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愛鴨  作者: 山本 宙
7章 折り箱
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51話 出所した謎の男

 ヘイヘイとお別れしてから月日は流れ、ある出来事が起きる。

それは、亜子と藍野に大きく関わってくる問題と言えよう。


その出来事は一つの刑務所から始まる・・・。


「もう、戻ってくるんじゃないぞ」

刑務官が一人の男を刑務所の外まで見送った。

外は快晴で、出所してきた男は晴天な空を見渡して大きく頷いた。


頷いていた矢先、表情がこわばる。

そして男は怒りをあらわにした!


「くそ!誰も迎えが来ていないやないか!どうせ俺は見捨てられた男や!」


男はどうやら関西弁で大きな声を発した。

やせ細った男はゆっくりと歩きだす。

突然大声を出すものだから、刑務官は警戒をしつつ見えなくなるまで男を見送る。

「あいつ大丈夫か・・・」



心配をする刑務官を背に、男は一歩一歩を時間かけて歩いていき、ひたすら途方もなく歩みを進めていく。




男が向かった先はLove Duckだった。偶然たどり着いた様子はなく、寄り道もせず一直線に向かったのだ。男は当然のことのように、出所した時の荷物などほとんど持っていなかった。


そして男は憔悴しきった身体を思いっきり使って扉を開ける。

どうしてこれほど身体がやせ細ってしまったのかと思えるほど

力も出せない身体になっていた。


ようやく扉を開け切ってから、奥の厨房で料理の仕込みをする店長に話しかけた。


「よう、店長!久しぶりやなぁ」


「その声は・・・池神大介・・・」


店長の顔は恐ろしい何かを見るような顔だった。


「店長さん、何か化け物みたいに俺を見てないか?失礼やぞ」


睨みながら池神は訴える。

店長は我に返って表情が落ち着いた。

しかし首筋からは汗が流れて洋服に染み付くのであった。


「いや・・・今日が出所の日だったんだな・・・」


「そうや!誰も面会にけーへん。ずっと一人で寂しかったわ。それに出所の今日は迎えもなく、一人でのうのうと歩いてここに来たんや」


「そうか・・・」


あまり聞く耳を持たない店長は、池神に身体の正面を向けたまま、仁王立ちする。

どうやら何かを警戒する様子がずっと続いている。

それに勘づいた池神は店長に訴えかける。


「だから化け物を見るような眼をするな!おっちゃん、俺はいくらなんでも出所してきてすぐに罪を犯すような真似はしやへんぞ」


「あぁ・・・突然だったからつい・・・。気を悪くさせて済まないな」


池神は呆れた顔で店長の姿を眺める。


「あいかわらず変わってないな。店長・・・」


そう言ってから池神は一呼吸おいて、店長に聞いた。


「なぁ、亜子はどうした?」


出所してきた男の池神が何をもって亜子に会おうとしているのか、

それは店長にとってわかりきっていたことだった。


そして店長は重い口を開いて、池神に答える・・・。


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