力尽きました
光る玉に囲まれる。
よく見るとそれは無数の目だった。
数はそもそも数える気にもならない。
わかることは勝ち目がない、それだけだ。
ここでオレは逃げる算段を立てようとする。
どういうわけかあの動物はこちらに襲ってきていない。ならば見逃してくれるんじゃないかしら。
そんな淡い希望もあってか、1番光る目の包囲を
突破しやすそうな円陣の一部にオレは歩み寄った。
すると光る目の持ち主の正体が明らかになった。
体は大して大きくない。ただ全身が黒い毛に覆われていて暗闇によく溶け込んでいる。ただ、
目が光り過ぎているせいでその暗闇に紛れることのできる体毛も台無しだ。
そんな残念な印象を持つ生物にオレはなぜか
親近感が湧いた。ここは一つ友好の証として
その動物の背を撫でようと手を伸ばしたそのとき
だった。
ガザシャンーー
鋭利なもの同士がぶつかったかのような音が辺りにこだました。
よく見ると今しがた撫でようとした残念な黒毛は鋭利なナイフのような歯を口に並べて気色の悪い笑みを浮かべている。
最悪なことに知性もそれなりにあるようだ。
するとあたりにいた黒毛たちもニタニタ笑っているような気がした。
突如、背中に激痛が走った。黒毛のうちの一匹がオレの背中に張り付いて爪を立てているのだ。
ーーヤバイ
本能的に、反射でオレは地面に仰向けになって倒れた。ギッと音を出しながら黒毛はその爪を離した。
オレは一目散にに逃げ出した。
走った、とにかく走った。
後ろからはカサカサ黒毛たちがおそらく木々の間を移動しているのがわかった。
すぐに獲物を仕留めようというのではない。
疲れ切ったところを集団で安全に自分たちの
エサにしようという意図がよくわかった。
時折、地面と周囲を確認しながらさらに走った。
そして大木の前でオレは蹲った。
黒毛の猿どもはジリジリと距離を詰めてくる。
オレは大木を背にしてサルどもがさらに近づいてくるのを待った。およそ数は10匹ほど。歯は異様なほど鋭いが大きさは大したことない。芝犬を立たせたくらいの大きさだ。
木の上からも音がしたがもういい。
猿どもとの距離も十分に近い。
ーー思いっきり地面を蹴った。
そして一直線に1番図体の大きいサルのもとまで
駆け出してその小さな体にタックルする要領で
押し倒した。
ギャアアアアという叫び声とともにその猿の爪が
左腕に食い込んで背中や耳、足至る所に爪や牙が食い込んでいく感触がある。
不思議と痛さはなかった。
押し倒した猿の片目をなんとか右手の人差し指を
突っ込んで潰す。オレの腕にさらに爪が食い込んできたが構わない。
片目を潰した猿を押さえつけながらなんとか立ち上がり右足で骨で守られていない腹の部分を
踏み潰した。
続けざまにさっきから左足に牙を立てている
サルの頭を左手でそのまま自分の足に押さえつけて右手で猿の目に指を突っ込んで動かしまくった。
最早、聞き慣れた叫び声をよそに足に立った牙が緩まったのを感じ引き剥がす。そして地面に猿を叩きつけて左足で全体重をかけてうつ伏せになった猿の首を踏みつけた。
オレは次の猿に狙いを定めようとして辺りを見回すと奴らはまたオレから間合を取っていた。
どの猿もやはり最初に狙いを定めて腹を潰した
猿よりも一回り小さい。
そのサル共はそのまま木を伝って去っていった。
どうやら最初に当たりを引けたようでオレは安堵する。動物にも頭がいてそれを潰すと烏合の集に
なる群がいたことに救われた。
急に力が抜けてオレは地面に倒れこんだ。
自分の流した血が固まって手や足、顔にまでこびりついてカサつく感覚が今になってしてきた。
もう思考もままならない。
オレは朝起きてから二度寝するために枕を取り
寄せる感覚で近くの絶命したサルを頭の下に
敷いた。
疲れた、少し休もう。
そう思うとオレの意識は途絶えた。
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