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恋するしゃくデレラ  作者: 咲山けんたろー
第1章 現世編 〜マチアプで苦労する私〜
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第1話 私がお姫様!?

「は!? 彼氏できた!?」


 ある日の夕食。私・牙端きばたん 恋羽こはねは、思わず箸で挟んでいたトマトを落とす。



「そうなの〜。マッチングアプリでね。」



 その言葉にヘラヘラ笑うのは、私のお姉ちゃんだ。

 彼女は、私と違って穏やかな性格でおっとりしている。前までは、恋愛に興味がなくて、マイペースな人だった。


 ルックスやコミュ力で言ったら、私のほうが優れてるに決まってる。高校から女子高・女子大に入ったけれど、中学の時は『私のことが好きな男子がいる』と噂を聞いたことがあるし、友人にも褒められた事がある。


 出会い系の一種である、マッチングアプリは、私が大学1年生の頃からずっとやっていた。ずっと彼氏が欲しかったし、ここなら、私だって無双できると思ったからである。


 で、社会人の姉は、私がやっているのを見て、始めたという流れ。


 つまり、姉のほうが私より遅く始めたのに、私より早く彼氏を作ったわけだ。




「国立理系院卒。176センチ。大手メーカー勤務。なかなかすごい人だよねぇ。どうして私を選んでくれたんだろう〜。あ、写真みる〜?」



 姉は、食事を止め、スマホから、彼とのツーショットの画像を私に見せてくる。




 なにそれ。自慢?



 ……スペックを言いたいだけでしょ。




 といいつつ、どうせブサイクな彼なんだよ。絶対。だって、こんなハイスペがオッケーするはずないもの。



 そう思って、期待しながら画面を覗き込む。





 ……が。




「へ、へぇ〜。いい人そうじゃん。よかったね……」




 その場で、愛想笑いを浮かべる。



 これは、ブスだからこういう反応しているわけではなく、思ったよりも真面目そうな、キリっとした好青年だったからだ。


 結構イケメンだったため、好きでもないのに、なぜかショックを受けた。


 姉は、私の反応を見て満足したのか、誇らしげに語った。




「恋羽も頑張りな〜。 うふ♡」




 アホらしい言葉に、私はイラッときた。


 ふんっ。ちょっと成功したからって、偉そうに。



 私はね、お姉ちゃんよりも頭いいし、顔だってかわいいし、誰よりも行動してるもの。



 自分からいいねして、メッセージ送って、通話誘って、デートにも誘ってる。



 あんたみたいな、奥手女とは違うのよ。



 ブラックな感情を抑えるように、白米を口に運ぶ。おいしいはずなのに、今日はなんだか、苦い。


 私たちの話に入りたいのか、お母さんがからかうように輪に入ってくる。




「そうよ。恋羽。先越されちゃってるじゃない。意外とお姉ちゃんのほうがやり手だったみたいね?」


「ちょっとぉ、ママ〜?」




 姉は、今が最高潮の幸せなのか、ずっとご機嫌だ。


 私はその空気に、冷たい視線をこっそり向ける。




 はいはい、よかったですね。そんなハイスペ彼氏ができて。私にもちょっとは幸せを分けてくださいよ。




 どうして、私のほうが先に始めたのに、抜かされないといけないの。



 というか、こんな捻くれた性格だから、彼氏ができないのかな。







 ※ ※ ※



 明日の準備を済ませ、私は自分の部屋に籠もる。

 家族の声が聞こえなくて、なんだか心も体も落ち着く。


 今は6月。梅雨入りしたから、雨上がりの夜風が気持ちいい。



 スマホの電源をつけ、ふぅとため息をついた。


 お姉ちゃんに彼氏ができたからかもしれないが、休んでいる暇ないのだ。このあと、午後9時から同じ年の20歳の男性と通話、11時から23歳のIT勤務の男性とも通話が入ってる。


 とにかく、いいなと思った人は積極的にいいねする、メッセージ送る、通話誘う、デートに誘う。この繰り返し。




 このサイクルを続けて、早1年。ネット記事で、『マチアプ1年やってて彼氏できないのは、とんでもないモンスターだ』というのをみて、思わずグサッときた。


 ……いや。だめだ。きっと、私をいいと思ってくれる人がいる。その日が来るまで、頑張ろう。




『国立理系院卒。176センチ。大手メーカー勤務。』



 先ほどの夕飯での姉の言葉が頭をよぎる。


『身長176センチ』。


 自分の背が162センチの私にとって、この男性の身長が1番理想的だった。


 一般的な男性の中で高身長の部類に入り、見上げすぎて首が痛いという身長差でもない。



 何より―――




『ねえ、じんって、身長何センチ?』


 これは、私の唯一の幼馴染・白原 仁 (しろはら じん)と久しぶりに再開した時。


 彼は、生まれた病院から小学校までずっと同じだった。親同士も仲が良く、よくいっしょに遊んでいたっけ。


 だけど、彼は中学受験をして、都内の名門中学に行き、現在は、地方難関国立大学へ通っているそうだ。


 地元の最寄り駅を通ってたら、たまたま彼に似た人を見つけ、咄嗟に話しかけたのである。


 彼は、私の言葉に、静かに返す。


『176……かな。』


『へえ…。』


 チラッと彼が私の目を見つめる。とろん、とした優しい目に吸い込まれそうで、胸が高まった。


 そして、しばらく間があって、彼は口を開く。



『なに? もっと高いと思ってた?』




 今思い返しても、1人でツッコミを入れたくなってしまうくらい、盛り上がってしまう。





 いや、彼からすれば、別にどうだっていい話かもしれない。だけど、なんだかそのニヤリと見透かしたような笑みが、色気抜群で、最近の言葉で言えば、非常に『メロかった』。



 その時、彼は冬休み中だったため、帰省してただけなので、現在は地方へいる。


 私は、その出来事があってから、彼の事が気になってしょうがなかった。





 ずっと、忘れられない。





 だけど、彼は返信が遅いし、通話を誘っても断られたから、諦めるしかないと思っている。



 だから、マッチングアプリの男性としっかり向き合おう。仁は、もう叶わないんだから。



 私は、よしっと意気込みをし、アプリの画面を開き、受話器ボタンを押した。






 その時―――









「ちょっと恋羽!! 降りてきなさい!」


 1階のリビングから母親の声が聞こえてくる。


 私は眉間にシワを寄せる。


「今から、アプリの人と通話なんだけどー!!」


「いいから来て!!」


 昔から、母親は要件を言わない。全く、もっと頑張りなさいって言ったのは、お母さんだったのに。


 ため息をつきながら、階段をトボトボと降りた。


 降りて、周りを見渡すと、リビングには誰もいない。玄関のドアの明かりがついていたので、それにつられて行くことにした。





「恋羽!!恋羽ったら!!」




 そこには、母親だけではなく、父親とお姉ちゃんもいた。





 こんな夜に一体何…。それに、みんな玄関に集まって。


 彼らの視線の先を見つめると、知らない男性3人が立っていた。


 金髪、銀髪、赤髪…?なんだ、この人たちは…。詐欺グループかなにかか…?




 コスプレイヤーかと思ったが、それにもしても出来過ぎている。男装でもなく、本物の男性のようだ。目の色も鮮やかで、服装も異世界から来たような鎧を羽織っていた。


 彼らは、私の姿を見つめ、目を見開いた。


 口々に、私を見ては驚いた声を出す。





「み、み、見つけた…!!」


「まさか……この方が……!!」


「そっくりだ……嘘だろう……。」





 何が起きているか分からず、開いた口がふさがらない。




「あの…これは一体……」


「おっと、これは失礼。私たちはこういうものです。」



 私がそう言うと、赤髪の男性が名刺のようなものを差し出す。


 日本語ではない文字。いや、この文字はどの国の文字でもないものだ。語学を勉強した私ならわかる。この世に、存在しない文字だった。


 でも、なぜか頭に入ってきて、書かれたまま、文字を読んだ。





「チェーディシュ王国・整合騎士団任命・ロディス………」






「恋羽!?」


「読めるのか!?」


「どういうこと! 恋羽!」





 家族全員が夜更けの中、大声を出して驚いている。


 いや、1番驚いているのは私自身だ。言い終わって、身体が震えている。


 なんでこんな知らない文字が読めるのだろうか…怖いし、不思議で仕方がなかった。



 その様子を心配するどころか、整合騎士団(?)たちは、拍手で私を称賛した。




「いやぁ。素晴らしい。」


「まさか、こんなところにいたとは…探した甲斐がありましたね……」


「これなら、王子も文句なしです。」





「あの、さっきから何を…? セールスかなにかでしたら、お引き取りください。」



「いえ、私たちはそうではありません。これを見てください。」


 今度は、銀髪の男性が私の目の前に紙を見せてくる。女性のような似顔絵のようだ。顔のパーツが鮮明で、見やすい。



「これ…私…?」



 そう言わざる得ない空気。私の顔にしか見えなかった。


「そうです〜! 特にここ!顎が飛び出ているところ、そっくりでしょう?」



 金髪の調子のよい言葉に私は苦笑する。


「はぁ…しゃくれてるといいたいんですか……。」


 美人の私が唯一気にしている顔面コンプレックスを指摘され、一気に気分が下がった。



「私たちは、王子様の夫婦となる人を探しておりました。彼は、頑固な方でして、この似顔絵とそっくりな人物ではないと、結婚しないと……」



「この似顔絵は、王子、直筆の似顔絵でございます♪」



「………え。てことは……」



「はい♪ 貴方はこれから、我が王国の次期国王となる方と、婚約を結んでもらいます♪」





「は…はぁーーーーー!?!?!?」





 私は、近所に響くくらいの大声を叫んだ。



 意味がわからない。何がどうなってるのよ……。王国?王子様?全てがラノベのような世界観で、理解が追いつかない。


 家族はとうとう言葉を失い、父親はその場で気を失っていた。




「ちょっと待って…! 私、その…王子?を知りません! あと、これからマチアプの人と通話の約束がありますので!!」



 そうよ。私はさっさと運命の人を見つけないといけないのよ。



「そんなのこちら側が知ったことではありません! さあ、姫様、王国へ急ぎますよ!」


「ちょっと…!! 私まだいいなんて!! マチアプの人はどうするのよ!!!」



 こうして、私・牙端 恋羽(きばたん こはね)の謎すぎるセカンドライフが始まった。


 家のインターホンから、謎の異世界人が来て、私を姫だと言って、連れ去られて……



 でも、この瞬間、私の恋の羽が空へ羽ばたいていくような気がした。



 じゃあ、私の運命の人は、現実世界じゃなくて、異世界にいたってこと?







 そういうことよね!?




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