シャングリラはそこに 6
悶々としながら自室に入り、夜のお祈りのために着替えた。
大聖堂での厳かな祈りのあと……シーシアさまが、何度も私を見てらっしゃることに気づいた。
……やっぱり気になってらっしゃる……。
帰ってすぐご報告に上がるべきだったかしら。
廊下を早足で歩き、自室に向かわれるシーシアさまを追ってみた。
でもシーシアさまは振り返ることなく進まれた。
廊下でお声掛けすることは不作法だが放置することもできない。
結局シーシアさまが自室のドアの前に立たれたときに、やっと追いついて、私を見ていただけた。
「……どうしたの?フィズ。そんなに急いで。……でも、もう就寝時間ですよ?わたくしにお話があるのでしたら、明日にしてくださいね。」
言葉は優しいけれど、拒絶を感じた。
何も聞きたくない、ということだろうか。
私はどうすることもできず……就寝のご挨拶だけして、辞去した。
***
翌日もシーシアさまは、よそよそしかった。
私は、昨日のことをシーシアさまに報告することをあきらめた。
自室で借りてきた書物を読み耽っていると、午後になってから来客を告げられた。
……誰かしら。
簡単に身支度を整えて、面会室へと向かった。
お父さま?
それとも大公さまのお使い?
……まさか、ジランくんじゃないわよね?
恐る恐るドアを開けると、白いぼさぼさの髪が見えた。
「ヘイー先生?……まあ。どうされましたか!?」
昨日の気まずい昼食を思い出したら、何だか笑えてきた。
ヘイー先生は、立ち上がってぺこりと挨拶してくださった。
慌てて、お座りいただいて、私も対面の席についた。
「こんにちは。昨日は失礼いたしました。……驚きましたね。」
ヘイー先生の言葉に大きくうなずいた。
「本当に。驚きました。……でも、今も、驚いてますわ。」
そう申し上げると、ヘイー先生はちょっと笑った。
「突然失礼いたしました。シーシアさまへの宰相のお使いと、……フィズどののご意見うかがいたく参上いたしました。」
「シーシアさまへ……書状か何か?……そうでしたか。」
ほっとした。
宰相がシーシアさまをないがしろにしたままじゃなくて……よかった……。
これで多少なりともシーシアさまのご機嫌が上向きになればよいのだけれど。
「はい。お届けいたしました。昨日ご挨拶しなかった非礼の詫びと、神宮の図書室に書物を寄附なさりたいとのご相談の書状です。」
「まあ。書物を。」
ドキドキしてきた。
ヘイー先生は優しくほほえんでくださった。




