噂のエル・ドラド 2
……無理があるな。
失ったものが大きすぎる。
ジョージオさまもに対する未練は、いいかげん捨てなきゃいけないけれど……かわいいリョーシャのことは……とてもラッキーなんて思えないよ。
「……とにかく、明日、宮殿に行くことになったから。準備なさい。」
「準備って……別に、そのまま後宮に住むわけじゃないんでしょ?明日は、皇孫にお逢いするだけなのよね?」
暢気にそう言ったら、父は顔をしかめた。
「それは甘いと思うぞ。もし気に入っていただけたら、そのまま後宮に留まることになると覚悟をしていたほうがいい。……必要なものを纏めておきなさい。」
……と言われても……着替えぐらいしか……。
タルゴーヴィから送られてきた家財道具一式をそのまま持っていくわけにもいかないだろう。
「何だかフィズのお仕度は、いつも急ね。大変大変。」
継母がバタバタ走り回っているのを、私は遠巻きに眺めていた。
***
翌日、本当に私はインペラータの中枢カピトーリの宮殿に上がった。
後宮で赤ちゃんに会うだけだと思っていたのに……いきなり皇帝と皇后さま、皇太子さまと皇太子妃さまがお揃いで私を迎えてくださった。
……えーと……この状況って……。
てっきり、私、皇孫って言っても……外孫とか、庶子の乳母だと思っていた。
けど、聞けば直系の皇孫さま。
つまり次の皇太子。
次の次の皇帝。
……私、いずれは皇帝になられることが決まっている赤ちゃんの乳母になるの!?
マジか……。
驚いたし、恐れ多いことだとは思ったけれど……皇帝ご一家皆々様に妙に気に入られてしまったらしく……とても断れる空気ではなかった。
それに、初めて対面した皇孫さまの愛らしさに、胸がつまった。
手放した私のリョーシャより半年早くお生まれになった皇孫さまは、ニコニコとよく笑う赤ちゃんで……行き場を失った私の母性をがっちりと捕まえた。
つまりひと目で私は皇孫さまにメロメロになってしまった。
結局、父の言っていた通り、私はそのまま後宮に部屋を与えられた。
しかし自室に戻ることはほとんどなかった。
乳母って、お食事の時だけ皇孫さまのお側に上がるんじゃないのね。
ずーっと皇孫さまのお側につきっきりなのね。
子守というか、子育てというか……完全に母親代わりなんだ。
知らなかったわ。
……そういうことなら、子育ての経験のある女性のほうがよかったんじゃないだろうか。
自分の子を育てたことのない私には、皇孫さまの一挙一動が新鮮だった。
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