41 実習用の新パーティ
このパーティは実習でもこのままで行こう。
そう6人全員が思っていたのだが、残念な事にそう出来なくなってしまった。
教官による調整が入ったのだ。
「6人構成でC級のハンスとミリアが同じパーティというのでは、少し他の班に比べて有利すぎるでしょう。ですからこのパーティは実習では男女に分かれて別パーティにします。勿論3人では少ないですから、あと3人ずつ他のメンバーをこちらから指定して入れさせていただきます」
そうシャミー教官から宣告されてしまったのである。
「何かがっかりだわ。せっかく実習で一緒にやるつもりだったのに」
ミリアがむくれているが仕方ない。
俺も同じ気分だし、多分他の4人も同じだろう。
「でも男女でわけでもこのパーティ、バランスがいい筈です。実際3人だけでも実力的にも技能的にも全く困りませんよね」
確かにシャミー教官の言う通りだ。
たとえば戦闘の場合、前衛はライバーとアンジェ、弓攻撃主体のフィンとモリさん、本来は魔法メインの俺とミリア。
技能で言えばモリさんとフィンは索敵が出来るし解体は俺とモリさんが出来る。
更に俺とミリアは野宿経験もある。
そういう意味では確かに半分にしてもバランスは悪くない。
というか他の班より有利な気さえする。
「それでは残りのメンバーは誰になるんですか?」
「実習1週間前になりましたらパーティ申請も大方出そろいます。ですからその後に余った生徒を割り振る形になる予定です」
「それまでに新しい班員を見つけて入れては駄目ですか」
「ここのパーティのように分割指定をしているパーティはあと2組あります。1組主体のルドルフとロイがいるパーティ、2組主体のオルソンとシーラ主体のパーティですね。そのパーティについては勧誘等は一切禁止とします。つまり調整用パーティという事です」
「何かC級合格者が目の敵にされていませんか」
ロイ以外は全員この前C級に受かった連中だ。
「最初D級で入ってこの前C級にあがった生徒はやはり能力的にはずば抜けていますし、ロイもそれに近い腕を持っています。その辺の生徒はやはりある程度分散して貰わないと他のパーティに対して有利すぎるでしょう」
否定できないのが悲しい。
でも不安がある。
調整用パーティは確かにどこも強力だ。
だが半分にした場合、どう考えてもうちのパーティが一番バランスがいい。
これは能力的な問題で間違いない。
つまり順番で言えば、最も使えない生徒がうちにくる可能性が高い。
そんな事決して口には出せないけれど。
果たして誰が来るのだろうか。
そう考えるとなかなか怖いものがある。
ただ俺達としてはどうしようもない。
ただ誰になるか、決まるのを待つだけだ。
◇◇◇
そして いよいよ実習1週間前の第1曜日。
1組から3組まで集められた合同授業でパーティの組み合わせが発表された。
運動場で読み上げられた順に並んだ後。
「このパーティで野外遠征実習は実施される。本日は顔合わせをした後、解散となるから相談するなり討伐で実力を確認するなりしてくれ」
ガリウス教官のそんな台詞で本日の授業は早々に終了となる。
予定通り俺達のパーティは2つに分割された。
俺達のパーティが、
○ フィン、俺、ライバー、クーパー、ケビン、ショーン
ミリア達のパーティが、
○ モリさん、ミリア、アンジェ、エマ、メラニー、ケイト
という組み合わせ。
なおフィンとモリさんがそれぞれパーティのリーダとして教官から指名された。
早速この2パーティで集まって作戦会議だ。
「私よりミリアの方がリーダーとして適切だと思うけれどなあ。自信ないや」
モリさんがそんな弱音をはく。
「それを言ったらこっちだって本当はハンスの方が向いていると思うよ。つまりミリアやハンスの力を極力借りないで実習を乗り切れという事だと思うな」
「ところで何故ここは2パーティ集まって会議をしているのでしょうか」
これは新しくミリアのパーティに加わった2組のメラニーだ。
「元々ここのパーティはミリア、ハンス、ライバー、アンジェ、フィン、そして私で組んでいたんだけれどさ。C級2人は反則だという事で教官が分割した訳なんだ。だから実習では別のパーティとして行動するけれどさ。相談なんかは一緒にやった方が、元々の面子としてはやりやすい訳かな」
モリさんが説明してくれる。
「それで今日は天気もいいし、外でそれぞれどんな戦い方をするか、何が得意か確認しようと思うの。ついでだから食事も外で作ってみて確認しようかなって。天幕も新型があるから実習で使うのはこれでいいか確認して貰おうと思うし。それで皆、今日の午後は空いているかな」
これはアンジェ。
この辺の段取りは昨日話し合った結果だ。
なお本日の午後は空けるようにと事前に教官等からも言われている。
だから問題無い筈だ。
「いきなり外は自信ないんだな。実は出た事があまりなくてさあ」
ショーンからそんな弱気な意見が出た。
彼は体格はライバー並みに大きいが、体の線は丸い感じだ。
「それは問題無いよ。元のパーティでもほぼ毎日外に出ているしね」
「でも僕はまだE級なんだな」
「私もE級でまだ剣も槍も持っていない頃からこのパーティで出ているし、心配しなくて大丈夫だよ。それにミリアやハンスがいれば大体何が来ても何とかなるしさ」
これはモリさんだ。
「ミリアやハンスってそんなに強いの?」
これはメラニー。
真っ赤な髪が印象的な3組の生徒だ。
「前に迷宮で第5層のボス部屋に入った事があるんだ。その時の敵はアークゴブリン3体だったけれど、ミリアが出現と同時に瞬殺してさ。あれ以来ミリアの力が本当はどれくらいなのか俺にもわからなくなった」
これはライバー。
「アークゴブリン、それも3体瞬殺か。いい意味で言うけれどまともじゃないわね」
「言っておくけれどハンスはもっと洒落にならないわよ。はぐれオーク程度なら1人で余裕だし」
おいミリア。
あの時は一応アルストム先輩もいただろう。
まあいなくても問題無く倒せたけれども。
「なるほど。教官があえてリーダーにしなかったという意味がわかりました」
エマが頷いた。
「それに久しぶりに外に出るのも楽しみですし。今度はどんな草を見つけられるかと思いますと」
「エマは薬草が得意なの?」
ミリアの台詞にエマは頷く。
「得意というか好きですね、草木全体が。本当は薬草学を勉強したかったんですけれど、家が農家でお金がないからこの学校に来たんです。此処なら無料で薬草についても勉強できますから」
「それじゃ買い出しをして外に行こうか。場所はカベック平原あたりのつもりだけれどいいかなあ。片道1時間ちょっとだけれど魔獣も多いし」
「魔獣が多いって大丈夫でしょうか」
「心配いらないよ。僕らもE級の頃から行っている場所だしね。調理道具や食器なんかは僕の手持ちで大丈夫だよ」
フィンの奴、そんな道具まで用意していた模様。
本来は学校からその辺の道具は借りる予定だったのだけれど、まあいいだろう。
そんな訳で都合12人という大編成で、カペック平原へ行くことになった。




