シャングリラはそこに 1
「……先ほどは、申し訳ありませんでした。」
ジランくんは失言を猛省していた。
あまりにも落ち込んでいる姿がかわいくて……私は苦笑してみせた。
「私に謝らなくてもいいよ?まあ、ヘイー先生はびっくりしてたけど。……いや、私もびっくりしたけどさ。……タイミングよくブンザくんが来てくれて、話が途切れて、助かったね。」
「はい。……フィズさまとヘイー先生が、仲良くて……なんだかとてもお似合いに見えて……つい、カッとなってしまいました。本当に、ごめんなさい。」
……お似合い?
私が?
白髪のヘイー先生と?
「うーん……ものすごく微妙な気分。てか、ヘイー先生、見た目より若いって言ってたけど……それでも私よりかなり上でしょう?」
それとも私も苦労して、老けたのかしら、
ジランくんは、こっくりとうなずいた。
「はい。そのはずです。……でも、年齢差の問題じゃなくて……何か、しっくりというか……。いや!そうじゃなくて!!」
突然いきり立って、ジランくんは私に尋ねた。
「フィズさま、伯父上をどう思われますか?すこぶる真面目で誠実なかたです!本気で、伯父上とのご結婚を、考えてみてくださいませんか?」
……えー……と……。
そんなこと急に言われても……困ったな……。
「あの、宰相閣下がどのようにお考えかは存じませんが……私は、そんな、真面目で誠実な宰相閣下にはふさわしくないと思いますよ?……これでも私、バツイチで、タルゴーヴィに子供もいますし……ものすごく不本意ではありますが、皇帝陛下と関係した過去もございますし……。」
まだ大人になってない男の子に言うのはかなり抵抗感があったけれど、敢えて包み隠さず言った。
ジランくんの頬に赤みが差した。
「いや。それは……皇帝陛下の横暴は、うかがってます。伯父上は、そのことに対しても責任を感じておられます。……タルゴーヴィ大公さまから、フィズさまの再婚相手候補のご相談を受けてらしたのに、自分がもっと早く動くべきであった、と……ご自分を責めてらっしゃいます。」
「……まあ……そうでしたか……。」
なるほど。
それで、宰相は動き出したのか……。
でもさ。
宰相が責任感で、私を引き受けるとは思えないのよね。
確かに、嫌われちゃいないようだけど……恋されてもいないし……。
むしろこのジランくんのほうがよほど熱っぽい目で観てくれてるわ。
……さすがにジランくんと、どうこうなるとかはないだろうけど。




