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愛鴨  作者: 山本 宙
7章 折り箱
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47話 さよならを言うために

外は暗くなりかけていた。

家でのんびりした後、藍野はLove Duckに足を運ぶ。すでにヒデが座って待っていた。

見渡すと女性も一緒に座っていた。


「誰だろう・・・」


藍野が近づいて挨拶をした。

「こんばんは!久しぶりだな、ヒデ!」


「藍野、久しぶり」

「久しぶりね。藍野くん」


ヒデの横に座っていたのは美姫だった。


「美姫じゃないか!どうしたんだ!?」


「美姫から藍野に話があるからって、それで一緒にここに来たんだ」

「話?」


真剣な面持ちで美姫が口を開いた。

「藍野くん、彼女ができたのですって?」

「そうだよ」


色々とヒデから聞いたようだ。


「藍野くんはヘイヘイさんの事覚えているかしら」


「もちろん・・・」


ヘイヘイ・・・

街コンで知り合った女性。

一緒に郡上八幡に行った女性。


「私は藍野くんの恋愛に対して反対しているわけではないわ。もちろん今の彼女と幸せになってもらいたいと思っているの」


美姫には世話になった。

それはあの時、ヘイヘイにサプライズとして会ってくれたことは感謝している。

しかし、ヘイヘイと藍野は付き合うことなく連絡も滞っていた。


それから、日は経っていなかったが、亜子と付き合うことになった。

その報告は美姫に一切していなかった。


「ヘイヘイさんと連絡とっていないわよね?」


「ずっと・・・とっていないよ」


藍野はそう言ってゆっくりと椅子に腰かけた。

次の美姫の言葉に耳を傾ける。

いったいどんな話をしに来たのだろう。

気になってしまう自分がいた。


「私、実はヘイヘイさんと連絡取り合っていたの」


「えっ!?」


その告白に藍野は驚いた。

ずっと仲良くしていたのは藍野で、まさか一度しかあったことがない美姫が連絡を取り合っていたなんて初耳だ。


「細かい話はしないつもりよ。ヘイヘイさんは藍野くんのことが好きだった。でもね、彼女はもう諦めたのよ」


「諦めた?」


「もう、あなたと付き合うことを諦めたの」


ヘイヘイに恋心があったなんて、それも全く感じなかった。

いまさら聞いてどうしようもない。


「でも、そんなことはどうでもいいの。あれだけヘイヘイさんに仲良くしていた藍野さんにしかできないことをお願いしたいの」


「お願い?」


もう連絡を取らなくなってから随分と経っているのに何をお願いするのか。


「お見送りよ」


「お見送り・・・?」


ヒデは関心をしながら二人の話を聞いていた。


「ヘイヘイさんは来週に中国の武漢市に帰るって言っていたわ。だからお見送りをしてあげたいの。ただ、ファンである私にお見送りされるのも嬉しいかもしれないけど、藍野くんにお見送りされるのが彼女にとって何よりの喜びだと思うのよ」


美姫が言っていることに理解を示す藍野。

今まで全く知らなかった事情をようやく理解できた気がした。


「ヘイヘイにとって日本一の親友はあなたなのよ。藍野くん」


その言葉を聞いて突然藍野の目から涙が流れた。

思いもしない言葉に動揺してしまったのか、

急いでおしぼりで目を拭く。


「一緒に見送ってくれるわね」


「あぁ、もちろんだ」


すると厨房から亜子が出てきた。


「亮介、行ってきて。後悔が無いように・・・」

「亜子、聞いていたのか」

当然、Love Duckで話していたのだから、亜子の耳に入ってしまっても仕方がない。


でも付き合った当初を亜子は今でも鮮明に覚えている。

突然の告白にも藍野は承諾した。

突然の同棲のお願いも承諾した。



お別れくらい言わせて、

お見送りをしてあげてほしいと

素直にそう思える亜子がいた。


「お見送りだけ、言ってくるよ。親友のヘイヘイに・・・」


毎日が仕事まみれのヘイヘイにとって心の支えだった藍野の存在。

連絡が無くなってからは、また辛い日々だったのかもしれない。


とにかく空港で別れを言おうと藍野は決意した。


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