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エデンは遠くなりにけり 16

「禁治産者って……あの……どういうことでしょう?」


難しい言葉に面食らう継母に、父が簡単に説明した。


「つまり判断力が欠如してるという理由で、財産を持つことも、参政権も……おそらく今後の婚姻も認められない存在になるということだ。……大公さまは、恐ろしい御方だが……それだけ、フィズのことを評価してくださっていたのだろうね。ありがたいやら、申し訳ないやら……」

「社会的地位を全て剥奪されてしまうおつもりなのかしら。……そこまでしなくてもいいのに……。」


さすがに気の毒な気がした。


でも、大公さまは、本当に恐ろしい御方だった……。



***


臨月に入った。


ご公務でカピトーリに来られた大公さまは、馬車に積みきれないほどのお土産を持って我が家に寄られた。

久し振りにお会いしたら、何故か涙がこみ上げた。


「大公さま……。」

「……義父ちちとは、もう呼んでくれないのかね?」


大公さまが悲しそうにおっしゃった。

返答に窮していると、父が代わりに頭を下げた。


「申し訳ありません。……娘とよくよく相談いたしましたが、やはり、ご子息さまのお気持ちを確認させていただきまして、このままご縁をお切りいただきたく思っております。……大公さまのお心遣いは大変ありがたいのですが、これ以上あいまいなまま婚姻関係を継続することは、お互いにとってよくないかと思います。」


大公さまは天を仰ぎ、ため息をつかれた。


「……アレのことは諦めました。今後、他人様ひとさまに迷惑をかけないように、私の邸宅で蟄居させております。……しかし、キトリ……私は、実の息子より、貴女を尊重しなければいけないし、もっと言えば、貴女の血を引くジョージオの子に強く期待をしている。……そこで提案なのだが……真剣に考えてくれないかね?」


……提案?

ドキドキしてきた。


大公さまにじっと見られて、渋々頷いた。

ようやく大公さまは微笑んで、その提案を口にされた。


「まず前提として、ジョージオからは社会的地位も身分も剥奪する予定だ。……離婚なさい。貴女はキトリからフィズにお戻りなさい。そして、もっとちゃんとした男と再婚して、幸せになっていただきたい。そのための協力は、惜しみません。……私の養子になりなさい。」

「大変ありがたいお申し出とは存じますが、お断りさせてください。」


もちろん大公さまに対しては、何の文句もない。

しかし、養子にって……今さら、そんな……。


ハッキリきっぱり断わった私に、大公さまは苦笑なさった。


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