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愛鴨  作者: 山本 宙
6章 Next Stage
46/70

46話 同棲 section7 相談はもう要らない

 グオンー、グオンー、

洗濯機の回る音が廊下に響き渡る。

藍野は洗濯機の前に立って一冊の本を読んでいた。


ながら作業はお手の物で、一人暮らしの経験を積んでいたら癖になってしまいがちだ。


「もう洗濯機回しているの?」

部屋の扉越しに亜子が大きな声を出している。


「あぁ、回しているよー」


「私の下着、ネットに入れないと!」


亜子が廊下を駆け足でくる。

飛び込むように洗濯機の前にきて、洗濯機の停止ボタンを押した。


「あっ」


下着をネットに入れている。

最初に下着を見た時は興奮したものだが、

もう慣れてしまっている自分がいた。


「ごめんね、こうしないと他の服に傷がついてしまうから」

「言ってくれれば僕がやるのに」


変なところに気を遣うのは、まだ同棲に慣れていないからか。


「洗濯担当の亮介さん」

「何ですか」


「よろしくお願いします」

そう言って亜子が一礼した。

「何を今更あらたまっているのだ」

その言葉を聞いて亜子が藍野の頬をつねった。

そうしてまた部屋に戻っていった。


おかしなやり取りは二人の特徴的なコミュニケーションだ。



「もう同棲してから3か月か・・・」



二人の生活は落ち着いてきた様子で、

部屋の風景も最初の時と一変してお互いの物が置かれるようになった。


今日はヒデと食事の約束だ。

それは亜子も知っている。なぜなら食事をする場所はLove Duckなのだから。


「今日は久しぶりのヒデさんと食事だね!」


「まぁ、しばらく会っていなかったから」


ヒデの言葉をたまに思い出すことがある。

それは「何かあったら相談しろよ」との言葉だ。


あいにく同棲はうまくいっていて相談する必要もないのだ。

それでも友人を親しむ気持ちは藍野とヒデにはある。


それだからこそ、一緒に食事ができるのだろう。


「それにしても、いつもLove Duckだけどいいの?」

「えっ?」

亜子からの突然の問いかけ。


「だっていつも同じ店じゃないの。たまにはほかの店もいいと私は思うけど」


藍野は亜子の頭にポンと手を乗せた。

「僕もヒデもあの店が大好きなんだよ」


今晩は店の店長の合鴨料理を食べる日となる。

それを楽しみだと言ってしまうと、亜子はやきもちを焼いてしまうかもしれない。

だからそんなセリフはあえて言わない。


なんだろう・・・。

ヒデの質問を予想するかのように、藍野の頭によぎる。

恋愛相談に今まで乗ってくれていた友人だ。

きっと同棲についてだろう・・・。


なんでも隠さず話せそうな気がするし、

相談という名目でやり取りするような必要もなさそうだ。


「なんだか相談も必要ない気がする。僕はもう、Next Stageに立っているのかな」


変な自信は禁物だが、もっと違った話ができそうだとヒデに会うのが楽しみでならない。


洗濯物を干す藍野は外を眺めた。

雲一つない青空が広がっていた。


(本当に気持ちのいい天気だな)


そう思いながら爽快な顔で担当の家事をこなす藍野だった。


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