↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

45/143

アルカディアの誘い 11

鼓動を感じて目を閉じた。

ジョージオさまが私の髪を撫でてくださる。


「先ほど、神宮から使いが来てね、明日、シーシアがタルゴーヴィの神宮に来るらしい。時間がとれそうなら、この館に寄るとか。」

「シーシアさまが!?大変!!!」


私はガバッと勢いよく起き上がった。


「え……キトリ?」


驚くジョージオさまをベットに残し、私は慌ててドレスを身につけた。


「どうしたのです?」

「掃除、しなきゃ。館を磨き上げます。ああ、それに、お菓子を焼きます!シーシアさまのお好きなショコラ……材料あるかしら?」


突然張り切りだした私に、ジョージオさまは呆気にとられていた。



***


その日は、シーシアさまのお越しに備えるべく、徹底的に拭き掃除をしまくった。

翌朝は、出入りの商人が食材や型を持って来てくれるのを待って、お料理にも取り掛かる。

ジョージオさまは、気になるらしく、何度も何度も私の様子を見にいらした。


「来るかどうかわからないのですから、そこまでしなくても……」

「掃除は毎日、館の者がしていますし、お菓子は料理人が作りますよ?」


その都度、やんわり止められたけれど、やめるわけにはいかない。

……そもそも、これまで我慢してきたけれど……この館の使用人は、主人のジョージオさまに似て、ルーズだ。

四角い部屋を丸くしか掃かないし、日々、埃をはたくだけで、拭き掃除はたまにしかしていない。

料理は美食家のジョージオさまを喜ばせるべく、山海の珍味をふだくさんに使った豪華なものばかりで……シーシアさまのお好みとは違う。

素朴な焼き菓子は口にされても、クリームとフルーツたっぷりの甘すぎるお菓子は、ご自分は召し上がらずに下賜されるのが常だ。


「ジョージオさまも、召し上がってみてください。私の焼き菓子、神宮でも、実家でも、好評でしたのよ。」


ジョージオさまは、おいしそうに召し上がってくださり、ほめてくださった。

けど、最後にチクリとおっしゃった。


「次からは、キトリが直接手を汚すのではなく、料理人に指示すれば同じように作りますので。」


ジョージオさまのお顔から、笑顔が消えていた。

……よくわからないけれど……怒ってらっしゃるようだ……。


「あの……ジョージオさま?」

「さあ。次はキトリ自身の準備をする番ですよ。湯浴みして、着替えましょう。」


ジョージオさまは、いつもの微笑を貼り付けて、私に手を差し出した。


その手がいつもより冷たくて……いつもより距離を感じた……。



***



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。