43 平原での魔獣討伐
その後更に薬草採取2回を経て、やっとカペック平原の端まで到着した。
本日は平日であるせいか、ここに入っている冒険者はそれほど多くない。
前方かなり先に1組来ている程度だ。
「多いですね、ここ」
ケイトが言う通り、今日も魔獣の気配があちこちに確認出来る。
この前のようなはぐれオークこそいないが、他はよりどりみどりという感じだ。
「今日はここで討伐をするつもりだよ。まずはある程度魔獣を狩ってから移動してお昼にしようと思っているんだ。
それでハンス、ちょっとお肉が欲しいからさ。いつもの1回お願いしていいかな。メインのターゲットは魔小猪で。今日はこっちも人数が多いから、おまけも思い切り連れてきていいと思うよ」
おい待てフィン。
はじめてのパーティでいきなり魔獣牽引をするのか。
正直かなり危険を感じる。
「大丈夫だよ。こっちでちゃんと指示するからさ」
……しかたない。
ミリアも目線でやれと言っているからな。
「これから魔獣牽引という方法で魔獣を討伐するよ。授業では聞いた事が無い方法だけれど、足が速くて索敵が得意な人がいれば効率がいい方法だから。ただこれはお互いの信頼関係が大事だからね。その辺は充分注意して。
まずはハンスが平原の中程まで行って、魔小猪をはじめいくつかの魔獣を逃げる形で引き連れてこっちに走ってくる。ハンスが待ち構えている僕達の横まで来た時点で戦闘開始。ライバーが盾で、ミリアとモリさんが魔法で魔獣の勢いを落とすから、残りの皆の魔法と武器で魔獣を倒すんだ。ちょっとハンスの負担が大きいけれど、その分効率がいい討伐方法だよ。
それじゃハンス、いつも通りよろしく。あとケイトは後ろ方向から街道を通ってくる冒険者や魔物がいないか警戒をお願い。あとはライバーが中心でミリアとモリさんがその真横、他はライバーの横であまり横に広がらないようにして待っていて」
仕方ない、行ってくるか。
確かにこれだと効率がいいし、倒し方その他でお互いの腕もわかるだろう。
万一の際もミリアがいれば問題無いし。
そして150腕程度の場所にちょうどいい魔小猪もいる。
まあその辺フィンもわかっていてこっちに頼んだのだろうけれど。
そんな訳で俺は街道を一気に走って魔小猪の近くへ。
軽い風魔法を当てて奴の気を引いた後、待機組が攻撃をしかけやすいよう、出来るだけ街道上をまっすぐ魔小猪が走ってくるようコースを考えつつ、ダッシュする。
他にも牙ネズミだの牙ウサギだのが俺と魔小猪に気づいて追ってきた。
いつもよりおまけが多いが、それもフィンの注文だからいいだろう。
そんな訳で魔獣をひきつけつつ思い切り走って、待ち構えている皆さんの横を走りすぎる。
最初に感じたのはおそらくミリアの風属性魔法とモリさんの水属性魔法。
モリさんの水属性魔法は魔獣の速度を落とすのにちょうどいい。
万が一俺に当たっても被害が少ないしな。
あとは誰の魔法かわからないが知らない魔法の気配も。
ドン! とライバーの大盾が大物を受け止めた音がした。
そして、
「うわあ……」
何かよくわからない、歓声とも何ともつかない声。
何だろう。
怪我をしたとかそういう感じじゃないけれどな。
そう思って俺が様子を見に戻ったところ、既に全てが終わっていた。
だが倒れている魔獣の様子が変だ。
確かに死んでいるのだが、魔小猪以外は槍や剣の傷が見当たらない。
そう言えば何か妙な魔法の気配がした気がするけれど……
「どうしたんだ、妙に今回は獲物に傷が少ないけれど」
「ケイトの魔法よ」
「どんな魔法だ?」
わからないから聞いてみる。
「即死呪文です。レベルの低い魔獣程度ならこれで何とかなるかなと思ったのですけれど……思ったより魔力を使ったようです。2発目は無理ですね」
えっ。
「それで魔獣が全部倒れたという事か」
ちょっと待ってくれ。
そんな魔法、普通に使える魔法じゃ無い。
「ケイトは教会にいた時から才媛って呼ばれていたけれどね。まさかこんな魔法まで使うとは思わなかった」
「アンジェ、前から知り合いなのか?」
アンジェが頷く。
「教会で一緒だったのよ。私は回復や治療といった魔法が苦手だったけれど、ケイトは回復も治療も得意だったから、てっきりそのまま神官コースだと思っていたんだけれどね。来てからはクラスも授業も違うからあまり話さなかったけれど」
「教会の考え方が今ひとつ納得いかないので、結局こっちを選びました。あと即死呪文も回復魔法も実は似た魔法なんです」
「これが出来れば討伐もかなり楽なんじゃない?」
「魔力消費が激しくて今の私では1回使ったら2~3時間は無理なようです。使うのははじめてなので今までわからなかったですけれど」
うーむ。
何処かのヤバい先輩と同じ危険な魔法持ちか。
あの先輩と違い魔力がまだ少ないのが救いかな。
「あと今の魔物を引っ張ってくるの、今度は俺っちがやってみてもいいか?」
思ってもいなかった牽引役志願者が出た。
ちなみにクーパーだ。
「確かにクーパーなら出来そうだよな。でも無理はするなよ」
「わかっているぜモーリー」
モリさんが出来ると判断しているなら多分大丈夫だな。
そう俺は判断する。
「それじゃこの魔獣を収納して、次はクーパーに頼もうか。魔獣はとりあえずハンス、いつものように収納お願い」
「わかった」
魔小猪をはじめかなりの数の魔獣をガンガンと自在袋に収納する。
「それじゃ今度は即死呪文無しで、皆で倒すわよ」
「それじゃクーパー、今度は右側奥のを頼んでいいかな。今のハンスみたいに出来るだけ街道上を走れるようにコースを工夫して」
「了解了解っと。それじゃ行ってくる」
随分と気軽に行ってくるなと俺は感心する。
俺は未だに味方から攻撃されるのが怖いのだけれども。
それにクーパーならこの平原にどれだけ魔獣がいるかもわかる筈。
その中へと歩いて行くのだからかなり度胸がいる筈だ。
自分の探知能力と脚にそれだけ自信があるという事だろうか。
とにかくこうしてまた次の魔獣牽引がはじまった。




