チュートリアル
目覚まし時計の音で目を覚ます。時間通り。7時ちょうど。
食パンにバターを塗って、お水と一緒に食べる。
歯を磨き、服を……まあ、一ノ谷さんとじゃないし、適当でいっか。
「あんたに適切なアドバイスをしてあげるからちゃんとした格好で来なさいよね」
ああ、ダメ。絶対に怒られる。この前のデートと同じ服でいく。
集合場所は、前と同じ駅前。
8時30分。間に合った。
しかし、そこには鬼の形相をした城ノ内がいた。
「え、えーっと?どうしました?」
「はぁー、あんた、女の子に対する心遣いってものがなってないわね!普通10分前にはついてるでしょ!それに、この服装は何?ダサすぎなんですけど」
もうボロボロ。ちょっとした自信は、切り刻まれていた。
「ホントに情けない男。さ、行くわよ」
急に優しい口調にされると、ちょっと動揺する。
とりあえず僕はついていく。なにも聞かされていないけど、大丈夫かな?
「あ~!もう最低。なんで女の子に車道側を歩かせるの?バカね」
「ご、ごめんなさい」
「……」
「……なんか話振らないの?普通男がリードしていくものでしょ?」
何度か説教をくらいながら歩く。
「ここであんたのダサダサファッションをイケイケにしてあげる」
ついたのは、大きなデパートだったのだ。
「あー、そういや、前の一ノ谷とのデートごっこでどこに連れてったの?」
「ファミレスだけど」
「もうダメ。ついてけない」
とことん呆れられている。
「どう?これ、似合う?」
真っ白のワンピース。いつもはジーパンばっかりはいている城ノ内さんとは少し違う。
「もうちょっとで夏だし、これいいかも。ちょっと、そういうときに『似合うね』とか言うのができる男ってもんじゃない。ちょっとは気を利かせなさい」
「ちょっと小腹空いてない?」
僕が精一杯の勇気を出して聞く。一ノ谷さんの時は、向こうから言われてた。
「あら、気づかい出来るようになってきたじゃない。そうだ、クレープ屋さんがあるから、そこで食べましょ」
褒められた。ちょっと嬉しい。
まえまではこんなこと出来なかったのに、我ながら大きな成長だ。
「じゃあ、私はイチゴで」
「僕はチョコレート」
ピンク色のショーケースから選ぶ。
「お金は僕が払うよ」
「いやいや、ワリカンでいいよ」
「じゃあ……」
わりとうまくいってる。僕ってデート上手?
「あんた、常識ってもんがないの!?お金は普通男が払うもんでしょ?」
「で、でも、ワリカンでいいって……」
「そーいってもとにかく払う!無理だったら7:3くらいでもいいわ」
「べ、勉強になります」
やっぱり怒られる。
「あ~、楽しかった。ありがとね、ハヤトくん」
「いえ、こちらこそ、いろいろ教えていただいて……」
「……」
「どうしたの?黙りこんじゃって」
「……いや、なんでもない。一ノ谷さんにフラれたら、私に来てもいいわよ?」
「えっ?」
「いや、冗談。またね」
僕は今日いろんなことを学んだ。これを、今度の一ノ谷さんとのデートにいかしたいな。




