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2-80 聖都の日々

 ちょうどいい後片付けの援軍になる人材を連れて帰ったら、先輩が三日月形に歪めた目に少々狂気を浮かべてニヤ~と笑った。


 あ、久しぶりに見た気がするな、これ。

 冒険者連中がゾッとしたように後ずさった。


 あは、懐かしい。

 こういう感じは、俺もやったような気がするねえ。


 もう随分と前のような気がするよ。

 ほんの二~三か月前の事なのに。


「でかしたぞ、リクル。

 こいつらは神官どもの手伝いに付けさせよう。

 怪我人も多く出たので、人手はいくらあっても足りん有り様だ。


 他にも、こういう連中がまだいるかもしれん。

 もし見かけたら、宝箱捜索のついでに、たくさん『攫って』こい」


「あ、うん。わかった」


 俺は国王代理の王子様から、人攫いの任務を拝命した。

 まあ、うちにはナッパー(誘拐者キッドナッパーの略)という、その道の専門家がいるのだしな。


 へたをすると、ナッパーども自身がそいつらを攫った張本人なのかもしれないから、実は彼らの居場所を全部知っているのかもしれない。


 一発でラスターを見事に引き当てたような、引きのいい奴以外はまだ十分に生きている可能性があるなあ。


 しかし、あいつらは人間なんか大勢攫って、しかも生かしておいて一体どうするつもりだったのだろうか。


 そして案の定、あちこちの『牢屋』に速攻で案内してくれるナッパーども。

 やれやれ、俺は誘拐犯の親玉に収まったのかよ。


 俺の従者って、精霊以外は殆どが邪神サイドの悪の道にいた奴らばっかりだ。

 霊獣のワンコ達も敵に操られていたとはいえ、あんな状態だったのだし。


 従者以外の仲間にも先輩みたいなイカれた奴もいるのだが、あれは国王様の勅命によって俺達と一緒に来ており、今なんかは国王の名代という地位なのだからなあ。


 まあ、王都から第二王子のお兄ちゃんが来るまでの話なのだが。

 そうでもなけりゃあ、先輩があんなに大人しくしてなどいないだろう。


 それはとりあえず俺にとっても幸いな事だった。

 俺の立ち位置は、自分の捕食者と仲睦まじく暮らす子羊みたいなものなのだから。


 我ながら、ちょっとヤンチャな子羊だけど。


 しかし、いつ先輩のスイッチが入ってパクっと食われるかわかったものじゃないので、とてもじゃないが大人しくなんてしておれんわ。

 もっと強くならないとな。


 御本人様の口から、先輩より凄くなったって言われたけど、そんな物は実際にやりあえば子供のようにあしらわれるのがオチなのだ。


 精進あるのみ!


 そして、例の牢屋にはたまに『看守』がいて、精霊部隊やラスター・ナッパーと共に捕縛し、新たなナッパー部隊の入手にも成功した。


 回っているうちに冒険者二千名ほどと、新しい誘拐犯の従者が二百名ほど、ついでにそこでサボっていたらしい雑兵のラスターを五百匹も捕まえてしまった。


 蜘蛛の連中も妙に人間臭いところがあるな。


 こいつらはオーディナリー(普通)からとって、オーディと名付けて各部隊で二百五十体までナンバリングしていった。


 ラスターの家来が全部で五百六十二匹に増殖した。


 フォーマンセルでパーティを組ませても、終末の蜘蛛、あるいはレギオンなる者を百四十チームほど動かせるな。


 俺は本当に勇者なのか?

 もはや邪神の手先だの尖兵だのと言われたっておかしくないような有様になってしまっていた。


 どっちかっていうと、『人手』として一応はヒューマノイド体系であるナッパーが大量に欲しいのだが、ラスターは大変器用なので、まああいつらでもいいか。


 今は街のあちこちで、大きな蜘蛛が左官道具を持ってモルタルを塗ったり石畳を直していたりするので、なかなかシュールな光景だ。


 どうせここは普通と違う街なんだし。それらの作業風景も街の人達にとっては、もう見慣れた日常の光景となった。


 邪神の前触れの一つとも言われるようなラスターが大量に溢れている聖都かあ。


 そいつもなんなのだが、それをやらせているのは、まさにこの勇者リクルご本人様なのだからな。

 世も末もいいところだ。


 手伝わされている冒険者どもが、もたもたしていると、仕事に厳しい怒った親方達のトゲトゲな前足が遠慮なく飛んできてしばかれる。


 お前ら、精進せいや。

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