仕事ですからね」


「滞納を許していただいただけでもありがたいです。残りの200万はこちらです」


心美はカバンの中から200万円を取り出した。


「たいしたもんだ。どれだけ働いたんだね。身体を壊していないかね」


男が驚いた表情で心美に問いかける。

それもそのはず。

あれだけの借金を背負っていたのにもかかわらず、きちんと返済に来たのだから・・・。


「時には、身体を壊してしまったこともありました。だけど、人から借りたお金はすぐに返さないといけないと思ってとにかく働いたんです」


「親父さんを恨んでいないかね?」


「はい」


男二人は顔を見合わせた。何かしらのアイコンタクトを取り、丸坊主の男が話し出す。


「君の親父さんもまた肩代わりをして借金を背負っていた。そしてその借金は何の罪もない君のところにふりかかったのだ。それでもよく返済してくれたね。本当に大したもんだ」


「ありがとうございます」


褒められても正直、心美は嬉しいと思わなかった。お金を返したのだから、早くこの場を立ち去りたいと願う。


「林原の娘さん、あなたの親父さんには実はお世話になっていたんだよ。親父さんを亡くして本当に残念でならない。借金のことはあったが、人として彼を尊敬していた。あなたも同じ血が通う娘さんだ。どうか親父さんを恨まないでやってほしい」


心美はうつむいて震えを押さえていた。

心美の震えは苛立ちからなのか、それとも悲しみからなのか。


「林原さん、どうかその200万円はカバンに戻してください。それは私の気持ちです」


「えっ!?」


「いいんだ。君は本当によく頑張った。もう借金は完済でよい。君にはお手上げだよ。残りの200万円はどうってことない。こちらで何とかするから」



「あ・・・ありがとうございます」



「私にできることはこれくらいだよ。それじゃあ、退室してください」



心美はゆっくり立ち上がって一礼した。

「失礼します」



心美は父の生活を知らない。

心美は金融会社の罠ではないかと疑う。

しかし、退室後すぐに面接相手の丸坊主の男が話しかけに来た。


「私は君の親父さんに10年以上世話をしてもらっていたんだよ。私の気持ちとしては200万円じゃまだ感謝しきれないくらいだ。とにかく、完済おめでとう」



心美は足元から鎖が外れたような感覚だった。

借金完済を拓斗に報告する。


「拓斗、今まで協力してくれてありがとう。今日で無事に父の借金は完済できました」

涙ながらに電話で話した。


「よかったね、うちに帰ったらゆっくりと休むといいよ。ごはん用意しておくからね」


心美と拓斗の関係も良好。

Love Duckで誕生したカップルは順調のようだ。

はたして結婚までしたヒデも相手と順風満帆なのだろうか。


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