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GOGOパワーレベリング~少年魔導士は犬耳・尻尾つき。でもモフられるのは苦手です~  作者: 於田縫紀
第6話 学校の危険人物

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19 本当の危険人物

「こっちが下手に出ていれば」

「どこが下手だ。国語能力を疑うな。初級学校からやり直しを勧める」


 返事の代わりにウィンドカッターが3発連続で飛んで来た。

 だが所詮は初級魔法、さっきと同じ方法で叩き潰す。


「次は?」

「水属性魔法、ウォーターガン!」

 これも初級魔法だ。

 入学試験の実技なら最初の的くらいは壊せるだろう程度の威力だ。

 つまり俺の敵ではない。


 ついでだから同じ魔法で返してやる。

 もちろん全力は出さない。

 ほどほどに加減したウォーターガンを無詠唱で起動。

 俺のウォーターガンが相手の魔法を押しかえし、4人に降り注ぐ。

 結果4人の顔に思い切り水がかかった。


「悪い。加減を間違えた」

 実際は間違えた訳では無く想定通りだ。

 この程度の魔法、俺が手加減を誤る訳は無い。


「なら仕方ない、火属性魔法、炎球ファイアボール!」

 そんな危険な魔法、校舎の近くで放つべきではないだろう。

 もっとも俺がウォーターガンで消火してやるから問題は無いけれど。

 消火ついでに向こうが上衣まで濡れるのも仕方ない。

 不可抗力という奴だ。

 

「なら今度は一斉にやるぞ。水属性魔法、ウォーターガン!」

「風属性魔法、ウィンドカッター!」

「火属性魔法、炎球ファイアボール!」

「火属性魔法、炎球ファイアボール!」


 相手の安全を考え、水魔法で返してやる。

 今度は範囲が広いので別魔法。

 馬鹿でもわかりやすいように詠唱もつけてやろう。

「水属性魔法、水圧ウォータープレス!」


 水圧ウォータープレスは火災消火にも使われる初級魔法。

 ただただ大量の水を壁のように出現させ、対象にたたきつけるだけの魔法。

 これに少しだけ魔力をプラスして放ってやる。

 結果水の壁が4人の魔法を押し潰し、更に4人を吹き飛ばした。

 結果4人とも3腕(6m)程飛ばされた上、上も下も髪も靴もずぶ濡れになる。

 ただ怪我はしていない。

 倒れても大量の水がガードしたおかげだ。


「くそ、魔法で駄目なら格闘戦だ。相手は1人だ、4人で行くぞ! アレ頼む!」

「わかった。身体強化!」

 今度は肉体言語で来るようだ。

 面白い。俺は獣人、そっちの方が元々得意だ。

 ちょっと遊ばせてもらうとしよう。


「身体強化!」

 俺も身体強化を起動した上、あえてぎりぎりまで向こうの攻撃を待つ。

 殴りかかって来た最初の奴の右拳をそのまま引っ張り込み、体勢を崩した状態にして2番目の男の蹴りの前に引っ張り出す。

 最初の男が仲間の蹴りで悶絶した。


「見事な威力だな。相手を間違えているが」

「くそ!」


 残り3人が捕まえようとしてくる。

 先程の失敗からまずは捕まえてから攻撃する事にしたようだ。


「遅い!」

 避けるのも倒すのも簡単だ。

 だが一撃で倒した場合、相手が怪我をする虞がある。

 その辺の加減が難しい。


 でもこのままでは面白くない。

 掴みかかってくるだけではカウンターを決められない。

 相手が3人もいると正直鬱陶しくもある。


 面倒になって来たから終わりにしよう。

 俺は無詠唱である魔法を起動する。

 今度は掴みかかって来た手を今度は軽く右手で触れてやった。

 3人ともだ。


「うをっ!」

「ぎゃっ!」

「へべしっ!」

 3人3様の叫び声をあげて倒れた。

 見事に意識まで失ったようだ。


「格闘戦をするなら接触麻痺雷(スタンガン)魔法くらいは対策するんだな」

 そう言っても聞いているのはもはや1人だけだ。

 そのアルストム先輩は俺に向かってぱちぱちと拍手をしている。

「いやいや、お見事。これでこの4馬鹿も懲りただろう」


「アルストム先輩はどういう立場なんですか」

 念の為に聞いてみる。

 奴はにやりと笑みを浮かべた。

 悪役、それも親分格が浮かべそうな悪くて黒い笑みだ。


「単なる傍観者さ。証人といってもいいかな。この私闘の後に後腐れがないように監視する為の。本来はこの学校の生徒役員として彼らを止める役目なのだけれどさ。君ならその必要は無いと思ったから傍観者に徹させて貰った。

 僕自身は戦うのが苦手な平和主義者さ。世の中と同様、例外が無い規則がないのと同様、時に例外があったりはするけれどね。

 ただ僕の魔法は特殊なんで不幸な事に皆様から怖がられていたりもする。殺伐とした攻撃魔法よりよっぽど安全な魔法ばかりなのだけれどね。せっかくだから例をみせてあげよう。生命属性魔法、さらば長き友よ!」


 不吉な予感がしてさっと俺はその場を離れる。

 みるみるうちに魔法が4人に襲い掛かった。


 この魔法の効果を理解した俺は戦慄する。

 これは酷い。人道にもとる魔法だ。

 みるみる間に4人とも髪が全て抜け、つるっぱげになってしまった。


 確かに恐ろしい魔法だ。

 普人ならせいぜい髪とみえない部分の毛が犠牲になるだけ。

 しかし俺みたいな獣人にかけられると酷い事になる。

 毛がない獣耳、毛がない尻尾……悲惨だ。


 一方で先輩は首をひねっている。

「なかなかうまくいかないなこの魔法。本当は髪だけにするつもりなんだが、どうも体毛も残さず消えてしまう。まだまだ僕も精進が必要なようだ」


 確かに髪どころか髭の跡すらも残っていない。

 腕の毛も全て消えている。

 でもきっとそういう問題ではない。

 というか何というか……


「いいんですか、こんな事をして。そもそも4人ともアルストム先輩には敵対していなかったのでは?」

 まさかとは思うが俺のせいにするなよな。

 そういう思いで奴の方を見る。


「ギセもハクタもヴィドーもメッタも状況から教官に訴え出る事は出来ないだろう。だから有難く僕の研究に協力して貰った訳だよ。これに懲りて新入生いじめをやめてくれると助かるしさ。

 まあ、やったならやったで別の魔法の研究に協力してもらうだけだけれどね。全身が三日三晩痒みに襲われる魔法とか、一昼夜全身の震えが止まらない魔法とか。どれも命には別状ない。だから学内の安全と秩序を守る生徒会役員として心置きなく行使させてもらうよ」


 ふと俺は気付く。

「まさか最初から実験のつもりでここに来たのではないですよね」


 奴はわざとらしく肩をすくめてみせた。

「証拠がない限りは推定無罪の法則が適用される。これが文明社会の規則だよ。まあ身分差でその辺は跳ね返る事もあるけれどね。いや厳しいね世間という奴は」


 そういう問題じゃないだろう!

 そう思いつつ俺は思う。

 ヤバい、危険だと。


 今後出来るだけこのアルストムという先輩には近づかないようにしよう。

 何をされるかわかったものじゃない。

 どうやら倫理観念という奴がすっぽ抜けている。


「さて、それじゃ食堂にでも行こうか、ハンス君」


 待てアルストム先輩。


「この4人はどうするんですか?」


 先輩は薄く笑みを浮かべる。


「ここに放っておいても問題はない。気付く頃までは隠蔽魔法も効いているだろう。風邪を引いても僕の知った事じゃない。幸いこいつら丈夫だから風邪くらいじゃ死なないだろう。万が一風邪が酷くなっても明日は休養日。じっくり寝て治せばいいだけだ。そう思わないかい、ハンス君?」

 

 俺はしみじみ理解した。

 アルストム先輩、間違いなくヤバい奴だと。


 普人にもいろんなタイプがいる。

 ミリアのように態度はアレだけれど信頼できる奴。

 モリさんのように能力はいまいちだけれど開けっぴろげで信頼できる奴。


 そして伸びている上級生4人のような奴。

 洒落にならないアルストム先輩のような奴。

 獣人よりも幅が広いというか個々の違いが大きいようだ。

 

 でもとりあえずアルストム先輩の件、後でミリアにも注意をしておこう。

 本当に危険なのはアルストム先輩だから近づかないようにと。

 俺はそう思いつつ、表面は逆らわないよう先輩に従って歩いていく……

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