アルカディアの誘い 10
★部分を削除改定しました。
完全ver.はムーンライトにて。
1年が過ぎた。
愛欲にまみれた爛れた生活に、……正直、飽きた。
読書もしたいし、街歩きもしたい。
神宮にも行きたいし、勉強もしたい。
「そもそも、身体に良くないと思うんです。やはり、人間、規則正しい生活を送らないと、健康が崩れると思うんです。……こんなことでは、赤ちゃんも授からないと思いません?」
だいぶ打ち解けた主治医にそう言ってみた。
主治医は、控えめに頷いた。
「確かに体内時計を整える必要はございましょう。」
「ですよね?ですよね?ね?ジョージオさま。」
「……。」
返事をしないジョージオさまに気遣って、主治医はそれ以上何も言わずに帰ってしまった。
「ふわぁ……。夕べも遅かったのに、キトリは元気ですね。私は、もう、目がしょぼしょぼしていますよ。さ。ご一緒に、お昼寝いたしましょう。」
いそいそと、ジョージオさまがベッドに入って来た。
仕方なく、私は読もうと思っていた本を諦めた。
★
私は、そうっと本に手を伸ばした。
ジョージオさまを起こさないように、本を読みふける。
最近覚えたこの楽しみを、ジョージオさまはあまり快く思ってらっしゃらない。
……どうやら、ジョージオさまは、本も、勉強も、お好きではないらしい。
知らないことを知るのって、すごく楽しいことなのになあ……。
美しく青白いお顔をしげしげ眺める。
……太陽光をほとんど浴びられることもないから、しみ一つない綺麗なお顔。
授かるなら、この麗しいお顔そのままのあかちゃんが欲しいなあ。
「キトリ?眠らないのですか?」
不意に、ジョージオさまが目を開けた。
緑の瞳を覗き込むと、微笑んでくださった。
……この笑顔に、弱いのよね。
私は、再び本を閉じてジョージオさまの腕に頬をすりつけた。
「キトリ?」
「本を読みたかったのですが、明日にします。」
「……あなたは、本当に……本がお好きなのですね。」
苦笑まじりだけど、ちょっと責められたみたい。
しゅんとしたら、ジョージオさまの瞳が優しさを帯びた。
「明日は、どうかな?」
「……何か、あるんですか?」
出かける予定があるとは聞いてないのだが……。
「はて。あるかもしれませんし、ないかもしれません。」
ジョージオさまは少しイケズな言い方をした。
「なんですの?教えてくださいな。」
少し起き上がってそう尋ねたら、ジョージオさまはご自分の胸に私の頬を押し付けるように抱きしめてくださった。




