桃源郷への道 15
何てゆーか……、ジョージオさまご自身もだけど……その都度、婚礼ごっこにつき合わされるご家族やご親戚のみなさん、大変だなあ。
どう考えても、私、好意的に迎えてもらえない気がする。
そう言えば……ジョージオさまの御父君である大公さまはお迎えしてくださったけど……御母君さまはいらしてくださらなかったわ。
もちろんご存命で、こちらにいらっしゃるのよね?
……ん?
もしかして、私、……昨日のうちに、御母君さまにご挨拶しなきゃいけなかったのじゃないかしら。
わー。
既に、やらかしてしもた!?
ドキドキしてきた。
「……では、参りましょうか。フィズ。」
キラキラの笑顔で、ジョージオさまが私に手を差し出した。
「はい。ジョージオさま。」
そっと手を置いたら、ぐっと掴まれた。
そのまま私を引き寄せると、ジョージオさまは私の額に、そして続けて頬に口づけした。
ジョージオさまの優しい愛情に包まれて、私の中の不安が霧散した。
でも、次の言葉は堪えた。
「心配ありません。私の隣で、笑顔でいてくださったら大丈夫です。……珍しく、父もフィズを気に入ってくださっていますから。誰も、あなたを拒絶などできません。」
……言い換えれば、大公さま以外のご家族やご親族は、私を受け入れてないってことかしら。
まあ、いいわ。
面と向かって、虐められることはなさそう。
伊達に女ばかりの神宮院で3年過ごしたわけじゃない。
陰険な意地悪ぐらいになら、対応できるはず。
負けるもんか!
メラメラと対抗心が燃え上がった。
けれど、ジョージオさまのあまりにも麗しいほほ笑みを見たら……ふっと心が緩んだ。
ジョージオさまは、私を守ってくださるおつもりなのね……。
そっか。
もう、独りで戦うわけじゃないんだ……。
「ありがとうございます。どうか、お導きください。ジョージオさま。」
素直にそう申し上げたことに、我ながら驚いた。
ジョージオさまは、力強くうなずいてくださった。
「私を信じてください。フィズ。愛しています。……不思議ですね。こんな気持ちは、はじめてです。なぜでしょう。私は、あなたと出逢うために生きてきたような気がしてなりません。……いえ、違いますね……。先ほどの慌ただしい行為で、私はあなたを手に入れるつもりでしたが……どうやら、そうではなかったようです。フィズ。私は、あなたの中に飛び込んでしまった。……そんな気分です。」
おっしゃる意味が、よくわからなかった。




