噂のエル・ドラド 17
宰相ティガとジランくんを見送ると、シーシアさまは自室に籠もられてしまわれた。
浮かれていた私も、しばらくすると、だんだん不安になってしまった。
はしゃぎすぎて、シーシアさまの御不興を買ってしまったのだろうか。
翌日、おそるおそるシーシアさまをお訪ねした。
シーシアさまは、穏やかに迎えてくださった。
「あの……昨日は、大変失礼いたしました。目に余る無礼だったと反省しています。」
小さくなってそう謝罪すると、シーシアさまは首を横に振った。
「いいえ。フィズ。あなたがかつてのように快活になって、わたくし、とてもうれしかったわ。……ティガもジランも、すぐに打ち解けて……。」
……まったく嬉しそうなお顔をせずに、シーシアさまはそうおっしゃった。
「申し訳ありません。馴れ馴れしすぎました。」
慌ててそう謝ったけど、シーシアさまは淡々とおっしゃった。
「ジランは昨年、母を亡くしました。まだ甘えたい年頃でしょうに……父代わりのティガも忙しいし、……フィズとお話しできて、うれしかったと思いますよ。ありがとう。……これからも、仲良くしてあげてください。」
おっしゃっている言葉はお優しいのに……声と表情はやはり頑なさを感じた。
釈然としないけれど、これ以上お伺いしても私の望む回答は得られそうにない。
「……では、明日、本当に図書館へ行かせていただいてよろしいでしょうか。」
一応念の為にそう確認した。
シーシアさまのお顔が少し歪んだ。
「わたくしに引き留める権利はありませんよ。……忙しいティガが、わざわざ送迎してくださるそうですから、楽しんでらしてください。」
……怖い。
めっちゃ、怖い。
言われなくても、伝わってくる……。
これは、嫉妬だ。
シーシアさまが望んでもなかなか逢いに来てくださらない宰相が、私とジランくんのためにはあっさり時間を取ったことに……めっちゃ怒ってらっしゃる気がする……。
でも、怒りの対象は、私じゃないみたい。
私を素通りして、宰相への想いが炸裂してらっしゃる……。
「……ありがとうございます。」
それ以上何も申し上げることはできない。
私は、多くを語らず、シーシアさまのもとを辞去した。
***
翌朝、けっこう早くに宰相とジランくんがやって来た。
びっくりしたけれど、ジランくんのキラキラした瞳を見たら理由はすぐにわかった。
思った以上に、ジランくんは楽しみにしていたらしい。
「フィズさまは、どのようなご本がお好きですか?」
馬車に乗るなりジランくんは前のめりで聞いてきた。




