シャングリラはそこに 7
「はい。フィズどのからお話をうかがって、こちらは宗教施設であると同時に学びの場でもあるから、偏った書物のみしか置かれていないことを危惧すべきだと仰っていました。……中央図書館と同じというわけにはまいりませんが、今後は、人気のある書物はこちらにも置かれます。」
「……ありがたいことです……。」
私は手を組み、神に感謝を捧げて見せた。
そして、付け加えた。
「宰相さまにもお礼を申し上げねばなりませんね。」
ヘイー先生は、小さく笑った。
「……宰相さまも、フィズどのにお礼を言いたいと仰ってましたよ。……神宮はベールに包まれてよくわからないので……フィズさまから図書室の不備をうかがえてよかった、と。もし他にも何か気になることがあれば、教えてさし上げてください。」
「まあ……。そうでしたか。……でも、確かに……シーシアさまは、どのような小さな不平不満も口になさいませんものね。……何だか恐縮いたしますわ。ただの愚痴と申しましょうか……ワガママな戯言にまで対処してくださるなんて……。」
少し恥ずかしく思った。
でもヘイー先生は、ゆっくり首を横に振った。
「宰相閣下は、忌憚のない本音をお望みです。誰かに気遣ったよそ行きの言葉ではなく、経験に基づいた愚痴や不平不満には問題点がわかりやすく現れます。……とても懐の深いおかたです。」
なるほど。
そうかもしれない。
うんうんと頷いていると、ヘイー先生はさらに興味深いことを言い出した。
「過去の過ちや裏切りよりも、貪欲な知識欲や未来への意志の強さを尊重してくださるので、……ありがたいことです。」
……へえ……。
子供を捨てて、皇帝に手込めにされた私を、腫れ物のように扱うことなく、勉強の機会を与えてくださったのも……そういうことなのね。
……でも、じゃあ、……ヘイー先生は?
何か、やらかしたことがあるの?
イロイロ聞きたいような気がしたけれど、さすがにそんなことを、根掘り葉掘り聞き出すわけにもいかない。
ただ、……当たり障りのない冗談のように聞いてみた。
「ヘイー先生も、過去にイロイロ大変だったんですねえ。」
ところが、ヘイー先生は、思ってもみなかった返答をした。
「現在も、大変ですよ。全て、自業自得ですが。」
おおっと。
これは、……もう少し、つっこんで聞いてみてもいいのかしら?
「それって……お仕事のお話しですか?それとも……あのかわいいお嬢さまが反抗期とか?」




