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2-74 白衣の勇者

「まあ群れ為す者なんて、蝗とか蟻か何かの大群を恐れて大昔の人が書き残しただけの代物、なんていう説もあるくらいさ。

 ここまでに俺が倒したラスターは六百体前後だったはず。


 まあ本番では、それと比較にならないほど出てきそうだけど、それは神官さんや一般の冒険者なんかでもなんとか相手に出来そう。

 でもあの大物はなあ」


 俺が治療をしながらそんな話をしていると、同じく救護作業に従事しているエラヴィスが、アレを思い出したかのように身を震わせた。


 くそ、このファッキンな内臓め。

 外に出てくるんじゃない、腹の中の格納庫へ戻れ!


 俺のスキルで邪神の如くに封印してくれるわ。

 よし、戻った。


「うん、あの大蜘蛛。

 あれはヤバかったわよ。


 姐御の御使いの帰りにスタンドでおやつを買っていたら、空に突然扉が開いて、そこからあの大蜘蛛が大量に降下してきたの。

 

 すぐに対応してくれた神官さんの対ドラゴン武器が、あっさりと弾き返されていたのには参っちゃうわ」


 そう、あれ以来、バニッシュが入手した魔法金属を用いて最優先で打ったものがそれ。


 せっかくドラゴンに備えたのにな。

 今度はアレかよ。


 大急ぎで宝箱から魔法金属や古代金属なんかを大量に発掘しないと駄目なのかね。


 俺は、背中の皮が太腿に至るまで、それなりの肉を道連れに見事に剥がれてしまって始終呻きっぱなしの神官さんに回復魔法をかけて、なんとか薄皮を生成する事に成功しながら答える。


 せめて剥がれた皮があればよかったんだが、たぶん剥がれた時に蜘蛛の足に巻きついていってボロボロになってしまったものだろう。


 まだ体の方が残っていてよかったことだ。

 厚い肉がこびりついた皮だけ残されていたら絶対に治療は無理だもの。


「ああ、わかる。

 だって俺の槍でブーストかけて攻撃したって、なかなか刺さらないんだぜ。

 脳天に槍を突き刺して、ブーストした魔法攻撃を内部で炸裂させたってすぐに倒せないんだもの。


 アレを隷属させられてよかったな。

 マロウス直伝のイロモノ技術が独り勝ちしている件について」


 そして、さっきのなんとか傷口は塞いで回復措置を行なっておいた神官さんは白目をむいて泡を吹きながら担架に乗せられて退出していったので、今度は蜘蛛の足で払われて、千切れて飛んで行ってしまったが無事に拾われてきた腕を繋ぐために奮闘していた。


 これがまた、時間がかかるんだよね。

 まだ刀で鋭く切られた腕を塞ぐなら、あっという間に塞いで一般救護に回せるのだけど、こうも組織がぐちゃぐちゃになっているのを繋ぐとなるとな。


 不足する組織を強引に再生させながらだから時間がかかってしまうのだ。

 まあ、人生で腕が一本あるのとないのとでは大違いだしね。


 しかし、これは大変な作業だわ。


「マジで!

 しかし、とんでもないわねえ。

 あのでかい蜘蛛は、あとどれくらいいるのかしら」


「さあー、わからないなあ。

 そもそも、どこから湧いてきてるんだよ、あれ」


 再生して腕の組織が強引に繋がれていき治療されていく痛みに、ぐううと呻く神官さん。


 今度から『麻酔』の魔法かスキルを覚えなくっちゃ。

 たぶん、この街のどこかにはそいつを持っている奴がいるはず。


 スパルタな姐御はそのような物は最初から持っていないし、エラヴィスなんか、ただの魔法剣士だから、そのような物は持つことすら想定していない。


 そもそも本来は回復士でもない純戦闘要員である魔法剣士なのに、何故ここにいるんだっていう話で。


 俺は回復魔法にレバレッジが強烈にかかっていて強力に使えるので、比較的重症者ばっかりが回ってくるのだが、所詮は素人なんでね。


 御免よ、痛いよね。

 だけど、そこは根性で我慢して。

 君達は人類を守るために、この聖都にやってきた聖戦士なのだから!


 まあいくら聖戦士だって、ここまでやられたら痛い物は痛いのだ。


 そこを痩せ我慢で切り抜けるなら、俺くらいの特殊なスキル持ちか、あのコンロンのドラゴナイトくらいの域に達しないとな。


 まあそこまでいったら、そうそうこんな怪我はしてないけどな。


 まあ俺の根性スキル【勇者の痩せ我慢】もマジで痩せ我慢しているだけなので、十分経つと倒れるような代物なのだが。


 普通の人間が使ったら十分後には確実に即死しかねない劇薬のようなスキルなのだ。


 物事っていう物は、日々の精進とか積み上げって奴が大事なのだからね。

 俺は迂闊にも、そいつを積み上げてきてしまったのだ。


 しかも割合と普通の感じに。

 もうその時点で駄目駄目だよなあ。

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