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愛鴨  作者: 山本 宙
7章 折り箱
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52話 池神大介

 「池神くん、私は君が出所してきて本当に良かったと思っている。それはもう一度人生をやり直せる機会がやってきたことを祝福したいから・・・。そして池神くんには謝っておかなければならない」


店長がそう言って頭を深々と下げた。


「いや、店長さん。いいんや。あの頃の出来事は誰もが予想付かなかったことや。俺に謝る必要は全く無いんや」


池神は店長に頭を上げるよう説得する。


「こんなところを亜子に見られたらどうする?そんな店長が謝る姿って、誰も求めていないに決まっているんやぞ」


店長が我に返ってゆっくりと頭をあげた。


「それにしても店長さん、Love Duckの雰囲気はえらい変わりましたね」


「そうなんだよ。もうお酒をもてなすバーではなくて、合鴨料理店で看板を立てているんだよ」


「ふーん。そうなんや」



池神は昔と比べて随分と変わったLove Duckの店内を眺めて安らいでいた。


「何か料理を出すよ。まだ開店時間でもないから、客は来ないしね」



「そんな悪いで。お金持ってへんよ?」


「構わない。さぁゆっくりしていってくれ」


店長はそう言って厨房に戻っていった。

厨房からはフライパンで何かを焼く音や、包丁で何かを切る音が聴こえてくる。

その音を聴きながら池神は椅子に座って身体を休めていた。


すると、しばらくしてから亜子が店内に入ってきた。

池神の姿を見た瞬間に大声で叫ぶ。


「池神さん!!元気でしたか!?」


亜子は満面の笑みで嬉しそうだった。

店長とは打って変わって、出所してきたことが嬉しそうに思える反応だった。


「なんや、亜子は見た目何も変わってないな。それに俺の顔が見れて嬉しいか?」


「当り前じゃないですか!池神さんには救われたのですから!」


店長も亜子も池神大介に救われたと声をそろえるように話す。

池神大介とはいったい何者か。


「救われたって言うけどもやなー、俺は罪を犯した人間やで。あんまり良い人間と違うんや」


池神は自分の過去に対してかなり否定的だった・・・。

確かに社会からすれば罪人となれば、とても善人にあたいする立場ではない。


「だけど池神さんがいなかったらLove Duckは潰れていましたわ。それはヘイヘイさんも思っていたはずよ」


過去を振り返りながら亜子が喋る。どうやら池神大介という男はLove Duckの店の経営存続に大きく関わっていたのだろう。


「そういえばヘイヘイ見てないなぁ。元気にしとるんか?」


当然ながら店の経営者となっていたヘイヘイにも、池神は縁がある。


「実はヘイヘイさん帰国しましたの・・・」


「そうやったんか・・・。それはこれから大変になってくるな」


池神は今後のLove Duckが極めて深刻になってくると予感する。

その予感は果たして的中してしまうのか・・・。


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